火打山とは

火打山と妙高山は新潟県南西部と長野県との県境にあり、戸隠連峰や雨飾山、黒姫山と共に頸城山塊を形成しています。火打山はその最高峰で標高2,462mです。また、火打山の西に連なる焼山を加えて頸城三山と呼ばれています。

妙高山が火山によって出来た山に対し、火打山は堆積岩が隆起して形成された山です。そのため、妙高山や焼山の険しい山容とは対照的に丸く穏やかな優しさを見せる山です。そして妙高山とともに日本百名山に選出されています。

日本海に近く、上越地方特有の降雪量が多い気候により、残雪が作りだす天狗ノ庭、高谷池など広く高層湿原が発達しています。6月下旬から七月上旬にかけの雪解けとともに、これらの湿原ではハクサンコザクラ、ワタスゲなどの高山植物を育む花の明峰として知られています。

火打山と妙高山を同時に登る

火打山のアクセス方法

登山口の笹ヶ峰は火打山と妙高山の登山口であり、両山が共に日本百名山であることから、一度に登ってしまおうという登山者が多く見られます。

例えば火打山に登り、次いで妙高山に登りから燕温泉へ下山、または妙高高原スカイケーブルで赤倉温泉に下るルートなどが考えられます。

その際マイカーでのアクセスでは、笹ヶ峰に車を駐車すると下山後、回収に向かわなければなりません。笹ヶ峰直行バスと妙高山麓線を池の平いもり池入口(いもり池にも大きな無料駐車場があります。)で乗り継げば適当な接続があり可能です。

その他、アクセスの詳細は下記を参照してください。(妙高山に掲載)

妙高山
妙高山のアクセスと駐車場
妙高山のアクセスと駐車場

火打山の山小屋

火打山
高谷池ヒュッテ
高谷池ヒュッテ
妙高山
黒沢池ヒュッテ
黒沢池ヒュッテ

火打山の地図

火打山の登山コース概要

火打山-笹ヶ峰コース

天狗ノ庭の池塘に写る「逆さ火打」
天狗ノ庭の池塘に写る「逆さ火打」

笹ヶ峰から登山届の設置された立派な門を抜け、木道をゆっくりと登って行きます。笹ヶ峰一周遊歩道を右手に見送り、ブナの原生林を進むと黒沢橋です。黒沢池から流れ出る黒沢の流れは水量豊富、水場としてこのルート唯一の場所です。

黒沢橋を渡ると更にブナの原生林は深くなり、十二曲りと呼ばれる小刻みにつづら折りを繰り返す急坂です。十二曲りを過ぎ、オオシラビソの原生林の中を登り上げると展望が開け、富士見平に到着します。富士見平は妙高山方面の分岐にもなっている場所で、文字通り振り返ると黒姫山の上に富士山が見えます。

富士見平分岐から黒沢岳の西面をトラバースして進みます。すると左手前方に火打山や焼山が姿を現します。 起伏の少ないトラバースを進むと高谷池ヒュッテが見えてきます。

高谷池の右側を回り込んで小高い丘に登ると正面に火打山が見えてきます。お花畑の広がる木道を進むと高層湿原の天狗ノ庭です。天狗ノ庭の池塘に映る「逆さ火打山」は絶好の撮影ポイントです。

天狗ノ庭を後にし、稜線に沿って登ると雷鳥平です。雷鳥平からは起伏の少ない稜線上のハイマツ帯の中を進んでいきます。山頂直下の木道をぐるりと回り込むように登ると、火打山山頂に飛び出します。

火打山山頂からの眺望は大パノラマで、近くは現在でも煙を上げている焼山、反対側を望むと妙高山、更には雨飾山の先に白馬岳から双耳峰の鹿島槍ヶ岳に至る後立山連峰が雲上に浮かんでいます。その左手先には富士山も眺めることが出来ます。

コースタイム

  • 登山:笹ヶ峰登山口⇒火打山 5時間
  • 下山:火打山⇒笹ヶ峰登山口 3時間30分

難易度 1/10

体力  4/10  日帰り

火打山の日帰り登山は出来る?

火打山へは笹ヶ峰コースを使うのが最短でコースタイムは登山が5時間、下山が3時間30分です。 従って 火打山の日帰り登山は十分可能です。

火打山の登山口近くの温泉

火打山の隣の焼山や妙高山は現在でも噴煙をあげる活火山であるため、周囲に良質の温泉が湧きます。妙高山の北東部には燕温泉が、南部には南地獄谷の源泉を引き湯した赤倉温泉や池の平温泉などがあります。源泉かけ流しの露天風呂を楽しむことができます。

燕温泉 花文

花文の温泉は43.5℃の源泉が100%掛け流しの硫黄泉です。泉質は含硫黄-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉炭酸泉です。露天風呂からは大田切渓谷の美しい景色が広がります。

燕温泉登山口までは燕温泉街を歩き1分です。

日帰り入浴

  • フリータイムプラン 男性1,000円 女性1,200円。
  • 1時間プラン 男性500円 女性600円。

赤倉観光ホテル

赤倉観光ホテルは妙高山の山腹にあります。温泉は妙高山北地獄谷から源泉温度51℃の湯を引き湯した源泉かけ流しです。

泉質は、硫酸塩泉・炭酸水素塩泉の2つ成分があります。

ランチ&温泉プラン

  • Aプラン:8,300円 Bプラン:6,100円

妙高高原駅からホテルまで予約制の無料送迎シャトルバス11便を運行しています。

赤倉観光ホテルから妙高高原スカイケーブル山頂駅(赤倉登山口)まで徒歩1時間15分。

火打山の天気の特徴

火打山から日本海
火打山から日本海

夏の火打山は晴天の確率がやや低い

日本海に近く、上越地方特有の降雪量が多い気候により、残雪が作りだす天狗ノ庭、高谷池など広く高層湿原が発達しています。

5月中は、登山道(木道)が雪下にあるため、通常の登山道以外のルートを使う場面が発生しますが天気の日は比較的多いです。6月の中旬頃まで雪が残っています。6月から7月にかけて雨の日が増え、8月はやや回復します。9月になると雨の日が増え、10月、11月で若干回復します。

残雪期に大倉乗越(妙高山~黒沢池湿原)を通過される方は、大変危険なので十分な装備が必要です。

笹ヶ峰バス停の1か月の降水量は5月129mm、6月186mm、7月231mm、8月138mm、9月204mm、10月129mm、11月138mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

火打山登山ツアー

  • 火打山|登山・トレッキングツアー

お問い合わせ

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

火打山周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-8.5-11.5-14.6
2月-8.2-11.4-14.8
3月-4.7-8.5-12.2
4月3.5-1.8-6.6
5月9.13.6-1.0
6月11.77.53.3
7月15.311.28.0
8月17.212.89.4
9月12.78.45.1
10月7.02.4-1.2
11月1.1-3.4-7.1
12月-4.9-8.7-11.9

火打山登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラステントテント
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月×××
7月××××
8月××××
9月××××
10月×××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!笹ヶ峰から火打山をピストンするだけならほぼ道迷いはありませんが、妙高山へ行く場合には分岐が多く登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 火打山登山では富士見平以上で直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 火打山では標高2000mを超えると日光を遮る木々が少なくなります。夏季は紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 火打山では黒沢(標高1,580m)に飲料可能な水場があるだけです。高谷池ヒュッテの水場は煮沸が必要です。ただし高谷池ヒュッテで飲料水を購入できます。天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、高谷池ヒュッテに宿泊し暗い内から登山をする場合にも必要です。
行動食必須 天神尾根コースのコースタイムはやや長めです。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものを多めに持っていくことをお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
火打山では、7~8月でも最低気温が8度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓あったら良い 高谷池ヒュッテに泊まる場合、基本大部屋(個室もあり)となります。耳栓があると他人のイビキの音に悩まされません。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高層湿原、逆さ火打ち、高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 高谷池ヒュッテに泊まり火打山をピストンするのに便利です。
シュラフカバー不要

火打山山頂で白山信仰の痕跡 懸仏が見つかる

火打山山頂で出土した懸仏

懸仏鏡面に穴を開け、十一面観音菩薩を紐で結びつける構造です。別々に保管されていたものが一体となり、700年ぶりの再会を果たす。
五十嵐保氏の資料より転載。

火打山一帯が修験道の行場の可能性が!

以前、高谷池ヒュッテの管理人であった築田博氏は火打山山頂三角点の西側にある山頂標柱の脇で懸仏鏡面を発見します。発見時、鏡面の一部が露出していたと言います。鏡面は,径17cm,厚さ2mmの銅板で,「能生白山 御正躰 文永五年六月 日 勧進僧實意」という銘文が裏に刻印されているものです。現在この鏡面は、糸魚川市役所で保管されています。

銘文の意味は「この十一面観音菩薩は能生白山権現の本当のお姿です。文永5年(西暦1268年)6月のある日、勧進僧の實意(かんじんそうのじつい)が奉納する。」

昭和30年代に、旧能生町中尾の伊藤多吉氏は火打山頂三角点の設置の際、銅造十一面観音仏像二体を発見します。二体とも同型で、一体は他人に譲り渡したといいます。残りの一体は伊東家で保管されていたそうです。

五十嵐氏と室川氏とが懸仏鏡面を持ち伊藤宅を訪れ、伊藤氏保管の十一面観音菩薩と合わせてみるとぴったりと適合したそうです。これまで十一面観音像は、”果たして火打山山頂で発見されたものであるか?”という疑念がありましたが、これで疑念は払拭されました。

この発見により、少なくとも鎌倉時代後期には能生谷から登り、火打山一帯が修験道の行場として開かれていた可能性が出てきました。

※能生町(のうまち)は、新潟県の南西、西頸城郡にあった町で、2005年3月19日に糸魚川市、青海町と新設合併しました。

妙高山はかつて、その東麓にある関山三社権現(現在の関山神社)を中心とした山岳信仰が発展したと考えられていますが、その北西部に位置する火打山は、妙高市側からは余りに奥が深く、妙高山側から見る火打山の山容は丸く女性的であるため、修験道の霊場として対象にはされず、入峰路は火打山まで伸びていなかった可能性があります。

一方で、 日本海側の新潟県能生谷から望む火打山は険しく、十分に修験道の霊場としての資格を備えたものであったのかもしれません。能生谷の近くには標高こそ1,000メートルそこそこですが、権現岳と鉾ヶ岳の険しい山があり、山道には白山権現や胎内洞などの修験道に縁のある地名が残るところから、山伏の修行の場であったと思われます。

となれば、火打山への登拝路が成立し、白山信仰の影響を強く受け、能生白山信仰として発展していたとしても不思議ではありません。さらなる専門家の研究が待たれるところです。