四阿山(あずまやさん)とは

標高2,354mの四阿山(あずまやさん)は、群馬県嬬恋村と長野県須坂市・上田市との境にある山で、その山容からは想像できないほど変化に富み、登山者を飽きさせない山です。

そのため、深田久弥も日本百名山の一つに入れたのではないでしょうか。

四阿山の山容

山頂の北側はストンと大きく陥没した地形になっていて、34万年前の大噴火により出来たカルデラです。カルデラの峻烈で険しい縁にある最高点が山頂です。南側は対照的に穏やかなスロープを描き、菅平高原へと続いています。
上信越高原国立公園に属し、四阿山と根子岳(標高2207m)が合い対するように峻立しています。

山名の由来

山名の由来は、寄木創りの屋根の様に見えることから「あずまや」と呼ばれ、別名吾妻山・吾嬬山(あがつまやま)などの呼び名もあります。山麓の山家神社に残る銅製懸仏に永享12年(西暦1440年)と「四阿山」の銘が刻まれているところからすると、室町時代には、すでにこの名で呼ばれていたことになります。

※ 懸仏の詳細は火打山のページをご覧ください。

火打山
火打山

各コースの特徴

① 菅平牧場コース

長野県側の菅平牧場から根子岳、四阿山、中四阿を周回するコースが最もポピュラーです。コースタイムは5時間もあれば菅平牧場へ戻ることが出来、登山初心者にも安心です。

鳥居峠コース

鳥居峠を登山口とする場合には公共交通機関が無いのでマイカーかタクシーになります。修験道に関わる上州古道には数多くの石で出来た小祠が祀られています。歴史探訪ルートと言えます。

③ パルコール嬬恋 ゴンドラコース

群馬県側のパルコール嬬恋リゾートの ゴンドラを利用すれば、一気に2,100m地点に運んでくれます。山頂駅から登りで山頂直下の二箇所の鎖場を通過すれば1時間40分のコースタイムで山頂です。

下山は1時間20分ほどですが、茨木山を周回するコースを設定しても面白いでしょう。 パルコール嬬恋ゴンドラは7月~10月の特定日(毎週土・日・祝日・お盆(全45日間))に運行されています。悪天候による運行中止もありますので事前確認をしてください。

高山植物

四阿山の地図

四阿山登山口の駐車場とアクセス

四阿山
四阿山のアクセスと駐車場
四阿山のアクセスと駐車場

四阿山の登山コース概要

① 四阿山-菅平牧場コース

根子岳から四阿山
根子岳から四阿山

菅平牧場を起点とすれば根子岳、四阿山、中四阿を周回するコース設定が出来ます。マイカーの場合には菅平牧場の駐車場約70台を使用します。また、JR上田駅から上田バスが菅平高原間を55分で結んでいます。菅平高原で下車し、登山口となる菅平牧場までは徒歩1時間です。  菅平牧場に入るには入場料として200円/日が必要です。 菅平牧場駐車場横には綺麗な水洗トイレが完備しています。

標高1,590m地点の登山口から牧場に沿って登ります。ハイカー用に建てられたと思われる東屋から振り返ると、菅平高原が一望できます。

白樺林の中に咲くムラサキヤシオツツジが綺麗です。白樺の先に根子岳の丸い山頂が見えてきます。峰の原高原分岐を左に見送ると、もう根子岳山頂は目の前です。

根子岳山頂から四阿山へ向け稜線を進みます。展望良好な快適な稜線を進み、大岩の下を通過すると、背の低い笹の中の下りとなります。

笹の中を鞍部(十ガ原)まで下り切り、四阿山に向け樹林帯の登り返しです。樹層がダケカンバ交じりになり、きつい傾斜の斜面を登り切ると展望の効く平坦地へ飛び出します。ここから山頂まで、アップダウンの少ない行程が続きます。中四阿方面分岐を右手に見送ると尖った山頂が目前に見えてきます。 木道を登り、鳥居峠分岐を右手に見送ると、祠が建てられた山頂に立ちます。山頂からは360度の展望で、根子岳、浦倉山(パルコール嬬恋スキーリゾート)方面の稜線が大変美しい所です。

山頂から中四阿分岐まで戻り、中四阿を経由して菅平牧場へ下山します。展望が効く広い稜線に沿ってゆっくりと高度を下げて行きます。特に中四阿辺りの稜線は変化に富んで、快適な山行を楽しめる場所です。振り返れば、四阿山の岩肌が美しい景観を作り出しています。

ダケカンバの林になると傾斜が弱まり、登山口が近いことを予感させられます。小川を越えると、菅平牧場はあと少しです。

コースタイム

  • 登山:菅平牧場管理事務所⇒根子岳⇒四阿山 3時間10分
  • 下山:四阿山⇒中四阿山⇒菅平牧場管理事務所 1時間50分

難易度 1/10

体力  2/10  日帰り

四阿山-鳥居峠コース

古永井分岐から四阿山
古永井分岐から四阿山

鳥居峠は、長野県と群馬県の県境に位置し、中世から交通の要所でした。近世には油の交易があったことから、油峠・油道とも呼ばれていました。

また、四阿山への古くからの登山口で、白山大権現(四阿山権現)を拠点(現在の山家神社)として修験道の東参道が成立し、白山信仰が隆盛を極めていました。現在でも上州古道と呼ばれる登山道があり、修験者が祀った数多くの石の小祠が残されています。
中腹には修験者が加持祈祷を行った「華瞳子の宮」と呼ばれる「中院」の跡があり、現在でも、その痕跡をわずかに止めています。

鳥居峠から砂利道の林道が3Km、林道終点ロータリーまで続いています。公共交通機関が無い為、マイカーかタクシーでのアクセスとなります。林道終点には簡易公衆トイレと20台ほど止められる駐車スペースがあります。

登山道は的岩コースと上州古道コースに分れ、古永井分岐で合流します。どちらのコースを通っても約2時間30分のコースタイムで山頂に至ります。登山道はよく整備され、いたるところに木道が設置されています。特に難所は無く登山初心者向きといってよいでしょう。

山頂近くには通年枯れることの無い「嬬恋清水」と呼ばれる水場があり、古来から修験者の命の水として「熊野清水」とも呼ばれていた名水があります。

山頂からは、近く、現在でも噴火を続ける浅間山、遠く、北アルプスの峰々の大パノラマが広がります。

南北に細長い山頂には、山麓の今井村(嬬恋村今井)にあった里宮の今宮白山権現の奥宮と長野県上田市真田町の里宮・山家神社の奥社がそれぞれ鎮座しています。

コースタイム

  • 登山:2時間30分
  • 下山:1時間50分

難易度 1/10

体力  1/10 日帰り

四阿山の日帰り登山は出来る?

最短で登れるのがパルコール嬬恋ゴンドラコースで、3時間のコースタイムです。菅平牧場コースで根子岳を周回しても5時間あれば下山できます。従ってどのコースを使っても四阿山の日帰り登山は出来ます。

四阿山の登山口近くに宿泊

ぷれじーる

菅平高原の標高1,475mにあるペンションです。

清潔で食事やサービスが良く、朝は光が溢れるダイニングで、焼きたてパンがおいしいです。四阿山登山に便利な宿です。

避難小屋経由で根子岳から四阿山へ行く登山道はすぐ近くにあります。

四阿山の天気の特徴

四阿山
四阿山

夏の四阿山は晴天の確率がやや低い

四阿山は、冬は季節風の影響はあまり受けないため積雪量は少ないのが特徴です。4月下旬まで残雪があり、アイゼンが必要です。5月になるとほぼ雪は消えます。

4月、5月の晴天率は高いのですが、6月に入ると一気に雨もようとなり、7月は梅雨の影響で雨が多くなります。8月に入っても晴れ間が戻る日はわずかで、9月の晴天率が最も下がります。

10月、11月の紅葉に時期は比較的晴れ間が期待できます。

菅平高原の1か月の降水量は4月87mm、5月132mm、6月171mm、7月171mm、8月174mm、9月195mm、10月111mm、11月69mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

四阿山登山ツアー

  • 四阿山|登山・トレッキングツアー

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登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

四阿山周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-7.7-12.3-18.9
2月-7.1-11.9-18.8
3月-3.2-8.2-14.2
4月4.6-1.2-7.2
5月10.34.3-1.8
6月13.68.53.6
7月17.212.48.3
8月18.513.49.1
9月13.69.05.1
10月7.62.5-2.1
11月1.9-3.3-8.6
12月-4.2-9.0-14.9

四阿山登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月
5月×××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月×××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!四阿山は山頂周辺で4コースが合流します。分岐が多く登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 四阿山は標高2,354mですが、樹林帯を歩く所はあまり多くありません。そのため直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 四阿山の標高2,354mですが、 標高2,000mを超えると樹木が少なくなります。夏季は紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 菅平牧場ルートには水場はありません。また、鳥居峠ルートには嬬恋清水の水場がありますが、山頂周辺にはそれ以外に水場はありません。コースタイムはあまり長くありませんが、天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から登山をする場合にも必要です。
行動食必須 四阿山のピストンならコースタイムは短いので、パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものを少し持っていくことをお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
四阿山では、7~8月でも最低気温が8度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋不要 
耳栓不要 四阿山は日帰りが基本です。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~5個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要  
シュラフカバー不要

四阿山の水分神信仰と白山信仰の融合

白山は、立山と共に山岳信仰の対象として、修験道の聖地となり、各地にその拠点が設けられるなど、その信仰は広まっていきます。四阿山の山頂には二つの石祠が建っています。ともに白山信仰に基づくもので、群馬県嬬恋村今宮の今宮白山権現の奥宮(上州祠)と真田町(現在長野県上田市)の里宮・山家(やまが)神社の奥宮(信州祠)です。

四阿山周辺には縄文時代から弥生時代にかけての遺跡が点在しています。古代から四阿山は水源の山であり、水分神(みくまりのかみ)として崇められていたはずです。そして、白山信仰が伝わり、修験道の霊場として開かれていくことになります。

山家神社(白山大権現・四阿山権現)と岩井山理智院白山寺

山家神社
山家神社

山家神社は長野県上田市真田町長4473にあります。白山寺跡には真田神社が建てられています。

山家神社がある神川上流の渓谷一帯に白山信仰が成立した時代は、平安時代末から鎌倉時代初期にかけてのことと推察されます。それを示す証拠が白山寺に残されていました。それは白山寺の本地仏であった十一面観音像です。白山寺は、明治の廃仏毀釈によって現在の山家神社へと姿を変えてしまいましたが、中世末には真田家の手厚い保護を受け、大変栄えた名刹でした。
※ 神仏習合の時代まで、現在の山家神社(白山大権現(四阿山権現))を管理していたのは同じ敷地内に建てられていた白山寺でした。

神仏分離令の際、十一面観音像は、白山寺から真田町の長谷寺に一旦移され、後に実相寺に託され、大切に保管されていました。

往時、白山寺を中心として四阿山の修験にかかわる光明寺、蓮華院、華花瞳子院、宝蔵院などの寺が複数存在しました。

参照:名山の民俗史

鳥居峠の上州古道ルートの小祠群

江戸時代には水分神信仰と修験道とで隆盛を極め、多くの参拝者で賑わうことになります。現在でも、鳥居峠からの上州古道ルートには、修験者が祀ったと思われる数多くの小祠が残されています。