丹沢(たんざわ)とは

日本百名山の丹沢は、神奈川県の西部から山梨県にまたがる山域の総称です。大山、塔ノ岳を中心とした東丹沢と畦ヶ丸(あぜがまる)、檜洞丸(ひのきぼらまる)などの西丹沢に分ける事が出来ます。また、表丹沢と裏丹沢に区別されることもあります。

丹沢は手軽なハイキングコースからアップダウンの激しい尾根歩き、主稜線を歩く縦走コースなど変化に富んだ山域です。また、各所に渓谷が発達し、滝や岩を登る「沢登り」が日帰りで出来ることもあって、関東からの入渓者達に親しまれています。

最高峰は標高1,630mの蛭ヶ岳(ひるがたけ)ですが、塔ノ岳(標高1591m )が丹沢の主峰と呼ぶにふさわしいと思います。また、大山阿夫利神社への大山参りで知られる大山も丹沢の盟主の一つに数えられます。

丹沢登山コース概要

丹沢のお薦めコース

丹沢表尾根

丹沢で最もオススメなルートは丹沢表尾根です。ヤビツ峠を登山口として塔ノ岳へピストンをするか、バスの便が多い大倉に下山するのもいいと思います。

三ノ塔をはじめ展望良好なピークが続き、大きなアップダウンの中には鎖場あり、やせ尾根あり、なだらかな遊歩道の様な所もありと変化に富んだ山行を楽しむ事の出来るルートです。

丹沢は冬から春に向け登山最適期となります。

丹沢登山コースの特徴

山域全体が森林限界を超えないため樹林帯の中を歩くことが多くなりますが、その中でもヤビツ峠から三ノ塔・行者ヶ岳・塔ノ岳に連なる表尾根と塔ノ岳から丹沢山を経由して蛭ヶ岳に通じる丹沢主脈は視界が広がる明るい尾根で、展望を楽しみながらのハイキングが出来ます。

登山最適時期

標高が低い為、夏のシーズンは気温が高い上、蛭が出るということで登山者の数は少なく、ベストシーズンは4月中旬から梅雨入りまでと、10月の紅葉の時期ころから次第に登山者の数が増してきます。

雪が降る季節になっても鍋割山の鍋割山荘、塔の岳の尊仏山荘、みやま山荘、蛭ヶ岳の蛭ヶ岳山荘は通年営業を行っているため、冬山登山の初級コースとして人気が高く、山小屋は多くの登山者で賑わいます。

ヤマビルに注意

ヤマビルファイター
ヤマビル

ヤマビルの活動期間は5月~11月の間で、特に雨天時、雨天後の蒸し暑い日は人間、動物の吐く息や体温を感じ取り、尺取り虫のように接近し、 吸着、吸血します。

普通に登山道を歩いていても、地面にいるヤマビルが登山靴に取り付き、次第に上まで這い上がり、衣類の隙間から足の皮膚に吸着して血を吸います。

ヤマビルの生命力はものすごく、つぶそうとしても簡単にはつぶせません。大量のヤマビルが靴の周りに取り付き、除去は困難ですから、 ヤマビルが活動を活発化する時期は、登山を控えるのが賢明です。

それでも登山したい方は荒塩を靴や靴下に塗るか、「ヤマビルファイター」を吹き付けるかしてください。また登山中は荒塩や塩水スプレーを持参し、ヤマビルが吸着したら荒塩などをふりかけ除去してください。

ヤマビルが多くなってしまう原因として、鹿・猪などの生息数が増えすぎた事が一つの要因になっています。神奈川県秦野市(森林づくり課)では、ヤマビルを媒介する野生動物(シカ、イノシシなど)が入り込まないようにした「シカ柵区」を設けたり、下草刈りや枝打ち・間伐などを施した「落葉かき区」などの施策を行い、その有効性を確認しています。

シロヤシオやトウゴクミツバツツジの群落

シロヤシオ
シロヤシオ

西丹沢が最も混雑するのはツツジの花の時期です。特にシロヤシオ(ヤシオツツジ)の花は美しく、皇室の愛子様のおしるしということもあり、大変人気があります。

花の時期は、5月の初旬に標高1000メートルあたりから咲き始めます。下旬には山頂近くが見ごろになり、白い花のトンネルの中を歩くことが出来ます。トウゴクミツバツツジのピンク色の花と競い合うように咲き乱れるところもあります。

この時期の蛭ヶ岳山荘や青ヶ岳山荘は大変込み合い、特に土日は一枚の布団に2人ということも覚悟しなければなりません。

丹沢登山口の駐車場とアクセス

アクセスの詳細は下記を参照してください。

丹沢
丹沢のアクセスと駐車場
丹沢のアクセスと駐車場

丹沢の山小屋

丹沢
蛭ヶ岳山荘
蛭ヶ岳山荘
丹沢
尊仏山荘
尊仏山荘

丹沢の地図

丹沢の登山コース概要

① 丹沢山~蛭ヶ岳-塩水橋コース

丹沢山から蛭ヶ岳へ
丹沢山から蛭ヶ岳へ

塩水橋の駐車スペースは約16台と少ない為、土日には早朝から一杯になる事を想定して行動してください。
ゲートの脇を通過し、林道(舗装道路)を登ります。林道を400mほ ど進んだ所に天王寺峠分岐があります。ここで、天王寺尾根を登るルートと塩水林道を登るルートに分かれます。前者は後者より約1kmコースの長さが短く、コースタイム も20分ほど短いのが利点ですが、急登りが続きます。

  今回は塩水林道を進みます。林道を1時間ほど進むと道路脇に、マジックで「ワサビ出合」と書かれたあるポールが目に 入ります。 ここからショートカットの登山道へ入れるはずですが、赤テープを辿って見ても、踏み跡が薄く、登山道がはっきりしない為、車道に戻って進むことにしました。

林道沿いに建つ雨量計の向かいが登山口です。登山口からしばらく杉林の中を登り、杉林を抜けるとブナ林に樹層が変わります。沢を渡り、天王寺尾根へと登って行きます。天王寺尾根分岐に向け急坂を登ります。木製の階段を登るとアセビの群生がある天王寺尾根分岐です。

天王寺尾根分岐から丹沢山までは約40分です。白い花を付けたアセビのトンネルを進み、行く手が開けると丹沢山のピークらしき所が見えてきました。木道を登ったその上がガレ場です。

ここは塩水橋ルート中、唯一の鎖場ですが、鎖をつかんで登る必要はないくらいの簡単な岩場です。鎖場を通過し丹沢山を右から回り込みます。
長い木道が山頂近くまで続きます。丹沢山山頂は広い平坦地で、山頂の隅にみやま山荘が建ち、トイレが併設されています。

丹沢山から蛭ヶ岳に向かいます。丹沢山と蛭ヶ岳間は丹沢の中でも屈指の美しいルートです。 丹沢山から木道を下りトラバース気味に左に回り込み、さらにゆっくりと下ると鞍部です。鞍部から笹の中に作られた木道を登り返し、登り切ると平坦な稜線歩きになります。

平坦な稜線を進むと小ピークの不動ノ峰が見えてきます。不動ノ峰手前には不動ノ峰休憩所があります。不動ノ峰休憩所から3分の所に水場が有りますが、水量は確認していません。

不動ノ峰を過ぎ、木道を下り切ると、しばらくなだらかな稜線が続いた後、その先が鎖場になっています。鎖は設置されていますが、傾斜は緩く鎖につかまる必要な個所はありません。一回目の鎖場を通過すると、直ぐに二回目の鎖場になります。ここも簡単な岩場ですから登山初心者でも難なく通過出来ると思います。

鎖場を過ぎると蛭ヶ岳山頂まであと少しです。

コースタイム

  • 登山:塩水橋⇒丹沢山~蛭ヶ岳 4時間40分
  • 下山:蛭ヶ岳~丹沢山⇒塩水橋 3時間25分

難易度 2/10

体力  5/10  日帰り

② 塔ノ岳-丹沢表尾根コース

筑波山ロープウェイ駅から女体山

今回は、大倉の秦野ビジターセンターから「風のつり橋」を渡って三ノ塔尾根を登り、烏尾山、行者ヶ岳と丹沢表尾根を縦走し、塔ノ岳へ至るルートを紹介します。

大倉からしばらく林道を歩いた後、三ノ塔尾根に取り付きます。 樹林帯の登りが延々と続き約3時間弱でヤビツ峠からのルートを合わせる三ノ塔に到着します。
三ノ塔頂上には避難小屋が立てられ、ベンチやテーブルも設置されているため絶好の休憩スポットになっています。

三ノ塔頂上からは表尾根の稜線が塔の岳まで伸びているのが一望できます。避難小屋の裏を通り、稜線を少し進んだ地蔵様が祀られている所からは急坂となり、ガレ場を一気に下降していきます。

ガレ場には鎖が設置されていますが、高度感は無く傾斜もきつくないので登山初心者でも問題なく通過できるはずです。

正面に見える烏尾山の山頂に建つ烏尾山荘が次第に近づいてくると最低鞍部に下りたちます。 最低鞍部からはなだらかな登りが烏尾山まで続きます。 烏尾山荘が建つ烏尾山の山頂は広くベンチも置かれ展望も良好です。

烏尾山山頂で新茅山荘⇒大倉へ下る道を左に分け、展望の良い塔ノ岳丹沢表尾根の稜線を進み、行者ヶ岳に向かいます。
行者ヶ岳山頂を過ぎ、短い鎖場を通過した後の岩峰が行者ヶ岳西峰です。 行者ヶ岳西峰からの岩場の下りがこのルートの核心部と言ってよいでしょう。

7m、50度ほどの岩場には鎖が設置され、しかもスタンス(足場)はしっかりあり決して難しくありません。 登山初心者の鎖場体験に丁度良いくらいです。
鎖場を下りきった所にあるキレットには5mほどの橋が架けられています。 塔ノ岳丹沢表尾根を縦走する登山者は多く、特にこの場所で渋滞することがしばしばあります。

鎖場から登り返す所には木の階段が続き、南側のザレた斜面とのコントラストが美しく見える所です。
この先は穏やかで展望の効いた稜線上の登山道が続きます。新大日茶屋、木ノ又小屋の前を通り塔ノ岳山頂へと至ります。

※大倉から戸川林道を車で進み、水無川の上流まで行けば丹沢表尾根の核心部を通過し、塔ノ岳を周回する短いコース設定が可能です。新茅山荘前には20台ほど止められる駐車場があります。更に車を進めて戸沢まで車で入れます。戸沢の作治小屋には有料駐車場があり、更にその奥の戸沢山荘から水無川の河原に降りると無料駐車場と丹沢戸沢キャンプ場があります。

※丹沢山塊の中には大山修験、八菅修験、日向修験などの行場がありましたが、丹沢表尾根は日向修験の行者道がありました。その中でも行者ヶ岳は、修験道の開祖される役行者の像があったことからその名前が付けられたと言われ、行者ヶ岳の岩場「新客ノゾキの岩」で捨身行や業秤(ごうびょう)などの行が新客に課されていた様です。

コースタイム

  • 登山:大倉⇒三ノ塔⇒塔ノ岳 5時間30分
  • 下山:塔ノ岳⇒三ノ塔⇒大倉 4時間15分

難易度 3/10

体力  7/10 日帰り

③ ヤビツ峠から丹沢表尾根コース

ニノ塔から三ノ塔を望む
ニノ塔から三ノ塔を望む

ヤビツ峠まではバスが秦野駅から出ていますが本数は少なく、平日は2便、土曜、休日は5便です。 途中の蓑毛までは30便以上あり、ここでバスを降り徒歩で登ればヤビツ峠には1時間強で着きます。
冬季には降雪の直後は4wdやラジアルタイヤなど雪対策が必要ですが、すぐに除雪されノーマルタイヤでもヤビツ峠まで上がることが可能です。 しかし路面が凍結している場合もあり注意が必要です。

ヤビツ峠は25台ほど駐車可能ですが、土日には駐車場はすぐに一杯となり、路上駐車をすることになりますが道幅が狭いため駐車可能箇所は限られ、富士見山荘までの路肩に駐車できなければ富士見山荘から数分のところにある菩堤峠の駐車場に停めることになります。
冬季は富士見山荘と菩堤峠間の道は除雪されない上、日蔭になっているため路面凍結していることがあります。

ヤビツ峠から岳ノ台を経由して塔ノ岳方面に向かうコースと富士見山荘まで車道を歩くコースがあります。
多くの登山者は後者を使っているようです。

富士見山荘からしばらくは樹林帯の中を登り、ニノ塔が見える辺りから次第に展望が開けます。 振り返ると藤熊川の対岸に大山が聳えているのが見えてきます。

ニノ塔にはベンチが設置され絶好の休憩ポイントになっています。 ニノ塔から一旦下り登り返すと三ノ塔の山頂です。
三ノ塔山頂からは360度の展望があり、南方面には相模湾を望み、北西方面には丹沢のメインルートである表尾根の稜線の先に塔ノ岳が聳えています。

コースタイム

  • 登山:ヤビツ峠⇒三ノ塔 1時間40分
  • 下山:三ノ塔⇒ヤビツ峠 1時間20分

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

④ 大倉尾根で塔ノ岳コース

花立から塔ノ岳
花立から塔ノ岳

登山口となる大倉の秦野ビジターセンターには、小田急小田原線渋沢駅からのバス便が多く、丹沢登山の拠点として最もアクセスが良く多くの登山者で賑わいます。
また、秦野ビジターセンターの近くには、秦野戸川公園の大倉駐車場があり、マイカーでのアクセスも良好です。
車はさらに上まで登ることが出来るため、登山口近くの車道には、多くの車が路上駐車の列をなします。

塔ノ岳山頂まで概ね樹林帯の中を登るルートで難所は無く、登山初心者向けです。
大倉から大倉尾根を登るルートは丹沢山系の中で最も人気が高く、塔ノ岳をピストンする登山者、表尾根を縦走して烏尾根山または三ノ塔から下山し大倉に戻る登山者で賑わいます。

登山口から樹林帯の中を登ると、ほどなくして観音茶屋が見えてきます。
観音茶屋ではかき氷、おしるこ、牛乳プリンなどの軽食を販売しています。

観音茶屋の前を通り、さらに樹林帯を登ると直登りルートと左に向かう大倉高原山の家を経由するルートの分岐に到着します。
大倉高原山の家の方面のルートを進みます。

「丹沢の門」と書かれた鳥居をくぐると、大倉高原山山の家です。 山小屋の前にはテーブルと椅子が設置され、南方面の展望を楽しみながら一休みします。

大倉高原山山の家で水を補給し出発です。しばらくして直登りルートと合流します。 合流ポイントは平坦でベンチが設置され休憩最適地となっています。

少し登った所に見晴茶屋があります。 通常料金;1泊2食で4500円で泊れ、しばしばイベントが開催されていますので、宿泊するのも面白いかもしれません。

見晴茶屋からよく整備された木道の道を上がると、駒止茶屋に着きます。

駒止茶屋を過ぎると丹沢の表尾根が眼前に現れます。 樹林帯の登りを続けると堀山の家に到着します。
堀山の家は期間限定で営業(土、日曜日、年末年始、GW、夏期)している山小屋です。

その後、木道がよく整備された登山道が続き、花立山荘に着きます。 花立山荘で展望が一気に開け相模湾を一望出来ます。

金冷シで鍋割山からの登山道を合わせ木道を登ると塔ノ岳山頂です。山頂からは360度の展望があり、南方面には相模湾、南西方面には富士山の眺望を楽しむことができます。

山頂近くでは多くの鹿を目にすることがあります。高山植物などの植生を変化させるだけで無く、ヤマビルを媒介する元凶となる動物のため、丹沢大山自然再生委員会では鹿の頭数をコントロールするため、柵を設けたり、罠を仕掛けて駆除しています。

登山最適は、新緑の4月中旬から5月下旬、紅葉の10月中旬から11月中旬です。冬の積雪量は30センチほどで登るのに苦労することはありませんが、山頂近くの凍結や日当たりの良い場所のぬかるみには注意が必要です。 夏は蒸し暑く登山には適しません。

コースタイム

  • 登山:大倉⇒塔ノ岳 3時間20分
  • 下山:塔ノ岳⇒大倉 2時間25分

難易度 1/10

体力  3/10  日帰り

塔ノ岳から丹沢山コース

竜ヶ馬場へ
竜ヶ馬場へ

尊仏山荘の裏からやや急な木道を下ると笹の間に踏まれた平坦な道となります。 登り返すと日高と呼ばれるピークに着きます。
稜線上に作られた登山道は木道が各所に整備され歩きやすく、左右の展望は良好です。 穏やかな登山道を進むと、ほどなくして丹沢山に到着します。

丹沢山山頂は広く、テーブルや椅子が設置され、絶好の休憩ポイントになっています。 また、山頂には通年営業しているみやま山荘が建てられています。

コースタイム

  • 登山:塔ノ岳⇒丹沢山 1時間10分
  • 下山:丹沢山⇒塔ノ岳 1時間

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

丹沢-鍋割山コース

鍋割山荘
鍋割山荘

丹沢山系の一つである鍋割山へは大倉から二俣⇒後沢乗越経由で登るのが一般的ですが、ここでは寄(やどろぎ)からくぬぎ山⇒栗ノ木洞 ⇒後沢乗越のルートを案内します。

鍋割山はかつて寄集落の人々が屋根を葺くカヤを取るために入った山で、中腹から一ノ萱、ニノ萱、山頂を三ノ萱などと呼び、カヤにまつわる名前が付いていました。

寄(やどろぎ)には無料駐車場があり、また路線バスは小田急小田原線新松田駅から1日15本前後あるためアクセスは良好です。寄自然休養村管理センター内と駐車場にそれぞれトイレが完備しています。
鍋割山山頂まで難所は無く、登山初心者向きコースです。

茶畑の間を登り登山が始まります。 樹林帯を登り、展望が開けた所が櫟山(くぬぎやま)です。 丸い山頂は背の低い草で覆われ、東面の展望がよく、相模湾から厚木市にかけての眺望を楽しめる休憩最適地です。

再び樹林帯の登りがあり、後沢乗越の直前にやせ尾根があり、左側の切れ落ちていてる場所にはロープが張られています。
大倉からの登山道を合わせ、よく整備された木道を上がると鍋割山山頂に到着します。
山頂からは南側から西側にかけての展望が良く、 また、山頂にある通年営業の鍋割山荘では、鍋焼きうどんが評判で、順番を待つ登山者で引きも切らしません。また、山荘では緑化ボランティアや自然観察会などのイベントが定期的に開催されています。

鍋割山をピストンしても良いのですが、物足らない場合には塔ノ岳へ向かい表尾根を縦走して、大倉かヤビツ峠に下山するプランニングはいかがでしょうか。
また、塔ノ岳から丹沢山、蛭ヶ岳と続く主脈を北進して相模原市へ下山するのも面白いでしょう。

最近、西山林道でもヤマビルが発生しており、夏の蒸し暑い時期は避けたいものです。

コースタイム

  • 登山:寄⇒鍋割山 3時間20分
  • 下山:鍋割山⇒寄 2時間40分

難易度 1/10

体力  3/10  日帰り

⑦ 丹沢-大山コース

阿夫利神社下社
阿夫利神社下社

関東の信仰の山として名高い大山は丹沢の東端に位置して、ピラミッド型をした山容で、神奈川県厚木市、伊勢原市、秦野市にまたがった標高1,252mの山です。
鳥取県の伯耆大山と混同しないように相模大山と呼ばれることもあります。また、雨降山・阿夫利山とも呼ばれていました。

小田急線伊勢原駅北口から神奈川中央交通バスに乗り終点で下車し、15分ほど大山ケーブル追分駅に向け表参道を歩きます。
参道は中店と呼ばれ、お土産店や豆腐料理の店が軒を連ねています。

大山ケーブルカーは追分駅と下社間の標高差260mを6分で登ってしまうため、参拝客や観光客などに交じって登山者にも多く使われています。

ここでは途中駅で下車し、大山寺を参拝して女坂を登り阿夫利神社下社(あふりじんじゃ)に向かうコースで登ります。

阿夫利神社下社の左側の鳥居をくぐって登山道がはじまります。 うっそうとした杉林の中を登ると、16丁目で蓑毛からの登山道を合わせる平らな場所には石尊大権現の石柱が立ち、ベンチが設置され休憩ポイントになっています。
25丁目でヤビツ峠から始まるイタミツ尾根を合わせ、二つの鳥居をくぐれば大山山頂に到着します。 山頂には阿夫利神社の上社(本殿)が建っています。

山頂からの展望は雄大で、売店やトイレ(冬季閉鎖)があり、ゆっくり展望を楽しむことができます。

下山は見晴台を経由して阿夫利神社下社に戻ります。 見晴台を過ぎたところからはトラバースになり随所に鎖が設置されています。 しかし、高度感は無く難所ではありません。足元に注意して下山してください。

コースタイム

  • 一周:大山ケーブル⇒阿夫利神社下社⇒大山⇒見晴台⇒阿夫利神社下社⇒大山ケーブル 4時間10分

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

⑧ 青根から蛭ヶ岳コース

蛭ヶ岳へ
蛭ヶ岳

蛭ヶ岳への最短ルートは国道413号の青根から入ります。 登山口ゲート前までの林道は車がすれ違うことが困難なほど狭く、林道終了地点にある駐車スペースは7台ほどしかなく、 マイカーによる登山口へのアプローチにはやや難点があります。
登山計画としてはバスを使い入山し、丹沢主脈を縦走して南部の登山口(ヤビス峠、大倉)に下山するのが理想的です。

ゲートから10分ほど林道を歩くと、釜立沢に沿って登るルートの登山口へ至ります。 釜立沢から離れ、稜線に上がるまでの約1時間は樹林帯の中の急登です。
稜線に上がるとなだらかな登山道が八丁坂ノ頭、姫次へと続きます。 八丁坂ノ頭分岐では登山届のポストが設置された青根のもう一つの登山口に下りられます。

ほぼ中間地点の姫次は広い平坦地でベンチが設置された休憩の最適地で、晴れていれば富士山の眺望が素晴らしいポイントです。

姫次から急傾斜の登山道を蛭ヶ岳に向け下ります。 その後、程よいアップダウンを繰り返すと、広い平坦地の原小屋平です。ここには50mほど坂を下った所に水場があり、大量の水が湧き出しています。
さらに進んだ所が地蔵平で、広河原への分岐がありますが踏み跡は薄く、あまり使われていないようです。

アップダウンを繰り返しながら木道が整備されたブナ林の中を進みます。 傾斜がきつくなると次第に展望が開け、蛭ヶ岳山頂まで一気に登り上げます。

神奈川県の最高峰である蛭ヶ岳山頂からは雄大な展望が望めます。 丹沢山、塔ノ岳、丹沢表尾根と続く丹沢主脈が南東方面に伸び、美しい景観を作り出しています。

通年営業の蛭ヶ岳山荘が山頂にあり、丹沢を縦走する登山者にとってはありがたい山小屋です。

コースタイム

  • 登山:青根登山口ゲート前⇒蛭ヶ岳 4時間20分
  • 下山:蛭ヶ岳⇒青根登山口ゲート前 2時間55分

難易度 1/10

体力  4/10  日帰り

⑨ 檜洞丸から蛭ヶ岳コース

檜洞丸から蛭ヶ岳の眺望
檜洞丸から蛭ヶ岳の眺望

西丹沢ビジターセンター~檜洞丸

人気のツツジ新道では春はゴヨウツツジ(シロヤシオ)、秋は紅葉と季節ごとに魅力があります。檜洞丸山頂から犬越路方面へ少し向かうと富士山が見える西丹沢で一番のビューポイントがあります。西丹沢ビジターセンターから山頂までは標高差約1000mで、日帰りにはちょうど良いコースです。

早春になると西丹沢ではタチツボスミレをはじめエイザンスミレ・ヒナスミレ・マルバスミレ・ツボスミレ・オカスミレなどが見られます。そのスミレに来るツマグロヒョウモン蝶はサナギで越冬し、そのスミレの葉に産卵をして孵った幼虫は葉を食べて成長します。近年の地球温暖化の影響により丹沢の山の上でも見られるようになりました。

檜洞丸~蛭ヶ岳

檜洞丸~蛭ヶ岳間は、丹沢の登山コースの中でも特に起伏が激しく、予想外に時間がかかり体力も消耗します。

金山谷乗越の金山谷側のガレは崩壊が激しく、架けられた金属製の桟橋は高度感があります。また、蛭ヶ岳山頂直下の鎖場は、傾斜がきつく、登山初心者向きではありません。

積雪期には、スリップ事故が多発し、死亡事故も起きていることから丹沢と舐めてからないことが肝要です。

コースタイム

  • 登山:丹沢ビジターセンター→50分-ゴーラ沢沢出合→40分-展望台→1時間15分-檜洞丸→1時間27分-臼ヶ岳→1時間12分-蛭ヶ岳 合計:5時間24分
  • 下山:蛭ヶ岳→1時間5分-臼ヶ岳→1時間47分-檜洞丸→42分-展望台→35分-ゴーラ沢沢出合→35分-丹沢ビジターセンター 合計:4時間44分 (休憩時間は含まず)

難易度 4/10

体力  6/10  日帰り

丹沢の日帰り登山は出来る?

最もコースタイムの短いのは大山ケーブルカーを使って 大山をピストンする場合で、4時間以内で下山できます。また、大倉登山口から塔ノ岳をピストンする場合であっても6時間以内です。寄から鍋割山をピストンする場合も6時間です。

従って、丹沢の主要な山のピストンなら十分日帰りができます。 ただし、 丹沢主脈を縦走する場合には 途中の蛭ヶ岳山荘や尊仏山荘などに宿泊する必要があります。

丹沢の登山口近くの温泉

武田信玄の隠し湯と知られる中川温泉・信玄館です。西丹沢を流れる中川沿いにあり、檜洞丸や蛭ヶ岳と言った丹沢主稜を歩くための登山口は、5km程バス通りを登った所にあります。

景観豊かな大浴場と露天風呂は開放感に溢れ、3ヶ所ある貸し切り風呂はそれぞれに異なった趣向を醸し出しています。泉質はpHが10と非常に高く、肌触りがとても滑らかで、飲泉もできます。

かくれ湯の里・中川温泉・湯本 信玄館

  • 温泉の特徴:泉質 アルカリ性単純温泉、源泉温度 34.1度、PH値 10.1、 効能 美肌、アトピー、皮膚病、消化器病、神経痛、痔疾、五十肩、冷え性、筋肉痛、関節痛、疲労・病後の回復

アクセス

  • 都内東京I.Cから90分、大井松田I.C・御殿場I.Cからは40分
    新松田駅⇔中川温泉入口 富士急行湘南バス 55分
    谷峨駅⇔中川温泉入口 富士急行湘南バス 30分
    ※ 富士急行湘南バス バス時刻表の詳細

日帰り入浴

料金:大人(中学生以上) 1,000円(税込) 、小人(2歳~小学生以下) 500円(税込)

入浴時間:平日・休日 11:30~18:00、土曜日・休前日・繁忙期 11:30~17:00
(繁忙期:5/3~5/5、8/10~8/15、12/28~1/4等)

丹沢の天気

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

丹沢登山ツアー

  • 丹沢|登山・トレッキングツアー

お問い合わせ

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

丹沢周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月1.5-3.7-8.4
2月1.8-3.2-8.0
3月4.4-0.2-4.9
4月9.64.80.1
5月13.38.84.6
6月15.711.98.6
7月19.415.612.6
8月21.016.913.6
9月17.713.710.4
10月12.88.44.6
11月8.23.4-0.8
12月4.1-1.2-5.9

丹沢登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月××
2月××
3月××
4月××××
5月××××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月×××
12月××
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

塔ノ岳の修験道と尊仏信仰

丹沢主脈の縦走路

1963年(昭和38)に伊勢原市の日向薬師 の常連坊から修験者達により覚書として残された「峯中記略控」という記録が発見されました。それにより、丹沢表尾根コースや丹沢主脈の縦走路が1200年前頃から修験道の入峰修行の場であったことが確認されました。

江戸時代に入ると丹沢は徳川幕府の直轄地となり、一般の人々の入山を厳しく制限しました。しかし、塔ノ岳と大山は信仰の山として登山が認められていました。 塔ノ岳の尊仏信仰は地元の農民による地味なもので、中腹にあった巨岩(尊仏岩)を山の神体と仰ぎ、鐘や太鼓を打ち鳴らし、「懺悔懺悔六根清浄」を唱えながら山頂に登り、尊仏岩で、豊作を祈ったようです。

現在、尊仏岩は関東大震災の余震によりを大金沢へ転落し、姿を見ることができません。ロープを使って降りるようなそんな危険な場所に現在はあるようです。尊仏岩を地元の人々は「お塔」と呼んでいたことが、後に、お塔のある岳という意味で「塔ノ岳」という山の名前が付いたとされています。

5月15日は塔ノ岳の山の祭りの行事の一つとして山頂下において天下御免の賭博が開催され、土地の者ばかりではなく関八州の親分達までもが集まり、盛大に行われていたようです。賭博は昭和20年代まで続いたようです。

近代登山の幕開けは明治に入ってからで、登山史年表によると日本山岳会の岡野金次郎の名前がまず最初にあります。昭和2年4月1日に小田急線が開通したことでアクセスが便利になり、日帰り登山が可能になった為、多くの登山者が訪れるようになりました。山頂には昭和14年11月に横浜山岳会によって丹沢における最初の山小屋となる「尊仏小屋」が建てられました。
参照:丹沢 尊仏山荘物語 より

丹沢修験の歴史

丹沢山地は古来より山岳宗教と深い関わりがあり、山伏など修験者の霊場でもありました。そのため、山岳や地名には仏果山、経ヶ岳、華厳山、行者ヶ岳、尊仏山(塔ノ岳)、毘盧ヶ岳(蛭ヶ岳)、大日岳など、仏教・修験道にちなんだ名前が多く残っています。

江戸時代の丹沢には、大山修験、八菅修験、日向修験という一山組織が存在していました。山伏達による「峰入り」が行われ、多くの行場が丹沢山地一帯に広がっていました。日向山伏は、現在登山コースとして人気の高い丹沢表尾根を通り、主脈を縦走する峰入りコースを「役行者のお通りの跡」と書き残しています。役行者の行法を元に修行していたことが分ります。
※役行者「役小角」は、七から八世紀の宗教者で、修験道の祖として神格化されるようになった人物です。

中世の大山修験の開祖は大山寺を開山した「良弁」とされています。当時の修験道は、役行者ではなく良弁の行法で修行に励んでいたようです。これは、修験道が全国に広がる以前の修験者の姿でもありました。

しかし、明治元年に発布された神仏分離令による廃仏毀釈と明治5年(西暦1872年)の修験道廃止令によって修験道は禁止され、山岳宗教は廃れて行くことになります。明治新政府は、神道と仏教とが一緒に信仰されていた神仏習合を廃止し、国家神道を宗教政策の基本に据えました。それにより日本各地の寺は廃寺となり、多くの貴重な資料が焼却・破棄されて失われてしまいました。
参照:名山の民俗史