高妻山とは
日本百名山の高妻山は、上信越国立公園の北西に位置し、新潟県妙高市と長野県長野市に跨り、山頂は戸隠高原と妙高高原の県境にあります。戸隠連峰の最高峰で標高2,353mの山頂部は三角錐の形を成し、特に乙妻山から望む高妻山はより尖った形に峻立し、荒々しさを際立たせています。
高妻山はその姿から「剣の峰」「両界山」あるいは「戸隠富士」という呼び名もあります。
- 1. 戸隠連峰とは
- 2. 十三仏
- 2.1. 一不動から高妻山まで十の仏
- 2.2. 高妻山から乙妻山まで三の仏
- 2.3. 失われた十三仏
- 2.4. 修験道の痕跡
- 3. シラネアオイロード
- 4. 高妻山の地図
- 5. 高妻山登山口の駐車場とアクセス
- 6. 高妻山の登山コース概要
- 6.1. ① 弥勒尾根新道で高妻山~乙妻山コース
- 6.2. ② 高妻山-一不動経由大洞沢コース
- 7. 高妻山の日帰り登山は出来る?
- 8. 高妻山の登山口近くの旅館
- 8.1. 戸隠 武井旅館
- 9. 高妻山の天気の特徴
- 10. 各種情報
- 10.1.1. 高妻山登山ツアー
- 10.1.2. お問い合わせ
- 10.1.3. 登山届提出
- 10.1.4. 登山地図のスマホアプリ
- 11. 高妻山周辺の気温
- 12. 高妻山登山のための装備と服装
- 13. 服装や装備品のチェックリスト
- 14. 戸隠修験道
- 14.1. 鏡池に映る戸隠山
- 14.2. 戸隠神社奥社
戸隠連峰とは
戸隠連峰は南北に20kmに渡って連なり、約4万年前の造山活動によって隆起したと言われ、三つの山域に分けられています。北端の乙妻山から一不動までを裏山、一不動と八方睨(主峰)の間を表山、八方睨から最南端の一夜山までの間を西岳と呼んでいます。普通、「戸隠山」というと戸隠高原から望んだ表山を指しています。
十三仏
一不動から高妻山まで十の仏
一不動から高妻山まで十の仏が祀られ、それぞれ一不動、二釈迦、三文殊(さんもんじゅ)、 四普賢(よんふげん)、五地蔵、六弥勒(ろくみろく)、七薬師、八観音、九勢至(きゅうせいし)、十阿弥陀(じゅうあみだ)と順番に石祠があります(失われてしまった石祠もあり)。
特に高妻山南端の十阿弥陀は、西暦1862年(文久2年)の銘がある立派な銅鏡が登山者の目を引きます。
高妻山から乙妻山まで三の仏
高妻山から乙妻山へかけても同様に仏が祀られていて、順に十一阿しゅく、十二大日、最後に乙妻山山頂に十三虚空蔵(虚空蔵菩薩)の各石祠が安置されています。
失われた十三仏
残念ながら現在は、石祠のみで十三仏はありません。明治の廃仏毀釈により取り払われてしまったからです。十三仏は、十三回の追善供養をそれぞれが司っている仏様です。13ヶ所を巡ることで死者を供養し、家内の安全や繁栄が得られるとされています。
修験道の痕跡
戸隠連峰の凝灰岩の岩峰において平安時代から修験者による入峰修行が行われて来ました。現在でも修験道の痕跡が見られ、各石祠の中に「平成22年熊野修験 奉修行信濃国高妻山入峰天下泰平如意祈修 7月吉祥日 那智山青岸渡寺」と銘のある木札がひっそりと奉納されています。
シラネアオイロード
高妻山は豪雪地帯にあるため、初夏になると高山植物が足の踏み場もないほどに咲きます。特に九勢至の石祠から緩やかに下った所が八丁ダルミ周辺をシラネアオイロードと呼び、紫色や白色のタイプのシラネアオイが登山道の両脇を埋め尽くしています。花期は6月上旬から中旬まで。
また、トガクシイワインチン、トガクシショウマなどの固有種の他に、オヤマリンドウ、タカネコウリンカなどを見ることが出来ます。
高妻山の地図
高妻山登山口の駐車場とアクセス
高妻山の登山コース概要
① 弥勒尾根新道で高妻山~乙妻山コース
戸隠牧場から五地蔵山近くの六弥勒へ通じる弥勒尾根新道ルートは、長野市が2014年6月6日付けで正式に北信森林管理署から借受け、整備を行いました。それまで昭文社の「山と高原地図」では破線扱いのルートでしたが、現在では整備が進んだ事で危険箇所はなくなり、大変歩きやすいのが特徴です。今後は多くの登山者に使われるでしょう。一方で、樹林帯の中の急登で退屈する一面もあります。
登山口となる戸隠バードラインの戸隠キャンプ場には長野バスターミナルから1日9~11本のバス便があります。マイカーの場合には戸隠バードライン沿いの無料駐車場に停めることになりますが、戸隠牧場の入口近くに約20台の駐車場があります。戸隠キャンプ場を使用する場合には無料になりますが、登山者は一日500円支払えば使用出来ます。土日を除きほとんど空いているので、無料で停められそうですが保証は出来ません。
6月10日時点の様子を紹介します。牧場のゲートを抜けると、ブナ、ヤマモミジ、トチノキ、サワラなどの樹林帯になります。所々で緩斜面になるもののほぼ急登が五地蔵山近くの六弥勒分岐まで続きます。五地蔵山近くになると展望が開け、妙高山・火打山・焼山などの頸城三山が右手前方にはっきりと見えてきます。振り返ると飯縄山や黒姫山もほぼ目線の高さに見えます。
六弥勒で戸隠山からのルートを合わせ、七薬師、八観音、九勢至が祀られた小ピークを通過すると、森林限界を超えた登山道沿いには、紫色や数は少ないが白色のタイプのシラネアオイが彩りを添えています。
八丁ダルミの鞍部から十阿弥陀が祀られた高妻山南端までの区間は根曲り竹を切り開いた登山道が一直線に登り上げます。6月上旬時点で、前年の雪によって土砂崩れを起こした部分もありますが、概ね安全に登ることが出来ます。5月までは残雪が残るので、12本歯アイゼンとピッケルを使っても斜度35度を超える斜面もあるのでかなり難易度が上がると思います。
急な登りが終わると稜線上の平坦な道が現れてきます。安山岩が累々と重なった岩場が100メートルほど続く南端に十阿弥陀が祀られ、北端に道標の立つ高妻山山頂があります。
高妻山から乙妻山の往復は1時間30分を見れば大丈夫です。高妻山山頂と十一阿しゅく間にはギャップがあり、西側は、鋭く切れ落ちています。そのため5月までの残雪期は大変危険を伴います。又、稜線上の東側を巻くところがあり、残雪期は滑落の危険を伴いますので、6月以降の登山がお薦めです。
残雪がなくなってしまえば高度感はあるものの山側を辿れば安全に通過出来ます。登山道のササは刈り取られルートははっきりしています。6月上旬では十二大日の道標が立つ日本庭園の呼び名もある「熊の平」は残雪ですっかり覆われています。残雪の中を乙妻山へ真っ直ぐ進み、低木化したダケカンバとハイマツの間を登り上げると小さなスペースがある乙妻山山頂に到着します。山頂には13番目の仏である十三虚空蔵(虚空蔵菩薩)の石祠が祀られています。
7月になると残雪も消え、「熊の平」には小さな湿原が現れます。そして様々な高山植物が花を咲かせます。
山頂からは360度の展望が開けて、北アルプス、頸城三山、雨飾山が取り囲むように見え、鋸の歯の様なギザギザな山容の本院岳・西岳の戸隠山へ伸びる稜線が間近に見えます。乙妻山から望む高妻山はピラミダルな形で荒々しく峻立しています。
コースタイム
- 戸隠キャンプ場⇒高妻山 3時間30分 高妻山⇒乙妻山 40分 合計 4時間10分
- 乙妻山⇒高妻山 45分 高妻山⇒戸隠キャンプ場 2時間55分 合計 3時間40分
難易度 2/10
体力 5/10 日帰り
② 高妻山-一不動経由大洞沢コース
高妻山は戸隠キャンプ場を登山口とするルートのみです。近年弥勒尾根新道が五地蔵山まで通じるようになりましたが、やはり登山道としては大洞沢を遡上し、一不動避難小屋を経由して戸隠山から伸びる稜線伝いに五地蔵山へ向かうルートが変化に富み面白いと言えます。
戸隠牧場から大洞沢を登るルートは、滑滝の鎖場、帯岩の滑りやすい岩場、不動滝の鎖場などがあり、やや危険です。大洞沢を流れる水が鎖にかかり滑りやすくなっています。更に、雨の後などは各鎖場の鎖が更に湿ってツルツルになり極めて持ちにくい状態になります。
又、6月中旬まで滑滝には雪渓が残り、スノーブリッチを作ります。運悪く、スノーブリッチ上を歩いた時に崩壊すると大怪我の元です。
又、一不動小屋まで大洞沢を何度も渡り返す為、大雨の後は入山を控えた方が無難です。春先の登山は冬の間に流された流木や土石などで登山道は未整備のままです。などと言った悪条件はあるものの、アトラクション的な要素が豊富にあるので、登山者を飽きさせません。
戸隠連山の稜線の一角にある一不動から狭い稜線歩きが五地蔵山まで続きます。右手側が切れ落ちた稜線なので展望が良好です。
7月に入ると登山道は整備され、歩きやすくなります。 と同時に、一不動から五地蔵山に至る稜線の戸隠側の東斜面にはオヤマリンドウ、ツリガネニンジン、ソバナなどが大きなお花畑を形成します。
9月下旬になるとナナカマド、ダケカンバ、もみじなどで山腹は黄色と赤の錦繍の世界に変わる様も又見事です。
高妻山は山岳宗教の拠点という歴史を持ち、一不動から高妻山頂上まで祠が置かれ、修験者が奉納した木札が目に止まります。
五地蔵山まで登ると、東側の視界が一気に開けて天の配慮に素直に感動してしまいます。近くは妙高山、黒姫山、飯綱山、遠く八ケ岳や浅間山などの眺望があります。
五地蔵山から高妻山本峰、及び乙妻山までの登山ルートガイドは弥勒尾根新道のルートに記載されています。
コースタイム
- 登山:戸隠キャンプ場→1時間-帯岩・不動滝→20分-一不動避難小屋→45分-六弥勒・弥勒尾根コース分岐→1時間30分-高妻山 合計3時間35分
- 下山:高妻山→1時間5分-六弥勒・弥勒尾根コース分岐→35分-一不動避難小屋→1時間5分-戸隠キャンプ場 合計 2時間45分
難易度 3/10
体力 3/10 日帰り
高妻山の日帰り登山は出来る?
戸隠キャンプ場(戸隠牧場)登山口から高妻山のピストンで往復のコースタイムは約6時間20分です。乙妻山まで足を延ばしても約7時間50分で下山できます。 従って高妻山の日帰り登山は十分可能と言えます。
高妻山の登山口近くの旅館
戸隠 武井旅館
築280年の主屋。茅葺き屋根の建物は国の重要伝統的建造物群保存地区の特定物件で、薬医門、並びに庭園を眺めながらゆっくりと過ごすことができます。
戸隠キャンプ場(戸隠牧場)登山口に車で11 分(6.0 km)、路線バスもあります。
高妻山の天気の特徴
夏の高妻山は晴天の確率がやや低い
妙高山は、冬は季節風の影響によりやや雪が積もり易く、5月下旬まで残雪があります。
残雪期(5月まで)に高妻山~乙妻山を通過される方は、大変、危険なのでご自身のスキル・装備・天候等を含めて、十分な注意が必要です。
最も晴れ間が多いのは春(4月、5月)です。6月、7月は梅雨の影響で雨が多くなります。夏(8月)に一旦晴れ間が戻るものの、秋(9月)には再び雨の日が増えます。10月11月の紅葉に時期は比較的晴れ間が期待できます。
関山の1か月の降水量は4月93mm、5月129mm、6月177mm、7月219mm、8月135mm、9月195mm、10月120mm、11月114mmです。
各種情報
高妻山登山ツアー
- 高妻山|登山・トレッキングツアー
お問い合わせ
- 戸隠観光協会 ☎ 026-254-2888
登山届提出
登山地図のスマホアプリ
- 山と高原地図のスマホアプリ
昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。
高妻山周辺の気温
最高気温 | 平均気温 | 最低気温 | |
1月 | -7.7 | -10.8 | -13.9 |
2月 | -7.4 | -10.7 | -14.1 |
3月 | -3.9 | -7.8 | -11.5 |
4月 | 4.2 | -1.1 | -5.9 |
5月 | 9.5 | 4.3 | -0.3 |
6月 | 12.4 | 8.2 | 4.0 |
7月 | 16.0 | 11.9 | 8.7 |
8月 | 17.9 | 13.5 | 10.1 |
9月 | 13.4 | 9.1 | 5.8 |
10月 | 7.7 | 3.1 | -0.5 |
11月 | 1.8 | -2.7 | -6.4 |
12月 | -4.2 | -8.0 | -11.2 |
高妻山登山のための装備と服装
軽アイゼン | 12本歯アイゼン | ピッケル | サングラス | ツェルト | |
1月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
2月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
3月 | × | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
4月 | × | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
5月 | ◎ | ○ | △ | △ | △ |
6月 | ○ | × | × | △ | × |
7月 | × | × | × | △ | × |
8月 | × | × | × | △ | × |
9月 | × | × | × | △ | × |
10月 | × | × | × | △ | △ |
11月 | △ | × | × | △ | ○ |
12月 | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
服装や装備品のチェックリスト
登山地図 | 必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!高妻山には分岐が少ないとは言え登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。 |
レインウェア | 必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。 また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。 |
帽子 | 必須 高妻山は標高2,000mを超えると直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。 |
日焼け止め | 必須 高妻山の標高2,353mmですが、 標高2,000mを超えると樹木が少なくなります。夏季は紫外線が強いので必帯です。 |
飲料水 | 必須 氷清水(一杯清水)に太い水場がありますが、それ以外に水場はありません。乙妻山まで行く場合にはコースタイムが長くなるので水が不足することが考えられます。天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。 |
ヘッドランプ | 必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から登山をする場合にも必要です。 |
行動食 | 必須 高妻山のピストンならコースタイムは短いですが、乙妻山まで足を延ばす場合には1時間30分余計にかかります。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものを多めに持っていくことをお薦めです。 |
パックカバー | 必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。 |
救急薬品 | 必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。 |
ティッシュペーパー | 必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。 |
防寒着 | 必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。 高妻山では、7~8月でも最低気温が9度近くまで下がることがあります。 軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを その上に着ると更に保温性が高まります。 |
手袋 | あったら良い 高妻山~乙妻山間は岩場の通過があるのであったら助かります。 |
耳栓 | 不要 高妻山は日帰りが基本です。 |
カメラ | あったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。 |
ビニール袋 | あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして4~5個あると便利です。 |
保険証(コピー) | あったら良い 事故や遭難時に必要です。 |
サブザック | 不要 |
シュラフカバー | 不要 |
戸隠修験道
鏡池に映る戸隠山
平安時代の嘉祥3年(西暦850年)に僧学問によって戸隠山は開山され、戸隠神社の別当寺である顕光寺を中心に、神仏習合の一大山岳霊場として栄えました。戸隠高原の鏡池から仰ぎ見る急崖の表山は修験道の行者達にとって入峰錬行には絶好の場所であった様です。
表山の中腹に三十三の霊窟があり、本尊が祀られていました。しかし現在では石祠のみで、本尊はすべて失われています。明治の神仏分離令により取り壊されてしまったからです。 表山への入峰路は、大変危険だった為、戸隠裏山の高妻山や乙妻山へ登拝する修験者も多くいたようです。
戸隠神社奥社
戸隠神社は次の5社からなっています。奥社は祭神:天手力雄命、中社は祭神:天八意思兼命、宝光社は祭神天表春命、九頭龍社は祭神:九頭龍大神、火之御子社は祭神:天鈿女命。このうち、最も古く創建したのは奥社で、孝元天皇5年と言い伝えがあります。
神仏混合の時代は戸隠山顕光寺として比叡山、高野山と共に「三千坊三山」と言われる繁栄の時代を築きました。明治になり神仏分離令により戸隠山顕光寺は廃寺となり、戸隠神社となって現在に至っています。