赤岳とは

標高2,899mの赤岳は日本百名山で八ケ岳の主峰です。5本の一般道登山道が山頂に登り上げ、そのすべてで全く違う山容を楽しむことができます。

長野県側(美濃戸口)からは、沢山の山小屋や水場があること、交通の便が良いこと、山頂までの歩行時間が短く日帰りも容易であること、鎖場の難易度が低いことなどから山梨県側(清里)からのルートより多くの登山者が集まっています。

赤岳をしっかりと捉えることが出来るのは東側の野辺山や清里からです。西側の原村や茅野市辺りからは阿弥陀岳の陰に隠れてその姿を完全にとらえることはできません。

赤岳のアクセスのポイント

美濃戸口までは茅野駅から路線バスがあり、新宿からは直行高速バスが運行されています。 美濃戸までは一般車も入れますが、美濃戸口と美濃戸までの区間は路面が荒れていて車高の低い車や運転初心者には不向きです。

冬季、美濃戸まで車で入ることは出来ますが、凍結した急斜面のカーブがあるため4輪駆動にスタットレスタイヤ、且つチェーンを装備する事が好ましいです。

赤岳の地図

赤岳の山小屋

八ヶ岳の山小屋
赤岳鉱泉
赤岳鉱泉
八ヶ岳の山小屋
行者小屋
行者小屋
八ヶ岳の山小屋
赤岳頂上小屋
赤岳頂上山荘
八ヶ岳の山小屋
赤岳天望荘(あかだけてんぼうそう)
赤岳天望荘
八ヶ岳の山小屋
キレット小屋
キレット小屋

赤岳のアクセス

八ヶ岳登山口-アクセスと駐車場
美濃戸口・美濃戸のアクセスと駐車場
美濃戸口・美濃戸のアクセスと駐車場
八ヶ岳登山口-アクセスと駐車場
美し森のアクセスと駐車場
美し森のアクセスと駐車場

赤岳の登山コース概要

山梨県側(清里)ルート要約

山梨県側からはJR清里駅が起点となる真教寺尾根ルートと県界尾根ルートがあります。 両コースとも途中に山小屋や水場が無く、さらに鎖場が連続するなど登山初心者には不向きです。

真教寺尾根ルートは八ヶ岳の全ルートの中で最も難易度が高く、鎖場が2時間ほど連続します。 しかし、難所は一か所だけなので、適度な緊張感と抜群の景色を楽しみながらの山行で、達成感を味わってみてはいかがでしょうか。

県界尾根ルートは真教寺尾根ルートに次ぐ難コースと言えるでしょう。
このコースの特徴は、樹林帯の急斜面の登り、最後はハイマツ帯の中の岩場を登るというものです。 そのため高度感はあまり無く、抜群の景色とまではいかないと言えます。 登りに真教寺尾根ルートを使い下山に県界尾根ルートを使うのが面白いと思います。

真教寺尾根ルート

真教寺尾根ルート核心部
真教寺尾根ルート核心部

赤岳の真教寺尾根は大門沢を挟んで赤岳山頂から県界尾根と平行に東に延びる長大な尾根です。
このコースには水場や山小屋が無い上、標高差が1,300mほどあり、しかも鎖場が連続します。

格段に困難とまでは言えませんが、登山初心者には不向きです。一方で、真教寺尾根ルート上部は赤岳頂上までの約1時間ほどの区間が森林限界を越えた岩登りとなり緊張感がある反面、展望は素晴らしく八ヶ岳屈指のお勧めコースと言えます。

登山口は、八ヶ岳美し森ロッジ 旧たかね荘(美し森ファーム)の100台ほど停められる登山者用無料駐車に駐車して出発するか、サンメドウズ清里スキー場のリフトを使うことで約1時間のコースタイムを短縮することも可能です。ただし、曜日や期間などにより運行時間が異なります。日帰りをする場合には事前に運行時間の確認を行ってください。

八ヶ岳美し森ロッジ駐車場脇から赤岳真教寺尾根ルートが始まります。よく整備された遊歩道が標高1,610m地点にある「衣の池」まで続きます。
「衣の池」からは登山道となり、標高1,900mにあるサンメドウズ清里スキー場のリフト降り場に至ります。
そこから数分で南アルプスや富士山の展望が大変素晴らしい平坦地の「賽の河原」に出ます。

牛首山を通過し、扇山を一旦下ったところで赤岳・真教寺尾根が目前に姿を現します。 登り返してしばらくの区間は森林限界の下で、オオシラビソやコメツガの針葉樹林の中を登り、立ち枯れ帯を抜け、ダケカンバの林になるところ辺りから傾斜は一気に増していきます。 同時に展望が開け、左側に見える天狗尾根(バリエーションルート)の象徴的大岩である大天狗・小天狗がまじかに見えてきます。

最初の鎖場を越え、次に現れるのが真教寺尾根最大の難所の岩場です。 ここは八ヶ岳の登山道の中で最も難易度が高いところで、足場も乏しく、傾斜が70度近いため緊張を強いられます。
この難所を越えても鎖場が連続して現れます。この後、岩場に架かる鎖は総延長約250メートルにも及びます。

稜線に出る直前の右側が切れ落ちた痩せ尾根を通過するところなどは緊張するところです。その後も鎖場が連続し、平坦で休憩ポイントとなる真教寺尾根分岐(八ヶ岳キレットからの縦走路)まで緊張が抜けません。

真教寺尾根分岐から竜頭峰を経由し、少し下った所で文三郎道からのルートを合わせます。ここから赤岳山頂までは簡単な鎖場と二箇所の梯子場があるものの、それまでと比べると格段に難易度が落ちます。

赤岳山頂に立と360度の展望があり、南アルプス、富士山、北アルプスなどの大パノラマが欲しいままです。

下山時に清里に戻る場合には県界尾根ルートを使うとまた別の楽しみが待っています。

コースタイム

  • 登山:たかね荘→赤岳 5時間50分
  • 下山:赤岳→たかね荘 3時間50分

難易度 6/10

体力  5/10 日帰り

県界尾根ルート

県界尾根ルート核心部の鎖場
県界尾根ルート核心部の鎖場

県界尾根は大門沢をはさんで真教寺尾根と平行に赤岳山頂から南東に延びる長大な尾根です。

このコースの標高差は約1,200mで日帰りも十分可能です。しかし、上部では梯子や鎖場が連続する険しいルートのため、登山初心者にはお勧めできません。

JR清里駅から美し森に通じる県道・北杜富士見線の脇に15台ほど停められる駐車スペースがありますが、ここから登山口である県道終了地点まで1kmあります。この駐車スペースの300m上に サンメドウズ清里スキー場無料駐車場があり、登山口まで約25分です。

登山口近くの路肩には数台車を止めることも可能ですが、夏のシーズン中の土日や秋のきのこ狩りの時期には早朝から一杯となることもあります。

登山口の県道終了地点から県界尾根取り付点までは、コンクリート舗装されたなだらかな林道の登りです。そして針葉樹林帯に入り小天狗まで急登になります。

小天狗で野辺山ルートと合わせ、数分進んだ所で展望が開けた稜線に上がります。ここは平坦地となっていて休憩最適地で、赤岳から権現岳へ至る主稜線を望む絶好のビューポイントです。振り返ると南アルプスから甲府盆地の先に聳える富士山まで良く見えます。 また、ここからは県界尾根が逆S字状に赤岳山頂に伸びているのがよく分かります。

この先は、しばらく緩やかな尾根道が続き、その後じわじわと傾斜を増し、展望の無いツガ林を急登すると大天狗に到着します。

大天狗から少し下り、登り返してダケカンバの林を越えたあたりから、県界尾根の核心部の鎖場が始まります。
最初の難所は、正面の岩陵を右から巻いて、 傾斜50度、長さ4mほどの鎖場を登り、さらにその上の傾斜75度、5mほどの梯子を登れば一回目の核心部は終わりです。
一旦平坦な登山道を進み、続いて現れる約30mの急傾斜のスラブ状の岩壁が二回目の難所です。 この場所は浮石が多く落石が起こりやすいため先行者がいる場合には注意が必要です。

県界尾根コースは雪解けが遅く、6月になっても鎖を引き出せない年もあります。残雪期の核心部は大変危険な場所で、過去に何度も滑落事故が起きています。 この時期に登山される方は冬山装備で臨んでください。

核心部を通過し、赤岳展望荘へ向かうトラバース道分岐を右に見送ると、ハイマツ帯の中に数か所、鎖場・梯子場が出てきますが難易度は低く、赤岳北峰まで問題なく登れます。

登山口である清里戻る場合には真教寺尾根を下山すると変化に富んで面白いと思います。

コースタイム

  • 登山:県道終了地点→赤岳 4時間50分
  • 下山:赤岳→県道終了地点 3時間10分

難易度 5/10

体力  4/10

長野県側(美濃戸口)ルート要約

美濃戸からは赤岳鉱泉に向かう柳川北沢ルート、行者小屋に向かう柳川南沢ルートがあります。また、赤岳鉱泉、行者小屋間は徒歩30分ほどの距離です。

行者小屋が赤岳への拠点になり、行者小屋を背にして右方向に向かえば文三郎道ルート、行者小屋の裏手からは地蔵尾根ルートです。

両ルート共に途中から傾斜が一気にきつくなり、梯子や鎖場が出てきます。 難易度はほとんど同じくらいですが、あえて言うなら文三郎道の方がやや易しいと言えるでしょう。

文三郎尾根ルート

鉄製の橋を渡る
鉄製の橋を渡る

文三郎尾根ルートは行者小屋から中岳道分岐までの区間と中岳道分岐から赤岳頂上までの区間では山容がガラッと変わります。

行者小屋から5分ほど歩き、中岳道分岐を右に見送ります。しばらく背の低い樹林帯の中のジグザグ登りが続きます。 ザラザラとした小石の登山道は滑りやすく、特に下山時は転倒に注意が必要です。

樹林帯を抜け、ハイマツ帯になると登山道は一段と傾斜を増し、長い鉄階段が設置されています。 鉄階段の斜度は約30度で、高度感は無く、中央には手すり用の鎖が設置されて安全を確保しています。 鉄階段を途中まで登ると一気に展望が開け、振り返れば眼下に行者小屋が小さく見えます。 その後も、鉄階段が断続的に現れ、高度を上げていきます。

見上げると鉄製の橋が架かっているのが見えてきます。 文三郎道で最も怖いと思われるところですが、実際に渡ってみると高度感は無く拍子抜けします。
この鉄製の橋を渡り切り、180度方向を変え再び鉄階段を登ります。 その後、鉄階段は数か所に設置され高度を上げていきます。

鉄階段を登り切ると、南東方向に向けザレた登山道が一直線状に延びています。赤岳と阿弥陀岳との稜線に立つ文三郎道分岐まで来ると、晴れた日には遠く富士山が眺望できます。

文三郎道分岐から少し登ると、文三郎道の核心部である鎖が連続する岩稜帯へと入っていきます。 岩稜帯取り付きの傾斜は緩く高度感もあまり無く足場もしっかりしている為、さほど難しさは感じません。
竜頭峰、真教寺尾根、権現岳方面へのトラバース道を右に見送ると、次第に傾斜は増してきます。ここから文三郎道の核心部に入ります。 斜度は35度程度で高度感は無く、ステップも豊富で、難易度の高い鎖場ではありません。

権現岳・真教寺尾根からのコースを合わせ、2回梯子を登ると赤岳山頂に飛び出します。

コースタイム

  • 登山:美濃戸⇒行者小屋⇒赤岳 3時間50分
  • 下山:赤岳⇒行者小屋⇒美濃戸 3時間00分

難易度 3/10

体力  3/10 日帰り

 地蔵尾根ルート

地蔵尾根ルートの核心部
地蔵尾根ルートの核心部

行者小屋から見上げる地蔵尾根は、屏風のようにそそり立って見えます。 一体この垂直の壁をどうやって登ったらいいのか気後れしてしまうかもしれません。しかし実際に登ってみるとそれほどでもないので安心してください。

行者小屋から八ヶ岳の主稜線(地蔵の頭)までは、標高差約350mの急登です。前半の針葉樹林帯の中のザレた登山道には石段が整備され、歩きやすい登山道です。鉄の階段が現れる所から、一気に傾斜は増しますが、ダケカンバの林に入ると傾斜は緩み、ジグザグの登りとなります。 ダケカンバの林を抜けた辺りで森林限界を超え、地蔵尾根の核心部へと入って行きます。

一段目の鉄階段を登り、180度方向を変えて二段目の鉄階段を登ります。さらにその上の急こう配の斜面に設置された鎖場が、地蔵尾根の最大の難所です。 傾斜は40度くらいで高度感はさほどありませんが、積雪期や雨の日などは緊張する所です。スリップして転落したら谷底まで滑落するので十分注意が必要です。

核心部を超えると傾斜が緩み、ザレた登山道をジグザグに登ると、お地蔵様が迎えてくれます。 この辺りから大きく展望が開けます。八ヶ岳の中でも特に優れた景観の場所で、地蔵尾根の左右にあるいくつものリッジ(岩尾根)が主稜線に突き上げています。そして、赤黒いルンゼ(岩溝)の中に吸い込まれそうな錯覚さえ覚えます。

右手側に赤岳展望荘が同じ高さに見えてくれば、八ヶ岳の主稜線上にある地蔵の頭はもうすぐです。 この辺りから傾斜はやや緩くなり、最後の鎖場を通過すると、稜線上の地蔵の頭に飛び出します。 ここで核心部は終了し緊張感から解放されます。

稜線上の地蔵の頭で北方向に連なる横岳分岐を見送り、南方向の赤岳に向け進むみます。稜線に上がるとそれまで無風だったのにいきなり強風にさらされることがあります。

赤岳展望荘前を通過し、県界尾根へのトラバース道を右手に見送ると次第に傾斜は増し、鎖が数か所に設置された岩場の登りになります。最も傾斜がきつい箇所では、落石に注意しながらザレた登山道をジグザグに登ると赤岳山頂です。赤岳展望荘からは約30分の行程です。

コースタイム

  • 登山:美濃戸⇒行者小屋⇒赤岳 4時間10分
  • 下山:赤岳⇒行者小屋⇒美濃戸 3時間10分

難易度 4/10

体力  3/10

柳川南沢ルート

横岳の大同心・小同心を望む
横岳の大同心・小同心を望む

美濃戸から行者小屋間のルートを案内します。マイカーの場合には、やまのこ村または赤岳山荘の有料駐車場に止めることになります。美濃戸口と美濃戸間の林道は舗装がなされていないので悪路です。車高の低い車は腹をぶつけてしまう危険性があります。美濃戸の赤岳山荘の上部にゲートがあり、一般車は入れません。ただし、美濃戸山荘に宿泊の場合はその限りではありません。美濃戸山荘にも宿泊者専用の駐車場が完備しています。

冬季美濃戸まで車で入ることが出来ます。ただし、四輪駆動車でスタットレスタイヤにチェーンを付けることがベストです。

美濃戸山荘前で柳川南沢コースと柳川北沢コースが分岐します。
南沢コースは分岐を右に辿ります。南沢に沿って台風などの大雨によって流された木々が散乱する河原を何度も渡り返し進んでいきます。所々で、大雨によって流されたルートが作り変えられている所があります。そういった所は谷側の傾斜が強く、常に湿っていることもあり、スリップには要注意です。

概ね原生林の中を登る為、あまり景観はよいとは言えません。
行者小屋まで急登は無く、全体として一定のペースで歩くことが出来ます。 行者小屋近くになるとそれまであった南沢の水量がほとんど無くなり干上がった河原に出ます。河原からは屏風のようにそそり立った八ケ岳の主稜線の一角を成す横岳、大同心、小同心などが眼前に現れます。

河原から15分も歩けば行者小屋に到着です。行者小屋の前庭には多くのテーブルと椅子が置かれ、恰好の休息地となっています。また、注文すれば昼食なども作ってくれ、特におでんが名物です。行者小屋の真裏から赤岳地蔵尾根が伸び、右上方に目をやれば赤岳文三郎尾根を登り下りする登山者を確認する事出来ます。

コースタイム

  • 登山:美濃戸→行者小屋 2時間00分
  • 下山:行者小屋→美濃戸 1時間40分

難易度 1/10

体力  1/10 日帰り

柳川北沢ルート

柳川北沢に架かった木橋
柳川北沢に架かった木橋

赤岳へのメインルートの起点は、美濃戸山荘前で柳川南沢ルートと柳川北沢ルートが分岐します。一般車は美濃戸山荘下にゲートがある為進入する事が出来ません。

柳川北沢ルートは美濃戸山荘前から道幅の広い林道が続きます。林道終点の堰堤広場には赤岳鉱泉など各山小屋の車が駐車しています。ここまで、一般車も入ることが出来れば50分ほど行程を短縮する事が出来るのですが、残念です。

堰堤広場から柳川北沢の左岸から登山道が始まります。よく整備された木橋が8ヵ所にあり、それを渡り返しながら緩やかに登って行きます。柳川南沢と違って清流をハイキングするといった感覚を覚えるルートです。 ダケカンバなど広葉樹の間から覗く山々の山腹や、水量の多い川の流れも心地よい景観となっています。

お坊さんが手を合わせて拝んでいる様に見える大同心、小同心が見えてくると赤岳鉱泉はもうすぐです。同心とは江戸時代の役人で現在の警察官に当たる人です。戦国時代の足軽がその元とされています。江戸時代に入り、赤岳が開山され修験道が発展するとともに大同心、小同心は、横岳の本峰・奥の院のお守り役としてこの名前が付いたのではないでしょうか。

赤岳鉱泉は文字通り冷水を沸かしたお風呂です。お風呂は狭く、大勢の登山客が同時に入ると湯は汚れが目立ちます。冬になると通年営業の小屋前にはアイスキャンディーと呼ばれる氷の壁が出現します。アイスクライミング練習用に人工的に作ったものです。また、赤岳鉱泉の夕食は手の込んだものが多く、山小屋とは思えないクオリティーの高さです。

コースタイム

  • 登山:美濃戸→赤岳鉱泉 1時間40分
  • 下山:赤岳鉱泉→美濃戸 1時間20分

難易度 1/10

体力  1/10

⑦ 権現岳~赤岳キレット縦走ルート

キレット縦走ルート要約

赤岳に直接登り上げるのではなく、権現岳からキレットを経由する縦走コースがあります。 山梨県のJR小渕沢駅が起点となり、観音平が登山口となります。

権現岳から赤岳山頂までの縦走路は、一部を除いて素晴らしい展望が続き、ハイライトはキレット小屋から赤岳の稜線に至るまでのルンゼの岩場登りです。

樹木は殆どなく無く、赤黒い岩場や右手に見える天狗尾根の奇岩の景観は八ヶ岳屈指です。

キレット縦走ルートの難所は2か所あり、権現岳直下の傾斜約50度で61段の梯子と赤岳の稜線に上がる直前の高度感のある鎖場です。

天狗尾根ノ頭直前の岩棚のトラバース
天狗尾根ノ頭直前の岩棚のトラバース

キレット縦走ルートは権現岳と赤岳の間にある深く落ち込んだキレットを通過しなくてはなりません。キレットとは稜線の一部が急激に切れ落ちている鞍部を指し、漢字では「切戸」と書きます。

権現岳からキレット底部までは標高差275mの下りです。権現岳山頂直下に架けられた61段のゲンジー梯子を下るところから始まります。
この梯子はやや高度感はあるものの傾斜はさほどなく、見かけよりも緊張せずに下ることができます。しかし、梯子が長い為一気に下ることは出来ず、多くの登山者は梯子の途中で一旦休憩をしています。

ゲンジー梯子からさらに下った所が、旭岳と権現岳のコルです。そこから登り返し、旭岳の西側を左から巻きます。旭岳の山頂は通過せずに、西面の鎖場になっている斜面をトラバースします。トラバースを終え、急坂を下れば灌木帯に入ります。

灌木帯を下りきった所から僅かに上がれば、コマクサの群生地であるツルネです。
ツルネの展望は抜群で、赤岳へ伸びるバリエーションルートの天狗尾根から突き出る大天狗、小天狗の岩峰が正面に見え、左前方に阿弥陀岳が聳えた景観は、一見の価値があります。

ツルネからキレット小屋へは、大きい岩がゴロゴルしたところを下ります。濃霧時には方角を見誤りやすく、立場川本谷側へ迷い込まないように注意してください。

キレット小屋の水場は、晴天が続くと干上がってしまうので、事前に小屋に確認をするとよいでしょう。

キレット小屋から赤岳への登り返しの標高差は459mに及びます。 しばらく樹林帯を登り、小灌木と砂礫の道を抜けた辺りから傾斜が一気に増し、その後、ルンゼ状の岩稜の登りとなります。この岩稜の登りは北アルプスの穂高岳にも勝るとも劣らない大変素晴らしい景観です。

ここからが核心部で、岩陵の登りが天狗尾根ノ頭まで続きます。 特に天狗尾根ノ頭の直前にかかる7~8mの梯子と、その後に現れる、鎖を頼りに約50mの岩棚をトラバース区間は高度感満点です。

トラバース終了地点の天狗尾根と合流する場所を天狗尾根ノ頭と呼んでいます。 その後、梯子や鎖が断続的に現れ、稜線に上がると核心部が終了します。同時に、大きく展望が開け、振り返ると南アルプスから富士山にかけての眺望を欲しいままにします。

これより赤岳山頂までは真教寺尾根分岐、さらに竜頭峰を通過して行きますが、難しい所はありません。

赤岳から下山してキレット縦走路に入る場合(赤岳⇒キレット⇒権現岳)には、登山道が不明瞭なところがありますので注意してください。

注意個所:キレット縦走路に入る直前(天狗尾根ノ頭の直前)で右側のルンゼに迷い込む登山者がいるようです。

コースタイム

  • 登山:権現岳→赤岳 2時間50分
  • 下山:赤岳→権現岳 2時間30分

難易度 5/10

体力  1/10 1泊

赤岳展望荘と県界尾根のトラバース道

鎖場のトラバース
鎖場のトラバース

赤岳展望荘と県界尾根を結ぶトラバース道で標高差はほとんどありませんが、アップダウンがそこそこあり、急傾斜の場所には梯子が数か所に設置されています。夏道としては問題ありませんが、冬山や残雪期にはトラバースが連続するため滑落の危険があり使われていません。

コースタイム

  • 赤岳展望荘→県界尾根 14分
  • 県界尾根→赤岳展望荘 14分

難易度 1/10

体力  1/10

赤岳の日帰り登山は出来る?

長野県側の美濃戸から行者小屋経由で文三郎尾根ルートのピストンで6時間50分、地蔵尾根ルートなら7時間20分です。従って一般的な登山者なら十分日帰り可能ということができます。

山梨県側のたかね荘から真教寺尾根ルートのピストンで9時間40分、県道終了地点から県界尾根ルートのピストンで8時間です。 真教寺尾根ルートのコースタイムはやや長いとはいえ日帰りが不可能ということはありません。

とは言え、ゆとりを持った登山日程を組むなら赤岳頂上小屋に泊まるのが良いでしょう。

赤岳の登山口近くの温泉

信州原村八ヶ岳温泉 もみの湯

信州原村八ヶ岳温泉樅の木荘 

日帰り入浴施設の「もみの湯」の泉質はナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉です。

宿泊者限定の貸切露天風呂や貸切家族風呂もあります。

利用料
【原村村民】
大人:500円 子供:300円
【原村村民以外】
大人:650円 子供:300円

営業時間 
AM10:00~PM 9:30 (PM 9:00までに入館)

休館日 
第3水曜日(祝祭日の場合は翌日)

登山口の美濃戸まで5.1km、車で9分です。

赤岳の天気の特徴

快晴の赤岳

赤岳は晴天の確率は比較的高い

八ヶ岳の南部に位置する赤岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量はさほど多くありません。

夏場は午後になると清里側からガスが湧き出る傾向にあります。

6月から7月の梅雨明けまでは晴天率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋や春も比較的晴天に恵まれます。しかし、10月上旬で初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

赤岳に咲く数々の高山植物

各種情報

赤岳登山ツアー

  • 赤岳|登山・トレッキングツアー

観光協会・観光案内所

登山届提出

長野県長野県警察本部地域部山岳安全対策課 電話:026-233-0110
長野県のホームページ
山梨県山梨県警察 
山梨県警察本部地域課 住所:〒400-8586 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(221)0110(代表)郵送、電子メール、
ファックスなので提出可能です。

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

赤岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-8.6-13.3-20.4
2月-8.1-12.9-20.0
3月-3.8-9.3-15.2
4月3.4-2.9-9.1
5月8.02.1-3.8
6月11.16.01.4
7月14.69.96.0
8月15.710.76.7
9月11.36.72.7
10月5.60.3-4.7
11月0.6-5.0-10.6
12月-5.1-10.5-16.6

赤岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラステント
1月×
2月×
3月×
4月×
5月
6月×××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!赤岳を中心に南八ヶ岳のルートは多くの箇所に分岐があります。 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。
セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。行者小屋の少し上から森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 赤岳は標高2,899mのため、 稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
行者小屋と赤岳鉱泉に水場があります。赤岳頂上小屋では水の販売があります。。山梨県側(清里)ルートには水場がありません。
登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 夜になると電気を落としてしまう山小屋もあります。そんな時トイレに行くのが不自由です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 コースタイムがやや長いのでお好みで持っていくと良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。
ティッシュペーパー必須 止血用などの万が一の時のために必帯です。ポケットティッシュを水で濡らし耳栓として使う場合にも有効です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
赤岳山頂では、7~8月でも最低気温が6度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋必須 鎖場に使います。革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
耳栓あったら良い 赤岳の山小屋では大部屋が基本です。就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。
カメラあったら良い 大パノラマや高山植物が豊富なので山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして4~5個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 行者小屋にザックを置いて、サブザックで身軽な状態で山頂ピストンが出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。
シュラフカバーあったら良い 遭難時や混雑している山小屋(一つの布団に2人)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。

赤岳開山の歴史

赤岳が山岳霊場として開かれたのは江戸時代になってからです。赤岳山頂には赤岳神社の祠があり、国常立命が神として祀られています。

また、横岳の稜線に連なる小ピークには二十三夜峰、石尊峰(せきそんほう)、三叉峰(さんしゃほう)、奥ノ院、大同心、小同心などの山岳霊場に縁のある名前が付いています。

江戸時代には旧暦の6月1日(6月末)が御山始で、霊山の赤岳へ登って修行する人々は、里宮で数日間の精進潔斎(肉食を断ち、行いを慎んで身を清めること) を行った後、登ったとされています。

7年ごとに行われる諏訪大社上社の御柱祭りでは、阿弥陀岳から連なる御小屋山から神木となる大木を切り出します。八ケ岳はまさに神が宿る山であり、古来より神仏習合の山岳信仰の霊山であったのです。

作明行者

赤岳の開山者は登山道別に6人いたとされています。その中で代表的な人物が三人います。

茅野市槻木新田には、東城家と冨田家がありました。東城家の作明行者(東城作右衛門)は、木曽の御嶽山で修行を重ね、天明8年(西暦1788年)、八ケ岳の主峰に登山して赤嶽山と号しました。

この時の登山ルートは、槻木~笹ノ坂~美濃戸~南沢~行者小屋~地蔵尾根~赤岳と思われ ます。

翌年寛政元年地蔵尾根を通って赤岳に登る表道を開山し、「国常立尊」を祭神として二殿造った石祠のうち一殿は赤岳山頂に、残る一殿は下槻木家日向に祀り、赤嶽神社里宮としました。

茅野市槻木の赤嶽神社里宮

本殿内御厨子内に、寛政元年(西暦1789年)に造った一殿が祀られ、「寛政(西暦1789年から1801年)の頃に作明行者が国常立尊を赤岳神社に祀った」とされる碑が立っています。

そして、作明行者の子孫で東城亀重によるものとされる高さ2.5メートル の「赤嶽開山 神力不動明王」や「赤嶽開山 豊照彦霊神」などの碑が建っています。

天龍院海山坊謙明行者(直明行者)

冨田家の天龍院海山坊謙明行者は、安政2年(西暦1855年)、阿弥陀岳を通って赤岳へ登り、赤嶽南口を開山しました。山頂に青銅製御尊像を勧請し、赤嶽山大神と尊崇しました。

茅野市中道の赤嶽神社里宮

境内に高さ2.7メートルの「赤嶽開山 直名行者」の石碑が建っています。
その他「石尊大権現」「駒嶽神社」「湯殿山勤行供養」などの石碑が建っています。

赤岳山頂の二つの小祠の謎

以前から赤岳山頂にはなぜ二つの祠があるのか疑問でした。

赤岳山頂に向かって右手側に赤嶽神社の小祠、左手側に太成宮の小祠があります。 赤嶽神社は、江戸時代に長野県茅野市の行者達によって赤岳が開山された流れを汲むものですが、太成宮は山梨県河口湖町の宗教法人「太成殿 本宮」によって建てられたものです。

事情を知らない多くの登山者が、太成宮の前で手を合わせているのを見ると釈然とせず、後味の悪さを感じてしまいます。

現在、赤岳山頂は国有地となるため南信森林管理署が同宗教法人と話し合いを持ち、撤去に向けて行政指導を行っている最中の様です。

赤岳の赤嶽神社

赤岳山頂の赤嶽神社の小祠
赤岳山頂の赤嶽神社の小祠

この写真は、裏側になります。赤岳開山した行者達にちなんで茅野市街を向いて建てられています。足場の悪い所を回り込んで表側でお参りしてください。

赤岳の太成宮

赤岳山頂の太成宮の小祠
赤岳山頂の太成宮の小祠

太成宮の小祠は手前側に向かって建てられています。

参考文献:槻木区史 名山の日本史

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