苗場山(なえばさん)とは

標高2,145mの苗場山は、長野県下水内郡栄村、新潟県中魚沼郡津南町と南魚沼郡湯沢町の県境にまたがり、上信越国立公園の北端に位置します。

苗場山山頂に広がる700ヘクタールに及ぶ高層湿原が最大の魅力と言えます。

苗場山の魅力

700ヘクタールに及ぶ高層湿原

苗場山山頂部は特別保護地域に指定されたことにより多くの自然を今に止めています。山頂周辺をシラビソの林が覆う平坦な地形が周囲約10km、700ヘクタールに及び、数多くの高山植物を育む高層湿原を形成しています。

苗場山は那須火山帯に連なる成層火山で、新第3紀層の上に噴出した輝石安山岩によるカルデラが侵食され、1000以上の池塘が点在する天上の楽園を作り出しています。

苗場プリンスホテル周辺のマンションに空き家

「苗場」と聞くと苗場スキー場を連想しますが、苗場スキー場は苗場山の南東方向6km にある筍山に作られたものです。苗場山にも「かぐら・みつまたスキー場」、「田代スキー場」などが開発されました。

しかし、乱開発の感は否めず、スキー人口の減少と共に苗場プリンスホテル周辺のマンションには空き家が目立つようになったと言わています。

苗場山名前の由来

池塘にミヤマホタルイ
池塘にミヤマホタルイ

池塘の中に枯れたミヤマホタルイが多数見られます。7月になると池塘にミヤマホタルイが一斉に芽を吹き始めます。

「苗場」の名前は、その様子があたかも水田に苗を植えたかの様に見えることにちなんでいると言います。江戸時代後期の文人鈴木牧之は、その著書「北超雪譜」の中で山の名前の由来を書き出しにしています。

また、苗場山の名前が示すように農業の神として信仰されていた一面もあります。

苗場山の地図

苗場山登山口の駐車場とアクセス

苗場山
苗場山のアクセスと駐車場
苗場山のアクセスと駐車場

苗場山の登山コース概要

苗場山-祓川(はらいがわ)コース

神楽ヶ峰から苗場山
神楽ヶ峰から苗場山

五合目登山口となるは和田小屋は、三国街道沿いのかぐらスキー場みつまたステーションの駐車場から林道を10.5km走った所にあります。林道は一部分未鋪装の所があるものの、概ね走りやすいです。しかし、狭い部分も所々にあり、路肩に注意が必要です。

公共交通機関でのアクセスは、かぐらスキー場までなら南越後観光バス(一日7~8往復)が走り可能ですが、和田小屋まで向かうならば、JR越後湯沢駅からタクシーを使うのが便利です。

10月上旬から11月上旬の紅葉の期間に限り苗場プリンスホテルのドラゴンドラ及び田代ロープウエイが運行されています。更に山頂駅から高速リフトが運行されるため標高1474メートル地点まで簡単に上ることが出来ます。また、この期間は苗場-田代連絡バスが運行されるため、紅葉の周遊トライアングル(周遊一周約80分)を楽しんでみてもいいかもしれません。

標高1370mの登山口の和田小屋から山頂までの祓川コースでは、一貫して難所はありません。登山初心者向けの日帰りコースとして最も多くの登山者が入山する人気のコースとなっています。

苗場山は、山頂に4km四方の広大な高層湿原が大小無数の池塘をちりばめ、天空に浮かび上がるような360度のパノラマを楽しむことが出来ます。また、苗場山周辺は、植物分布の分岐点として、北方と南方、日本海系と太平洋系の植物が多様な花の楽園を形成しています。木道も整備されており、登山客からは高山植物を間近で見られる人気の山となっています。

コースタイム

  • 登山:かぐらスキー場第2リフト町営無料駐車場→2時間10分-神楽ヶ峰→60分-苗場山 合計:3時間10分
  • 下山:苗場山→55分-神楽ヶ峰→1時間45分-かぐらスキー場第2リフト町営無料駐車場 合計:2時間40分

難易度 1/10

体力  3/10  日帰り

赤湯温泉山口館コース

玉子乃湯
玉子乃湯

赤湯温泉山口館には清津川の川原に3ヶ所の露店風呂があります。いずれも源泉掛け流しで日帰り入浴も可能です。マイカーなら小日橋の駐車スペースに停めて2時間45分で着きます。

路線バスを使う場合、JR越後湯沢駅から浅貝・苗場プリンス方面行に乗り、元橋で下車。バス停から徒歩約4時間の道のりです。

コースタイム

  • 登山:小日橋→赤湯温泉・山口館:2時間45分
  • 下山:赤湯温泉・山口館→小日橋:2時間30分

難易度 1/10

体力  1/10  日帰り

苗場山の3コース

祓川コース

車でのアクセス、公共交通機関でのアクセスが良く、苗場山の登山道の中で最も多くの登山者を集めているルートです。鎖場などの危険箇所はなく、登山初心者向けの日帰りルートと言えます。

秋山郷コース

秋山郷からは平太郎尾根ルート、小赤沢コース、大赤沢新道の三つの登山道があります。その中で小赤沢コースが秋山郷からのメインルートになっています。三合目の標高1310m地点まで林道が伸び約50台の駐車が可能です。ここからなら山頂を往復する日帰り登山が健脚者でなくても可能です。登山道に入り、簡単な鎖場をいくつか過ぎると山頂の一角に飛び出します。

赤湯コース

秘湯・赤湯温泉山口館に泊まることで人気の高いコースです。昌次新道を登り桂沢ノ頭、しらびそ廊下を経て山頂へ。赤倉山の東尾根を登る赤倉山巡りルートは、登山者は少ないがルートは明瞭です。

苗場山の日帰り登山は出来る?

かぐらスキー場第2リフト町営無料駐車場から苗場山のピストンでゆっくり歩いても 往復で6時間のコースタイムです。 また、秋の紅葉シーズンなら田代ロープウェイや苗場スキー場のドラゴンドラが使えるので 約4時間あれば下山できます。 従って苗場山の日帰り登山は十分可能です。

苗場山の登山口近くの温泉

苗場山の南東に位置する法師温泉は湯量豊富で湯船の下から源泉がぶくぶくと湧き出しています。

また、苗場山西側の秋山郷の切明温泉は中津川の河原で手彫り温泉が楽しめます。

法師温泉 長寿館

法師温泉 長寿館

100%の豊富な源泉が、内風呂の下に敷き詰めた玉石の間からボコボコと自然湧出してきます。

泉質は無色透明のカルシウム、ナトリウム硫酸塩泉(石膏泉)43℃です。

苗場のドラゴンドラ山麓駅まで17.3km 車で25分です。

アクセス

路線バスでJR上毛高原駅より猿ヶ京へ、猿ヶ京で町営バスに乗り換え法師温泉へ。約1時間。または、猿ヶ京からタクシー。

日帰り入浴

  • 料金:入浴料=1000円/食事付入浴=2600~5500円
  • 営業時間:11:00~13:30(閉館14:00)
  • 休業日:水曜 (臨時休あり、要問合せ)

秋山郷切明温泉 切明リバーサイドハウス

切明温泉 切明リバーサイドハウス露天風呂
切明温泉 切明リバーサイドハウス露天風呂

24時間入浴可能な内湯。窓から眺める中津川峡谷と、源泉掛け流しの湯量豊富な切明温泉は加温、加水無しの源泉そのままの温泉です。泉質はカルシウム・ナトリウ、塩化物・硫酸塩泉です。

切明リバーサイドハウスから数分の中津川の上流では河原から温泉が湧き出ています。自分でスコップで掘り、川の水を引き入れて湯加減を調節すれば、手作りの露天風呂の出来上がりです。スコップの貸出あり。

※ 先行者が沢山いて、適当な湯船がすでに出来ています。

山奥なので周辺に店はほぼありません。登山用の食料は事前に準備が必要です。

苗場山小赤沢三合目登山口まで車42 分(16.6 km)

アクセス

越後湯沢駅→無料直行便(グリーンシーズン)
越後湯沢駅→森宮野原行きバス(50分)→津南→路線バス(20分)→見玉(乗換)デマンドバス(85分)※要予約。

日帰り入浴

  • 大人700円 小人350円 (紅葉時期は日帰り入浴は対応していません)

苗場山の天気の特徴

秋の谷川岳
秋の谷川岳

夏の苗場山は晴天の確率がやや低い

苗場山は、気候の境界に位置するため、冬季には季節風の影響により大量の雪が降ります。登山に際して、関東平野はよく晴れていても、日本海側の気候の影響を受けるので新潟県の天気予報も要注意です。

春(5月~6月)の苗場山は晴れの日が多いですが、夏(7月~8月)の苗場山はガスが入り易いです。秋の紅葉シーズンには晴の日が増えます。

湯沢町の1か月の降水量は5月99.7mm、6月135.3mm、7月214.3mm、8月204.5mm、9月175.5mm、10月177.7mm、11月194.7mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

苗場山登山ツアー

  • 苗場山|登山・トレッキングツアー

お問い合わせ

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

苗場山周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-6.6-10.5-13.8
2月-6.0-10.2-13.8
3月-2.4-7.2-10.9
4月5.3-0.9-6.1
5月10.84.6-0.9
6月14.18.64.2
7月17.712.48.5
8月19.213.69.7
9月14.49.45.9
10月8.43.2-0.7
11月2.8-2.6-6.6
12月-3.1-7.8-11.0

苗場山登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月×××
7月××××
8月××××
9月××××
10月×××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 特に山頂近くで悪天候だと方向が分からなくなるリスクがあります。登山地図を忘れると道迷いの原因に!苗場山は分岐が多く登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 苗場山では標高1703m地点の下ノ芝辺りから直射日光が強烈に降り注ぎます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 標高2,145mの苗場山ですが、 標高1700m辺りから日光を遮る木々が少なくなります。夏季は紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 富士見坂の途中に「雷清水」の水場がありますが、秋になると細くなります。ただし、山頂の苗場山自然体験交流センターで飲料水を購入できます。天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、苗場山自然体験交流センターに宿泊し暗い内から行動する場合にも必要です。
行動食必須 天神尾根コースのコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。苗場山自然体験交流センターで軽食の購入は出来ます。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
苗場山では、7~8月でも最低気温が8度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い
耳栓あったら良い 苗場山自然体験交流センターに泊まる場合、大部屋となります。耳栓があると他人のイビキの音に悩まされません。
カメラあったら良い 360度の高層湿原の池塘群の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要
シュラフカバー不要

山岳修験の記憶「苗場大権現」と山上の伊米神社

伊米神社
伊米神社

山上に鎮座する伊米神社(いめじんじゃ)は,保食命,猿田彦命,我勝勝命,天児屋根命,天鈿女命,大己貴命,事代主命など数多くの神々を祭神とし、里宮は湯沢町の三俣地区に鎮座する苗場山伊米神社、秋山郷小赤沢に鎮座する苗場山神社の二社が現在でもあります。前者の起源ははっきりとは分かっておらず、社伝では西暦737年(天平9年)の創建とありますが、伝説と考えるのが妥当です。一方、後者は西暦1886年(明治19年)に広井定義と吉井種吉2名の修験者による発願で建立されたものであることが分かっています。

苗場山は、山岳修験の行場であると同時に、山の名前が示すように農業の神として信仰されていた一面もあります。現在は営業していませんが山頂に建つ「遊仙閣」は、湯沢町里宮の伊米神社の別当寺・快慶院の雲尾住職が昭和17年に苗場講登拝者のための宿坊として建築したものです。

鈴木牧之は、西暦1811年(文化8年)に登山ガイドとポーターを雇い苗場山に登っています。その時の様子を前述の「北超雪譜」の中で詳細に記しています。山頂に「苗場大権現」と刻まれた石があること、案内人の話として龍巌窟の内部に古銭が散らばっていたことなどの記載から、中世以降に栄えたであろう修験道の名残を読み取ることが出来ます。

著者が登った江戸時代後期には山岳修行のために登拝する山伏はほとんどおらず、寂しい状況だったようです。その後、近世になり寺院・快慶院を拠点として苗場講が復興しました。
参考文献:名山の日本史