日光白根山とは

日光白根山は栃木県日光市と群馬県利根郡片品村の県境にあり、直径約1000m、高さ約300mの溶岩ドームといくつかの厚い溶岩流からなる火山です。日本百名山の一つにも数えられ、草津白根山に対して日光白根山と呼ばれています。

日光火山群の主峰は標高2,578mの奥白根山で、日光にある積雪の多い神の座として崇められ、修験者の修行の霊場として古くから登拝されてきました。

日光白根山

中禅寺湖から日光白根山(山頂部のみ見える)
中禅寺湖から日光白根山(山頂部のみ見える)

日光白根山の山頂部はドーム状で、日光中禅寺湖や戦場ヶ原から見ても山頂部のみしか見えない為、あまり目立つ山とは映りませんが、奥白根山より北により高い山は無く関東以北の最高峰です。

日本において、山を「さん」付けして呼ぶ代表は、木曽の御嶽山、加賀の白山、日光の白根山などです。山を人格化して敬愛し、神が住む山として登拝されたことがその元になっていると考えられています。

男体山、女峰山、太郎山に標高2,578mの日光白根山を加えた総称が日光連山です。日光連山は、お父さんの男体山が大己貴命、お母さんの女峰山が田心姫命、その息子の太郎山が味耜高彦根命、その姉妹の大真名子山と小真名子山が御愛子神を祀っているファミリー山になっています。

日光白根山の魅力

弥陀ヶ池と五色沼の山上湖

アルペンムード漂う山頂部は、前白根山、五色山、座禅山が外輪山を形成し、弥陀ヶ池と五色沼の山上湖を従えています。

シラネアオイ

高山植物が多いことでも知られています。国立公園特別保護区に指定された山頂周辺では、6月中旬から下旬にかけて淡い紅紫色の大輪の花を咲かせるシラネアオイが有名です。日光白根山で多く見られることからこの名が付いたとされています。

日光白根山の噴火活動

山頂部の溶岩ドーム
山頂部の溶岩ドーム

慶安2年(西暦1649年)の噴火

山体は安山岩で構成され、激しく浸食が進んでいます。山頂部は噴火活動により凹凸が激しく、どこが最高点なのか判断に迷います。那須火山帯に属する二重式火山で、慶安2年(西暦1649年)の噴火では、山頂に新しい火口が作られました。

STEP
1

昭和27年(西暦1952年)7月~9月に噴煙

最近では昭和27年(西暦1952年)7~9月にかけて、山頂の火口近くから噴煙が上がり、極めて若い火山ということが出来ます。

STEP
2

奥白根神社の少祠

奥白根神社の少祠

日光白根山頂の少し下に、祭神が大己貴命(オオナムチノミコト)の奥白根神社の少祠が祀られています。神仏分離以前の江戸時代までは白根権現が祀られていて、その本地仏は11面観音でした。

※少祠-神を祀る小規模な殿舎。
※神仏分離-神仏習合の慣習を禁止し、神道と仏教、神と仏、神社と寺院とをはっきり区別させること。明治元年に発布され、廃仏毀釈と同時に多くの仏教的資料が失われた。
※本地仏-神様の本来の境地=本地は仏様と同じであり、人びとを救うために仏様が神様に姿を変えている=垂迹した、という考え方です。

日光白根山の地図

日光白根山登山口の駐車場とアクセス

日光白根山
日光白根山のアクセスと駐車場
日光白根山のアクセスと駐車場

日光白根山の登山コース概要

① 日光白根山-菅沼登山口コース

弥陀ヶ池
弥陀ヶ池と日光白根山

菅沼登山口までの季節限定のバスが「湯元温泉~日光白根山ロープウエイ~鎌田」を運行しています。また、湯元温泉までJR・東武日光駅から路線バスが来ているので、そこからタクシーを使うことも可能です。登山口の菅沼周辺は、菅沼や菅沼キャンプ村菅沼キャンプ場があり観光地化され、菅沼茶屋には観光客用の200台ほど停められる無料駐車場とトイレが完備されています。 菅沼茶屋横にある登山口には、登山者用の有料駐車場(1,000円/日)があります。一方、菅沼茶屋に長時間駐車は難しそうです。

菅沼登山口は北側にルートがある為、6月まで残雪がありますが、ピッケル、アイゼンの必要はありません。登山口から樹林帯の登りが約2時間続いた後展望が開けます。展望が開けた後、現れるのが弥陀ヶ池で、同時にその先のドーム状の日光白根山の山頂部が姿を現します。座禅山の東に青々とした水をたたえた弥陀ヶ池脇の木道を進み、山頂部の取り付きに向かいます。

取り付き部分のみに残雪がありましたが、ピッケル、アイゼンの必要は無く登れます。しばらく登ると完全に樹林帯を抜け、完全に展望が開けます。登山道には、ごろごろした石が多くスリップ要注意です。

岩稜のルンゼの登りが核心部です。しかし、傾斜は緩く鎖場となっていませんので、登山初心者でも簡単に登れると思います。 ルンゼを登り切って、短い岩陵区間を登ると山頂部に飛び出します。山頂部は凹凸が激しく、最高点までは一旦下り登り返します。

山頂は360度の展望で、東方には男体山、西方向には尾瀬周辺の山々が一望できます。

山頂の岩峰に立つと日光連山はもちろんのこと、尾瀬の燧ヶ岳、至仏山、会津駒ヶ岳などや武尊山、錫ヶ岳、皇海山、那須岳など飽きない大展望が広がります。

山頂から五色沼避難小屋・五色沼経由で下山します。山頂部の広い平坦地を進み、砂地の斜面を一気に下ります。登山道からは赤い屋根の五色沼避難小屋が小さく見えてきます。白樺林を抜け平坦地に着くと、五色沼避難小屋はもうまじかです。五色沼避難小屋から残雪を進むと山上湖の五色沼に到着です。

五色沼から樹林帯の登りが15分ほど続く区間は、疲れた体には堪えます。弥陀ヶ池からは登山時に使用した道を菅沼登山口まで降りていきます。

コースタイム

  • 登山:3時間00分
  • 下山:2時間30分

難易度 2/10

体力  2/10  日帰り

日光白根山-丸沼高原コース

日光白根山ロープウェイ山頂駅から日光白根山
日光白根山ロープウェイ山頂駅から日光白根山

丸沼高原コースの特徴は、丸沼高原スキー場の日光白根山ロープウェイを使えば一気に標高2,000m地点まで運んでくれるため、僅か2時間ほどで山頂に立てる事ができることです。平成10年(1998年)に新設されたこのゴンドラは標高差約600メートルを一気に駆け上がるためピークハントを目的とするなら良いルートです。樹林帯は概ね南面にある為、日光白根山ロープウェイが運行を開始する6月1日にはほとんど雪は無くなっています。

丸沼高原スキー場の日光白根山ロープウェイ山頂駅は広場になっていて、レストハウス、足湯、水場などがあります。特に下山時、水場には靴の汚れを落とすブラシが常備されているのがありがたいです。

6月上旬で名前の由来ともなった紫色の花を咲かせたシラネアオイが開花していました。

二荒山神社の鳥居をくぐり登山道が始まります。登山口近くに作られた遊歩道はスノーシューの為に整備されいる様で、登山者が巡って楽しめる所ではないようです。大日如来像が祀られている辺りから6月上旬に於いて、まだ残雪がありますがアイゼン・ピッケルの必要ありません。光の当たりにくい場所には、まだ深い雪が残っている箇所がありますが、登山に支障はありません。

遊歩道周辺には不動尊、六地蔵、大日如来などが祀られて、弥陀ヶ池、座禅山、血の池地獄、賽の河原といった仏教的地名が残る所を見ると、かつて、補陀落夏峰が行われたルートの一つに、丸沼辺りから入峰(にゅうぶ)したと考えてもよさそうです。

樹林帯を抜けると一気に展望が開け、火山である日光白根山のアルペン様の山頂部が姿を現します。大きめな砂利石の斜面を登ると岩陵帯の山頂部に到達します。

山頂から弥陀ヶ池経由で日光白根山白根ロープウェイ山頂駅に下山します。岩陵帯のルンゼの下りが核心ですが、ルンゼの傾斜はややきついとは言え、登山初心者でも問題なく降りれると思います。ルンゼ内の下りを終えると、眼下には弥陀ヶ池が大きく見えてきます。

弥陀ヶ池近くの分岐から日光白根山ロープウェイ山頂駅方向へ下ります。樹林帯の中には残雪が多いものの、アイゼン・ピッケルの必要ありません。血の池地獄を通過し、登り登山道合流地点に来れば山頂駅までもう少しです。

コースタイム

  • 登山:1時間50分
  • 下山:1時間30分

難易度 1/10

体力  1/10 日帰り

日光白根山の日帰り登山は出来る?

登山口は群馬県側の菅沼から弥陀ヶ池を経由するルートが最も人気があるようです。五色沼を経由する周回コースでも5時間30分のコースタイムです。

同じく群馬県側から丸沼高原スキー場からが最短コースで、日光白根山ロープウェイを使えば一気に標高2,000m地点に到達するため、多くの登山者を集めています。丸沼高原コースだと僅か3時間20分のコースタイムです。その他、日光側から中曽根コース、金精峠コース、外山尾根コースがあります。

どのコースを使っても日帰り可能です。

日光白根山の登山口近くの温泉

奥日光湯元温泉は、光国立公園内に位置し、美しい自然環境に囲まれています。温泉地周辺には深い森林や美しい湖の湯ノ湖、滝などがありり、四季の風景を楽しむことができます。

日光の奥座敷といわれ、約1200年前に日光開山の祖・勝道上人が発見したとされる白濁の硫黄泉が湧く名湯です。

奥日光湯元温泉
奥日光湯元温泉の源泉

前白根山と三岳との間に湯ノ湖があります。湖畔沿いにある奥日光湯元温泉からは白い硫黄の温泉が湧き出し、秘湯ムード漂う魅力的な温泉街です。

奥日光高原ホテル

奥日光高原ホテル

奥日光湯元温泉の奥日光高原ホテルでは「加水・加温」なしの源泉掛け流し・乳白色の硫黄温泉です。

泉質はナトリウムー硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉(中性低張性高温泉)です。

食事も大変美味しく、スタッフさんの対応もよくオススメです。

奥日光湯元温泉は日光白根山の登山口にもなっていています。また、金精道路を走り菅沼登山口まで9.4km、 車で15分。

日帰り入浴

  • 入浴時間:12:30~15:00(最終受付14:00)
  • 料金:大人(中学生以上):1,000円(税込)、小人(小学生):800円(税込)

日光白根山の天気の特徴

日光白根山
日光白根山

夏の日光白根山は晴天の確率がやや低い

日光白根山は、5月、6月は晴れる日もありますが、7月、8月、9月の晴天率はかなり下がります。11月になってようやく晴れる日の確率が上がります。

奥日光の1か月の降水量は5月174.6mm、6月220.9mm、7月277.0mm、8月394.2mm、9月363.2mm、10月201.8mm、11月107.6mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

日光白根山登山ツアー

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登山地図のスマホアプリ

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    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

日光白根山周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-7.6-11.3-15.3
2月-7.2-11.1-15.3
3月-3.6-7.9-12.3
4月2.8-2.2-7.1
5月7.62.7-2.1
6月10.56.52.9
7月14.410.57.2
8月15.411.58.1
9月11.47.74.4
10月6.01.9-2.1
11月1.0-3.2-7.4
12月-3.1-8.2-12.2

日光白根山登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月
5月××
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月×××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!日光白根山は分岐が多いため登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 日光白根山は弥陀ヶ池や五色沼あたり以上で直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 日光白根山は標高2,578mですが、 標高2,200m以上になると日光を遮る木々がほとんどなくなります。夏季は紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 菅沼登山口ルート、丸沼高原スキー場コースともに水場はありません。天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。
行動食必須 菅沼登山口ルート、丸沼高原スキー場コースのコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
日光白根山では、7~8月でも最低気温が7度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓不要 日光白根山は日帰りが基本です。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや弥陀ヶ池や五色沼などの山上湖、高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要
シュラフカバー不要

補陀落夏峰

補陀落夏峰

日光修験の霊場として「奥山駆け」すなわち補陀落(ふだらく)夏峰が行われていました。補陀落夏峰は、男体山を中心に日光連山全体で行う修行で、数日間険しい山中を歩き通し悟りを得ることを目的とするもものであったが、余りの大難行のために廃止されたと言われています。補陀落夏峰以外に冬峰・華供峰(春峰)などが行われていました。現在でも日光修験は行われていて、希望者は参加できます。

平安時代の初め天応2年(西暦782年)3月に勝道(しょうどう)上人によって男体山が開山された後、中世になってから補陀落夏峰は始まり、江戸時代になると隆盛を極めます。ただし、日光修験、特に補陀落夏峰については、よくわから無い部分が多いのが実情です。明治新政府の神仏分離政策により、修験道が禁止され、それに伴って廃仏毀釈により仏教色の強い資料が失われてしまった為です。

入峰(にゆうぶ)修行コースは沢山あったようですが、詳細はわかっていなません。男体山を中心として北東側に大真名小山(標高2375m ),小真名小山(標高2323m ),帝釈山(標高2455m ),女峰山(標高2483m )などの山々が連なり、日光白根山(標高2578m ),前白根山(標高2373m ),五色山(標高2379m ),座禅山(標高2317m )などの山々が五色沼を囲むようにあり、日光白根山から金精峠手前に金精山(標高2244m ),その先には温泉ヶ岳(標高2333m)けが聳えています。

また、白根山の南西方向に伸びる白錫尾根の先には錫ヶ岳(標高2388m )などがあります。それらの峰々が行場となって行者達が行き交った山々なのです。

これらの山々には勝道上人の伝説が残り、山上に遺跡や少祠が祀られている山が多い。また、湯ノ湖湖畔沿いに「日光山湯元・温泉寺」が建つ。世界遺産「日光山 輪王寺」の別院で、日光を開山した「勝道上人」が、延暦7年(西暦788年)に、この温泉を発見し、「薬師瑠璃光如来」をお祀りしたと伝えられています。

「補陀落」については男体山の二荒山名前の由来に記述。
参照:名山の民俗史