甲斐駒ヶ岳とは

標高2,970mの甲斐駒ケ岳は、山梨県北杜市と長野県上伊那郡の県境に位置し、赤石山脈(南アルプス)のほぼ北端にあり日本百名山の一つです。 全般になだらかな南アルプスの中にあって、数少ない急峻な山容を呈しています。

頂上付近は白く輝く花崗岩が露出して、特に南側から見る山頂部は夏でも雪と見まごう様は大変印象的です。

駒ヶ岳と名が付く山は日本に18座ありますが、甲斐駒ケ岳はその最高峰です。数ある駒ケ岳の中でも筆頭と呼ぶにふさわしい高峰です。

北沢峠を登山口とする2ルートは大変アクセスが良く、駒津峰から分岐する直登りルートも難易度は低く登山初心者でもOKです。

一方、黒戸尾根を登るルートは、5合目以上から高度感のある梯子や鎖場が連続するスリリングなルートと言えます。

甲斐駒ヶ岳の地図

甲斐駒ヶ岳の山小屋

南アルプスの山小屋
南アルプス市長衛小屋(ちょうえいごや)
南アルプス市長衛小屋
南アルプスの山小屋
北沢峠 こもれび山荘
北沢峠 こもれび山荘
南アルプスの山小屋
大平山荘
大平山荘
南アルプスの山小屋
仙水小屋
仙水小屋
南アルプスの山小屋
七丈小屋(ひちじょうごや)
七丈小屋

甲斐駒ヶ岳のアクセス

南アルプス登山口-アクセスと駐車場
北沢峠のアクセスと駐車場
北沢峠のアクセスと駐車場
南アルプス登山口-アクセスと駐車場
尾白川渓谷のアクセスと駐車場
尾白川渓谷のアクセスと駐車場

甲斐駒ヶ岳の登山コース概要

北沢峠から双児山経由で直登りルート

右手前が駒津峰、遠景に甲斐駒ヶ岳
右手側が駒津峰、遠景に甲斐駒ヶ岳

北沢峠からは双児山と仙水峠を経由する2つのルートがあります。登山時には甲斐駒ケ岳の眺望が素晴らしい双児山経由ルートがおすすめです。

注意点として双児山経由ルートには水場がないため多めの水を持って行くことをお忘れなく。 駒津峰で両ルートが合流し、稜線を進んだ後、直登りルートと巻き道ルートに分かれます。

駒津峰から分岐する直登りルートも難易度は低く登山初心者でもOKです。

双児山へは北沢峠にある北沢峠こもれび山荘の脇を通って登山道がスタートします。 原生林の中をジグザグにひたすら高度を上げる事に専念します。
2時間ほど単調な登りが続いた後、双児山頂上の下で一気に展望が開けます。目の前の駒津峰に隠され甲斐駒ヶ岳の全容は見えませんが、山頂だけが姿を見せています。

双児山山頂へ上がるにつれ、ピラミダルな山容の甲斐駒ヶ岳が大きく視界に入ってきます。白い花崗岩の岩肌は、日の光に照らされ少しピンクがかり、ひときは印象的で、日本百名山の中でも際立つ存在と言えるでしょう。花崗岩と白砂で覆われる山頂部の白さにより「白崩山」とも呼ばれました。

双児山からハイマツ帯を下り、登り返して樹林帯を抜けると、背丈の低いハイマツ帯の中の登りが駒津峰まで続きます。

駒津峰から ハイマツ帯の稜線上を進むと、次第に稜線は狭くなり、岩稜のやせ尾根となっていきます 。
やせ尾根の両側はさほど切り立ってはおらず、高度感は感じません。 やせ尾根で小さなアップダウンを繰り返し、小ピークに立つと甲斐駒ヶ岳の全容が姿を現します。

一旦小ピークから下り、登り返すと巨大な岩石の六方石の前に出ます。 六方石を右から巻き、少し登った所が直登りルートと巻き道ルートの分岐です。

直登りルートは分岐をそのまま直進し、岩稜の登りが始まります。分岐から15分ほどの区間が急傾斜の岩登りで核心部と言うことが出来ると思います。
核心部にはやや高度感のあるトラバースが一か所ありますが、それ以外の岩場にはステップやホールドがしっかりあり難しくありません。

また、直登りルートには、しっかり赤ペンキマークがされ、ルートを見失う心配はありません。 鎖場はありませんので登山初心者でも十分登頂可能なルートです。
それでも不安の方は巻き道ルートをお勧めしますが、直登りの方が遙に楽しいルートであることは間違いありません。

核心部を過ぎれば一気に傾斜は緩くなり、甲斐駒ヶ岳山頂までハイキング感覚の登山となります。

巻き道ルートと組み合わせて登るのが甲斐駒ケ岳を満喫する秘訣です。下山時は巻き道ルートを使い、摩利支天に立ち寄ってみてください。

アクセス

北沢峠 へのアクセスは長野県伊那市の仙流荘前から南アルプス林道バスに乗り約55分、または、山梨県南アルプス市の市営芦安駐車場前からバス又は乗合タクシーを使い広河原へ約1時間、そして広河原で北沢峠行きバスに乗り換え25分です。

コースタイム

  • 登山:北沢峠→駒津峰 2時間50分 駒津峰→甲斐駒ヶ岳 1時間10分 合計:4時間
  • 下山:甲斐駒ヶ岳→駒津峰 50分 駒津峰→北沢峠 1時間50分 合計:2時間40分

難易度 2/10

体力  2/10 (日帰り)

北沢峠から仙水峠経由巻き道ルート

沢峠から仙水峠経由で巻き道ルート
仙水峠から左手に駒津峰、右手に甲斐駒ヶ岳

今回は仙水峠を経由して駒津峰に登り、巻き道ルートを使って甲斐駒ヶ岳を目指すルートを紹介します。 北沢峠を出発して30分ほどで仙水小屋に到着します。この後、水場はないのでたっぷりと水を補給します。

甲斐駒ヶ岳山頂までは鎖場などの難所はなく登山初心者向けと言えます。

理想的なコース設定は、登山時は双児山経由から直登りルートで山頂を目指し、下山時は巻き道ルートを使い、途中で摩利支天に立ち寄ると面白いと思います。そして仙水峠を経由して北沢峠に下山すると、途中の仙水小屋で水の補給が出来ます。

仙水峠を経由して駒津峰へは北沢峠のバス停から10分ほど林道(南アルプス林道バス通り)を歩き、南アルプス市長衛小屋に向かう側道に入ります。
渓谷沿いに作られた大きなテント場を右に見送り、南アルプス市長衛小屋の裏にある橋を渡って仙水峠に向かう登山道が開始します。

渓谷沿いの登山道を30分ほど上がると仙水小屋に着きます。仙水小屋前の登山道沿いに設けられた水場にはこんこんと水が流れ、ここで無料の水を補給します。

右手にある仙水小屋のテント場をやり過ごし、樹林帯を抜けると岩のごろごろした所で展望が開け、その右の縁のハイマツに沿って上がります。 岩塊の中の登りが続き、遠く先に見えるV字状の地形のその先にある仙水峠を目指します。

多くのケルンが積まれた仙水峠で、駒津峰から甲斐駒ヶ岳へ向かうコースと栗沢山へ向かうコースに分岐します。

仙水峠から駒津峰へは針葉樹林帯、ハイマツ帯、ダケカンバの林の順に急坂を登れば到着します。
駒津峰は双児山からのコースが合流する所で、その山頂は平坦で広く、360度の展望が開ける休憩の最適地となっています。

巻き道ルートは、直登りルート分岐で右方向に進みます。直ぐに現れる斜度50度、長さ3mほどの岩場を下ります。 この岩場は樹林帯の中で高度感は無く、ホールドもしっかりしているので難なく降りる事が出来ます。

下りきった所から甲斐駒ヶ岳山頂までなだらかな砂地の登りが続きます。

途中で右手方向に摩利支天へ向かう登山道が伸びています。 今回は摩利支天分岐から摩利支天をピストンします。摩利支天へ向かうなだらかな道にはロープが張られ、ルートを見失う心配はありません。

山梨県側から見る摩利支天は急峻な山容を呈していますが、摩利支天に登る登山道は緩やかで、難所はありません。ハイマツで覆われた丸い摩利支天の山頂には、信仰の山を象徴するように剣が刺さっています。

摩利支天の分岐まで戻り、なだらかな砂地の道を登れば、黒戸尾根からの登山道と合わせ、甲斐駒ヶ岳山頂に到着です。

コースタイム

  • 登山:北沢峠→駒津峰 2時間50分 駒津峰→甲斐駒ヶ岳 1時間50分 合計:4時間40分
  • 下山:甲斐駒ヶ岳→駒津峰 1時間20分 駒津峰→北沢峠 2時間5分 合計:3時間25分

難易度 1/10

体力  3/10 (日帰り)

黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳ルート

黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳ルート
黒戸尾根の核心部

山岳信仰によって開山された甲斐駒ヶ岳は、山梨県北杜市白州町に表登山口があります。それを物語る様に標高差2,200mを越える黒戸尾根のいたる所に霊神碑、石造、剣などが祀られています。

特に5合目から7合目にかけての鎖場や梯子が連続する急登を敬遠して、近年では北沢峠から登る登山者が多くなっています。

とは言え、変化に富んだスリリングな黒戸尾根ルートは、夏のハイシーズンの土曜日、日曜日になるとトレイルランナーも含め、一部の愛好家でにぎわう人気コースでもあります。

黒戸尾根をピストンする場合にはコースタイムが長い為、途中の七丈小屋で一泊するのが一般的です。七丈小屋は通年営業の山小屋で、テント場も充実しています。

また、黒戸尾根を登り山頂から反対側の北沢峠に下山し、仙丈ケ岳に登るのもよし、もしくは仙水峠へ下り、栗沢山を経由して早川尾根・鳳凰三山へと縦走するコースもお勧めです。

黒戸尾根登山口にある尾白川渓谷駐車場は夏のシーズン中の土日になると100台の駐車場は一杯となり、下流の道路には路上駐車の列が長く伸びる事もしばしばあります。

滝が連続する尾白川渓谷は山梨県の中にあっても最も綺麗な渓谷で、上流の不動滝までの周遊コースをめぐる人々や水遊びをする人々で大変混雑します。

山岳信仰によって開山された黒戸尾根は甲斐駒ケ岳の表登山道で、日本三大急登の一つに数えられ、標高差2,300mのロングコースには高度感のある梯子や鎖場が連続して現れます。
特に樹林帯の中とはいえ5合目から7合目にかけての高度感たっぷりの梯子や鎖場が連続する所が、黒戸尾根の核心部といって良いでしょう。

近年では北沢峠から甲斐駒ケ岳へ登る登山者がほとんどですが、歴史を感じる登山道を登り、山頂を極めた時の喜びは大きいと言えます。また、土日になるとトレイルランナーが黒戸尾根を山頂までわずか2時間30分ほどで駆け上がって行く姿をよく目にします。

黒戸尾根の登山道は、尾白川渓谷駐車場を出発して竹宇駒ケ岳神社の参道を奥へ進むみ、尾白川渓谷に架けられたつり橋を渡ってスタートします。

樹林帯をジグザグに登ると横手登山口からの登山道が合流する笹ノ平に着きます。 笹ノ平は休憩の最適地で「甲斐駒ケ岳まで7時間」の道標が立っていて、これからの長い山行を予感させられます。

樹相が針葉樹林に変化する辺りから地面は苔に覆われ、より緑を深めていきます。

行く手の先から光がもれだすと展望が一気に開け、「刃渡り」と呼ばれる難所が現れます。 「刃渡り」の左側は、樹木が生えているとはいえほぼ垂直な断崖です。右側は斜度40度ほどの一枚岩となっていて、その縁の部分の岩に鎖が取り付けられています。過去に滑落事故が発生している場所なので、通過には注意が必要です。

その後、黒戸山の山頂を右から巻く様に登り、一旦100mほど下ります。 下りきった所が五合目の平坦地で、ここから七丈小屋の建つ七合目まで、梯子や鎖の連続となります。

五合目からまず長い梯子を登り、ついで右側が切れ落ちた梯子を登ります。 さらに梯子が何度か続き、橋を渡ると黒戸尾根の核心部に突入します。
ほぼ垂直な高度感がある梯子を登るとすぐに右に梯子があります。 この梯子の後の鎖場は約3m、傾斜70度で黒戸尾根ルートの中でも高度感たっぷりの所です 。 鎖場を登りきりトラバースすると核心部終了です。

七丈小屋からダケカンバの林を抜けた所が森林限界で、ハイマツ帯に入ると展望が開け、八日合目御来迎場に到着します。

八日合目御来迎場からは雄大な甲斐駒ケ岳の山頂部が眺めます。 ここから山頂までは鎖が設置された岩場が数か所現れますが、特に高度感は無く難しくはありません。

甲斐駒ヶ岳山頂に立つと南アルプスの代表的な山々である北岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、鋸岳などの眺望を堪能できます。また、北側に目をやると八ヶ岳がすそ野を広げています。

コースタイム

  • 登山:竹宇駒ヶ岳神社→甲斐駒ヶ岳 9時間30分
  • 下山:甲斐駒ヶ岳→竹宇駒ヶ岳神社 5時間40分

難易度 5/10

体力  3/10 (1泊)

甲斐駒ヶ岳の日帰り登山は出来る?

甲斐駒ケ岳への最短のアプローチは北沢峠を登山口とするルートです。長野県側、山梨県側からともにバス便があり、長野県側からは戸台口の仙流荘前から北沢峠行きバスが出ています。

山梨県側からは芦安からバスで広河原へ入り、広河原で北沢峠行きバスに乗り換えます。

また、JR身延駅からは奈良田を経由するバスで広河原へ入り、広河原で北沢峠行きバスに乗り換える事も可能です。

仙流荘前発のバスが最も早く北沢峠に着けます。また、シーズン期間中の各バスは、登山者の数に応じて臨時バスも増発されています。

しかし、北沢峠と甲斐駒ケ岳をピストンするコースタイムは7時間程なので日帰り可能な時間ですが、帰りのバスの時間を考慮すると、北沢峠辺りの山小屋に泊まる必要があり、実質山中一泊の行程となります。ただし、始発のバスに乗れば日帰り可能です。

南アルプス林道バス発着所横の仙流荘に泊まる

仙流荘

仙流荘

外来入浴料金; 大人(中学生以上)  600円
外来入浴時間 12;00~20;00 (受付終了19:30) 

男風呂・女風呂共に露天風呂・内湯が1箇所ずつそれぞれにサウナ有り。

南アルプス林道バスの発着場まで徒歩1分です。

甲斐駒ヶ岳の登山口近くの温泉

尾白の湯 べるが

尾白の湯 「べるが

日帰り入浴施設の尾白の湯 「べるが」は超高濃度のミネラルが含有した天然温泉です。併設するキャンプ、宿泊施設が充実しています。
黒戸尾根登山口近くにあります。

【住  所】  〒408-0315 山梨県北杜市白州町白須8077-1
【T E L】   0551-35-2800
【営業時間】10:00〜20:00(最終受付19:30)。
【定 休 日】 水曜日

日帰り入浴料金
一人 830円(北杜市外) 420円(北杜市内)

甲斐駒ヶ岳の天気の特徴

晴天の小海線と甲斐駒ヶ岳
晴天の小海線と甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳は晴天の確率が比較的高い

南アルプスの北部に位置する北岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量は多くありません。

また、南アルプスの中では比較的晴天に恵まれることが多いのも 特徴に挙げられます。甲斐駒ケ岳のある北杜市の晴天率は日本でも屈指です。

6月から7月の梅雨明けまでは晴天の確率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋も比較的晴天に恵まれます。しかし、10月上旬に初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

甲斐駒ヶ岳の魅力

JR中央線の「特急あずさ」に乗り甲府盆地を過ぎた辺りで左手方向に鳳凰三山が現れ、その稜線の後方に山頂部だけをのぞかせる北岳が見えてきます。やがて右手方向に八ケ岳が大きくなってくると、左手の車窓から甲斐駒ケ岳が見え始めます。

中央線の日野春・長坂駅辺りから見る姿が最も美しく、摩利支天の岩壁を従えた山容はいっそう峻嶮に見え、登頂意欲を掻き立てられます。

これが小淵沢駅まで来ると摩利支天は見えなくなり、ただの三角形状のピラミッドの様な形となってしまいます。

JR中央本線長坂駅から歩いて10分ほどの所にある長坂池(牛池)からや北杜市神田の大イトザクラと甲斐駒ヶ岳とのコラボは一見の価値があります。

また、北杜市武川町の実相寺の桜と水仙が甲斐駒ヶ岳に花を添えます。境内には樹齢1800年~2000年の山高神代桜があります。

甲斐駒ヶ岳の高山植物

花崗岩で出来た甲斐駒ヶ岳では高山植物が育ちにくい

南アルプスにおいて花崗岩は甲斐駒ヶ岳から鳳凰三山にかけて分布しています。花崗岩は風化すると小さな粒状になり、雨によって流されてしまいます。

そのため甲斐駒ヶ岳では高山植物が育ちにくく、北岳、悪沢岳、赤石岳などに見られるような広範囲に渡る高山植物のお花畑を形成することがありません。

甲斐駒ヶ岳は花崗岩によって出来ています。花崗岩は、地下深くの溶岩がゆっくりと冷えて固まった岩石で、白と黒の鉱物結晶で、大きな岩体となります。

均一な構造を持っているため、固く割れ目が生じにくいのが特徴です。

そのため、建築用の石材として利用価値が高いものです。とわいえ、甲斐駒ヶ岳の山頂の様に急な斜面で、岩肌がむき出しになると、雨風によって僅かな割れ目が生じます。

すると細かい砂粒になって岩肌から剥がれ落ちるように風化していきます。この砂を真砂(まさ)と呼び、非常に流れやすいものです。

そのため、甲斐駒ヶ岳の山腹では高山植物があまり育たず、北岳の様な大きなお花畑を作ることはありません。

甲斐駒ヶ岳の地質

黒戸尾根がアサヨ峰の下部辺りから右手上方に伸び、黒戸山から少し下り、甲斐駒ケ岳山頂に突き上げています。深く浸食された地形は、数多くのバリエーションルートを提供し、尾白川、大武川の渓谷をはじめ、赤石沢奥壁、黄蓮谷などの岩登りのゲレンデとなっています。

日本列島を分断する地溝帯フォッサマグナが甲斐駒ケ岳の北側を走っています。この断層が山麓との標高差2200メートルを超える切り立った地形を作り出しています。山全体が花崗岩で作られ、山に降った雨が花崗岩によってろ過され、麓の白州町の扇状地に湧き出す水が名水として利用されています。

国道20号線沿いの「白州道の駅」では無料で名水を汲む事が出来る施設があります。また、サントリー工場で作られる「南アルプスの天然水」は有名です。

各種情報

甲斐駒ヶ岳登山ツアー

  • 甲斐駒ヶ岳|登山・トレッキングツアー

観光協会

  • 伊那市観光協会  電話:0265-96-8100                                                                                         
  • 北杜市観光協会 電話:0551-30-7866

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

甲斐駒ヶ岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-9.1-14.8-20.5
2月-7.6-13.7-19.8
3月-3.3-9.9-16.0
4月3.4-3.7-10.6
5月8.12.1-4.2
6月11.15.50.8
7月14.39.04.8
8月15.89.75.3
9月11.55.81.3
10月5.7-0.6-6.0
11月-0.4-7.0-12.8
12月-6.1-12.1-17.4

甲斐駒ヶ岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラステント
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月×××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!甲斐駒ヶ岳はいたるところに分岐があります。 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。
セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。駒津峰辺りで森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 甲斐駒ヶ岳は3000メートル近くあるので、 稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 水不足にならないように天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
登山口の北沢峠から30分ほどの所にある仙水小屋にしか水場がありません。
登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 就寝後、完全に電気を落とす山小屋がほとんどです。真っ暗の中でトイレに行くのが困難な事もあります。また夜の行動を余儀なくされた場合にはライトがなければ歩けません。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 登山のコースタイムが長いので多めに持っていくと良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。
時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。仙丈ヶ岳も連続で登る場合には、登山行程が長く体力を必要とするので、トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合や、転んで出血した時の止血用として必帯です。ポケットティッシュを水で濡らし耳栓として使う場合にも有効です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
甲斐駒ヶ岳山頂では、7~8月でも最低気温が5度近くまで下がることがあります。軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋必須 黒戸尾根を登る時には鎖場や梯子が連続します。三点支持で登る時に使います。革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
耳栓あったら良い 甲斐駒ヶ岳は山中の山小屋で最低でも一泊するコースがほとんどです。山小屋では大部屋が基本です。就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。
カメラあったら良い 大展望の景色をおさめて山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして7~8個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 黒戸尾根ルートの場合、七丈小屋にザックを置いて、サブザックで身軽な状態で登頂出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。
シュラフカバーあったら良い 遭難時や混雑している山小屋(一つの布団に2人)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。

甲斐駒ヶ岳に縄文人が登っていた

甲斐駒ケ岳は、江戸時代後期文化13年(西暦1816年)6月に、小尾権三郎が黒戸尾根からの初登頂に成功します。それ以後、山岳信仰の霊場として隆盛をきわめることになります。

しかし、驚くことに1988年に信藤祐仁氏らは、甲斐駒ケ岳山頂に1等三角点を設置する工事の際に、縄文時代後期の無紋土器を偶然見つけます。

これは日本で一番高い所で発見された縄文土器ですが、近年に登山者が故意に埋めたものかは確定されていません。

もし、縄文人達が山頂まで登ったとするならば、どうやって登ったのであろうか?数千年の時を経て、縄文人達の山岳信仰が息づいているのを覚えます。

甲斐駒ヶ岳開山の歴史

黒戸尾根登山道に多数の霊神碑や祠

江戸時代の初期には既に開山されていたようだが、はっきりした事はわからず、

明確な資料が残るのは江戸時代後期文化13年(西暦1816年)6月のことです。開山を行ったのは長野県茅野市生まれの修験道の行者である延命行者・鐇弘法印、俗名・小尾権三郎です。

小尾権三郎は、文化10年十八歳の時に、山梨県北杜市白州町横手の名主であった山田家に甲斐駒ケ岳開山の申請を出します。当時、不浄の者が山に入ると洪水など自然災害などが起こると考えられ、修行が不十分な権三郎には入山の許可がおりませんでした。権三郎は、甲斐駒ケ岳を源流とする尾白川渓谷を中心として、日本全国の霊山で修行を積み、3年後の22歳になった時、再び山田家に甲斐駒ケ岳開山の申請をします。山田家では権三郎の修行に多くの支援をしていたようで、山田家の一角の小さな小屋を権三郎の修行部屋として貸していたと言います。

文化13年、権三郎22歳の時に甲斐駒ケ岳開山の許可がおります。そして、権三郎は、甲斐駒ケ岳に入り、開山に挑みます。しばらく経っても権三郎が戻らないので、信州諏訪の実家では心配になり、捜索も行われた様です。入山から3ヶ月経ってヒゲモジャの行者が山から降りてくる姿を見たという言い伝えが山田家に残っています。※権三郎がどのルートを通って開山したかは不明です。

開山に成功した権三郎は、京に上って、「神道神祇管長白河殿」より「駒ケ嶽開闢延命行者五行菩薩」という尊称を賜ることになりますが、開山から3年後に若くして亡くなります。甲斐駒ケ岳の開山の功績を称えて黒戸尾根六合目にある不動岩に「大開山威力大聖不動明王」として祀られたとされています。その後、甲斐駒ケ岳は山岳霊場として信仰登山が盛んになっていきます。

黒戸尾根の登山道には多数の石碑・霊神碑が建立されています。 駒ヶ岳講は江戸時代後期から盛んになり、出発前には精進潔斎を行い白装束に身を包み登拝しました。講のリーダーを先達(せんだつ)と呼び、経験及び知識豊富な人がなったようです。先達が死ぬと魂は山に帰るとされ、霊神碑を山道に建立し、依代として祀ったとされています。
尾白川渓谷近くの竹宇と横手の駒ヶ嶽神社は、山頂を本宮(奥宮)とする前宮(里宮)です。竹宇駒ヶ嶽神社では4月10日から16日の間の日曜日に、横手駒ヶ嶽神社では4月20日に祭典が催され、太々神楽が奉納されます。当日は、多くの氏子、崇敬者、講社などの参拝者で賑わいます。

※竹宇駒ヶ嶽神社と横手駒ヶ嶽神社とは関係がなく、駒ヶ岳講も別々に組織されています。

※ 精進潔斎(しょうじんけっさい)-肉・魚の類を口にせず,飲酒・性行為などを避け,おこないを慎むことによって,心身を清浄な状態におくこと。
※ 講-同一の信仰を持つ人々によるグループである。
※ 依代(よりしろ)-神霊が降臨する際の媒体となるもの。

小尾権三郎の死の謎

権三郎は25歳という若さで亡くなっています。

死の原因は不明ですが、諏訪地方に多くいた御嶽山信仰の道者との間に何かのトラブルを抱えていたのかもしれません。

権三郎は、甲斐駒ケ岳開山後、錫杖の頭や巻物など修験者として必要な9品を山田家に渡すよう権三郎の父、今右衛門に頼みます。このことは権三郎が今後修験者として生きていかない決意を意味しています。 これらの9品は、権三郎の死後13回忌に山田家に届けられています。

彼の出身は長野県茅野市上古田(村岡平)で、諏訪地方における修験道の中心が御嶽山であったことから、甲斐駒ケ岳における修験道を広めるのは容易なことではなかったようです。その辺に死の原因が隠されているかもしれません。