巻機山(まきはたやま)とは

巻機山(まきはたやま)は群馬利根郡みなかみ町と新潟県南魚沼市に跨り、谷川岳から北に連なる三国山脈の標高1967メートルの山です。巻機山の標柱が建てられているのは標高1,962メートル地点の御機屋(おはたや)と呼ばれる場所です。

御機屋を山頂とするのは信仰上の理由によるもので、最高点はそれより更に東に8分程歩いた所にあります。一般的に巻機山本峰(御機屋)とニセ巻機と呼ばれる前巻機山に、割引岳(われめき)と牛ヶ岳を含め、その総称として巻機山と呼んでいます。

女性的な巻機山

日本百名山の標高1,967mの巻機山は、優美で大らかな山容の山肌に、池塘、お花畑が点在する雲上の庭園に人々は魅了されます。

山頂付近の山肌は、なだらかな草原に笹が茂り、オオシラビソとのコントラストが美しい女性的な山と言えます。豪雪地帯ゆえに池塘が点在し、遅くまで残る雪田の周辺にはお花畑が形成され高山植物の花々が咲き乱れます。

巻機山登山ルートの特徴

清水口

清水口からは井戸尾根コース、ヌクビ沢コース、割引(天狗尾根)コースなどからなっています。

一般の登山者は、清水口から井戸尾根コースを登るのが安心です。ヌクビ沢コース及び割引(天狗尾根)コースは、極めて難易度の高いコースと言えます。そのため下山禁止となっています。雪渓が残る9月上旬まで入山禁止です。

剱岳や穂高岳といった山域の様に難しい岩稜には鎖や鉄のステップなどが打ち込まれ、整備が行き届いているのとは対照的に、両コースとも十分な整備がなされていません。滑落死亡事故も頻発している様ですから、十分な装備と熟練した技術の上で臨んでください。

永松口

永松口からの裏巻機コースは、新道、旧道ともに下部は水害の影響箇所があり、十分な注意が必要です。コースタイムが長いため日帰りな困難なこと、バリエーションルート扱いで熟練者向きのコースと言えます。

米子沢コース

一般の登山地図には掲載されないバリエーションルートとしての本格的な沢登り技術が必要な米子沢コースは、北側の五十沢川と共に「日本100名谷」選ばれています。

大ナメ滝などナメ川として人気が高いですが、一般登山者は井戸尾根コースの五合目(焼松)から眺めるだけにしておくのが無難です。

巻機山の地図

巻機山登山口の駐車場とアクセス

巻機山
巻機山のアクセスと駐車場
巻機山のアクセスと駐車場

巻機山の登山コース概要

巻機山-井戸尾根コース

前巻機山(ニセ巻機)から巻機山へ
前巻機山(ニセ巻機)から巻機山へ

全山錦繍に染まる秋の井戸尾根コースを登る巻機山です。 登山口の清水集落には、五つの宿泊施設(山の宿・雲天、旅館おのづか、旅館泉屋、上田屋旅館、山の宿やまご)などがあります。どの旅館も温泉ではありませんが、遠方の場合前夜泊に便利です。ほとんどの施設が登山者を対象としてるため、登山者向けに様々な融通が効くと思います。

公共交通機関を使う場合には、JR上越線六日町駅からバスが一日3往複(清水集落における時間は、出発、到着共に7時、13時、18時台)となっています。

三合目に130台収容可能な桜坂有料駐車場(一日500円)があります。土日など一杯になっても、その下の林道沿いの路肩に駐車可能ですから駐車に困ることはないと思います。

井戸尾根コースは全体に渡って、ほぼ均等に高度を上げています。際立ってきつい斜面はないので、初心者向けコースと言えますが、ややコースタイムが長いので、体力に自信の無い方は早立ちが必要です。

七合目辺りで灌木帯を抜け、展望が開けます。前巻機山(ニセ巻機)まで登れば、山頂はもう僅かです。

コースタイム

  • 登山:巻機山三合目桜坂駐車場→3時間20分-前巻機山(ニセ巻機)→55分-巻機山最高地点 合計:4時間15分
  • 下山:巻機山最高地点→40分-前巻機山(ニセ巻機)→2時間15分-巻機山三合目桜坂駐車場 合計:2時間55分

難易度 1/10

体力  3/10  日帰り

② 巻機山-割引沢(天狗尾根)コース

割引沢から天狗岩
割引沢から天狗岩

割引(天狗尾根)コースは、ヌクビ沢コースと共に沢登りです。大雨や水害により土砂崩れ、登山道土砂流出箇所などがあり、登山道注意情報の事前のチェックが必要です。また9月上旬まで残雪があり、スノーブリッジの崩壊が起こりやすいため雪解けまで待っての入山が賢明です。

一般ルートの井戸尾根コースを登って、割引(天狗尾根)コース、ヌクビ沢コースを下ることは禁止されています。下りに使うと遭難事故が更に増す恐れがあるからです。

吹上ノ滝やアイガメノ滝などの景観を楽しみながらの割引沢の遡上は大変楽しいものです。とは言え、岩が濡れているためスリップしやすく、滑落には要注意です。

ヌクビ沢出合までは十分とは言えないまでも登山道の整備がなされています。危険箇所には鎖やロープが設置されて比較的安全です。

しかし、天狗尾根取り付きからの急登箇所には欲しい場所に鎖やロープの設置がありません。草付きのスリップしやすい斜面を笹の根元を手で束ね、それをロープ替わりにしたり、灌木に掴まって這い上がる難所です。ほぼ垂直といっていい急斜面では毎年、滑落事故が起こっています。体力や岩場の登攀の経験の浅い初心者にはお薦め出来ません。

難易度としては、北アルプスの剱岳や穂高岳などの一般道の核心部よりも高いと感じます。それは、北アルプスの岩場には鎖や梯子、スタンスの不十分な所には鉄の杭が撃ち込まれるなど、登山道の整備が十分になされているからです。このルートは、それとは全く対照的です。

極めてきつい急斜面が連続するため、同じ標高差であってもよく整備されたコースよりもコースタイムが余計にかかります。割引岳まで約4時間(休憩時間を含まない)を必要とします。上部の難所辺りまで登ると腕力や足の力が弱まり、滑落の危険が増します。十分なトレーニングの上に入渓することが求められます。

コースタイム

  • 登山:巻機山三合目桜坂駐車場→4時間8分-割引岳→33分-巻機山最高地点 合計:4時間41分
  • 下山:巻機山最高地点→40分-前巻機山(ニセ巻機)→2時間15分-巻機山三合目桜坂駐車場 合計:2時間55分

難易度 9/10

体力  5/10 日帰り

巻機山の日帰り登山は出来る?

巻機山三合目桜坂駐車場から巻機山のピストンのコースタイムは7時間10分です。従って、標準的な登山者なら日帰り登山は可能です。

巻機山の登山口近くに宿泊

清水集落の宿泊施設

山の宿・雲天」、「民宿おのづか」、「泉屋」、「上田屋旅館」、「山の宿やまご」などの5軒の宿泊施設があります。宿泊者は巻機山に登る登山者がほとんどなので、便宜を図ってくれる宿が多いようです。

巻機山の天気の特徴

秋の巻機山
秋の巻機山

巻機山は晴天の確率がやや低い

巻機山は、冬季には季節風の影響により大量の雪が降ります。登山に際して、11月から冬山装備が必要です。

夏(7月)の巻機山はガスが入り易いですが、8月以降は快晴の日が増えます。

小出町の1か月の降水量は5月117.1mm、6月158.6mm、7月269.8mm、8月178.3mm、9月162.3mm、10月182.7mm、11月247.7mmです。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

巻機山登山ツアー

  • 巻機山|登山・トレッキングツアー

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登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

巻機山周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-5.8-8.9-12.0
2月-5.5-8.8-12.2
3月-2.0-5.9-9.6
4月6.30.8-4.0
5月11.86.21.5
6月14.310.15.9
7月17.913.810.6
8月19.815.412.0
9月15.311.07.7
10月9.65.01.4
11月-3.7-0.8-4.5
12月-2.3-6.1-9.3

巻機山登山のための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月×
2月×
3月×
4月×
5月
6月××××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月
12月×
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!巻機山の山頂周辺は木々が全くなくなります。天候が悪いと方向が分からなくなり道迷いのリスクがあります。また、山頂周囲では分岐が多く登山地図は必携です。 登山地図を持って行かないと命のリスクもあります。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていてもレインウェアは必須です。
また、防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 巻機山では7合目くらいから、直射日光を遮る木が少なくなります。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 標高1,967mの巻機山ですが、 7合目以上では日光を遮る木々が一切ありません。夏季は紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 水場は巻機山避難小屋から3分の所にあります。水量は豊富です。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントで暗くなってからの行動を強いられた場合には必携です。また、暗い内から登山する場合にも必要です。
行動食必須 登山のコースタイムはさほど長くありません。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬もあると助かります。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
巻機山では、7~8月でも最低気温が10度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い ただし、バリエーションルートのヌクビ沢コースに行く場合には必携です。
耳栓不要 巻機山は日帰りが基本です。
カメラあったら良い 360度の大パノラマや高山植物、紅葉など山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 巻機山避難小屋に荷物を置いてサブザックに水やレインウェアなどを詰めて山頂ピストンに便利です。
シュラフカバー不要

巻機山と機織りの神

2004年11月1日に塩沢町と共に合併し南魚沼市となった六日町などでは古くから織物が主要な産業として栄えていました。そして地元の人々は巻機山を機織りや養蚕の神として崇拝していました。巻機山山頂を示す標柱が立つ「御機屋」と呼ばれる場所も機織り信仰からのものと思われます。

山上で機を織っている美女を見かけたという伝説が残る巻機山ですが、その登山口の清水集落には巻機権現神社があります。巻機権現神社は、機織りの神様と修験者が信仰の対象とする巻機権現が祀られています。昭和31年、本山派塩沢萬学院の修験僧田村空観師が巻機大権現を勧請して合祀し、里宮となったものです。

毎年8月第1土曜日に大火生三昧(火渡り)が行われます。現在、火渡りは南魚沼市に所在する本山修験宗の寺院の山伏らによって行われています。またこの大火生三昧を支えているのは「清水地区活性化委員会」の人々やボランティアの活動があるからです。