赤石岳とは

赤石岳は、南アルプス国立公園内にあり日本百名山の一つです。標高3,121M で南アルプス南部では悪沢岳(荒川岳)について2番目の高さです。

赤石岳と荒川三山を結ぶ縦走路が人気のコースです。最も短時間で登れる登山口は椹島ロッジからで、ほとんどの登山者がピストンする事なく荒川岳と共に、稜線を縦走する周回コースを選んでいます。

登山者の大多数が左回り、つまり椹島ロッジを出発し、千枚岳、荒川岳、赤石岳と縦走し、椹島ロッジへ下るコースです。

幸いに途中には千枚小屋、中岳避難小屋、荒川小屋、赤石岳避難小屋、赤石小屋が上手く配置され、利便性が高いのがいいですね。

これらの小屋はすべて特使東海製紙株式の子会社である特種東海フォレストが静岡県の委託を受けて運営しています。これらの山小屋は10人以下の場合には予約の必要はありません。

赤石岳の地図

赤石岳の山小屋

南アルプスの山小屋
椹島ロッジ(さわらじまろっじ)
椹島ロッジ
南アルプスの山小屋
千枚小屋
千枚小屋
南アルプスの山小屋
荒川小屋
荒川小屋
南アルプスの山小屋
百間洞山の家
百間洞山の家
南アルプスの山小屋
聖平小屋
聖平小屋
南アルプスの山小屋
赤石小屋 (あかいしごや)
赤石小屋

赤石岳のアクセス

南アルプス登山口-アクセスと駐車場
椹島・二軒小屋のアクセスと駐車場
椹島・二軒小屋のアクセスと駐車場

赤石岳の登山コース概要

椹島から東尾根/大倉尾根ルート

北沢源頭部からハイマツ帯を登る
北沢源頭部からハイマツ帯を登る

赤石岳のアクセスはマイカーが便利です。畑薙第1ダムの下流にある畑薙夏期臨時駐車場には仮設テントが張られ、登山指導員から入山届及び下山届の記入を呼びかけられます。東海フォレストの送迎バスは、椹島ロッジ及び二軒小屋、更には山中にある山小屋、避難小屋の利用者は無料で利用出来ます。

送迎バスは舗装のなされていない東俣林道を走ること約1時間で登山基地となる椹島ロッジに到着します。途中、車窓から聖岳が見えるポイントや赤石岳を写すライブカメラ、林道沿いに咲く花など、運転手さんの巧みな話で盛り上がります。

標高2700m 地点にある富士見平で、森林限界を超えます。それまではカラマツ、サワラ、カンバ、シラビソなどの樹林帯の中をひたすら高度を稼ぐことのみに費やされます。

富士見平からはラクダの背と呼ばれる尾根部分の南側をトラバース気味に進みます。途中に桟橋が複数箇所架かり、転倒・スリップには要注意です。

ダケカンバの林の中のトラバースが終わると北沢源頭部に至ります。水場からは十分な量の水が流れ、水を補給します。 ただし、秋になれば枯れる可能性も否定出来ません。

そして、ミヤマキンポウゲなどの高山植物が咲き乱れる沢沿いを九十九折に登っていきます。 カール中央部を左上方に横切り、小尾根に取り付きます。ガレた岩稜帯を登りきれば赤石小屋分岐の指導標のある稜線に飛び出します。

北沢に落ち込む北沢カールを隔てて目指す赤石岳がすぐ近くに見えてきます。 分岐から25分ほど稜線を登れば日本百名山で南アルプス南部の盟主3120メートルの赤石岳山頂に到着します。

赤石岳山頂は平坦の地形で、二重山稜(線状凹地)が認められます。山頂から少し下った所に赤石岳避難小屋があるので、悪天候時などの計画変更に大変便利です。

コースタイム

  • 登山:椹島ロッジ⇒赤石小屋 5時間10分 赤石小屋⇒赤石岳 2時間10分 計7時間20分
  • 下山:赤石岳⇒赤石小屋 2時間30分 赤石小屋⇒椹島ロッジ 3時間30分  計6時間

難易度 2/10

体力  7/10 日帰り

荒川岳(前岳)から赤石岳縦走ルート

赤石岳と奥西河内の源流本谷の上流部に大聖寺平、荒川小屋が見える
赤石岳と奥西河内の源流本谷の上流部に大聖寺平、荒川小屋が見える

荒川三山の中岳から赤石岳に至る縦走ルートです。荒川岳(前岳)の東斜面をトラバース気味に降りて行きます。登山道はザレているのでスリップ・転倒に細心の注意を払って下って行きます。

稜線を超えると、このルート最大のハイライトであるお花畑に突入します。ここのお花畑は南アルプス最大の規模を誇り、ハクサンイチゲやシナノキンバイなどが前岳の南東斜面を覆い尽くしています。鹿の食害を防ぐ為に柵が設けられ、扉を開いてお花畑の中に入って行きます。

お花畑をすぎると小さな沢があり、喉を潤すことが出来ます。しかし、秋になると枯れることが多いと言われています。ここからダケカンバの林をトラバース気味に下って行くと荒川小屋に到着します。

荒川小屋からダケカンバの林を抜け一気に展望が開けると、開放的な大聖寺平が目の前に広がります。大聖寺平の分岐標識から西側に向かう道は、小渋川を何度も渡り返す上級者ルートです。大聖寺平から緩やかな登山道を登ると、ダマシ平です。ダマシ平は平坦地で霧が発生するとルートを見失う恐れがあるので注意が必要です。

ダマシ平から進路を南東方向に変えて、つづら折りの急登を登ると標高3,030メートルの小赤石岳の肩に飛び出します。ここから小赤石岳までの稜線は、ミニズオウ・キバナノコマノツメ・タカネヤハズハハコ・ハクサンシャクナゲなどの高山植物が咲く空中散歩です。赤石小屋分岐を左に見送り、25分ほどで赤石岳山頂です。

コースタイム

  • 荒川岳(前岳)⇔赤石岳 3時間20分 

難易度 1/10

体力  1/10

聖岳から百間洞経由で赤石岳縦走ルート

百間平から右手に赤石岳、馬ノ背稜線の左手に荒川三山
百間平から右手に赤石岳、馬ノ背稜線の左手に荒川三山

前聖岳から赤石岳へ馬蹄形に縦走するコースです。前聖岳からハイマツ帯の中の石屑の道をなだらかに下ります。その間、行く手の兎岳、中盛丸山、大沢岳などがはっきりと視界に入ります。また、今晩宿泊する百間洞山の家が百聞洞の源頭部に赤くぽつっと見えています。そこまで約6時間のコースタイムです。中盛丸山と大沢岳の鞍部にある百間洞下降点からトラバースして百間洞山の家へ下れば30分コースタイムを縮めることが出来ます。

昭文社の地図には聖岳北東面の赤色チャート盤岩露出地、兎岳避難小屋下の崖の縁の通過、大沢岳のガレ縁の通過に危険マークが付けられていますが、3ヶ所とも技術的な登攀能力は必要とせず、慎重に歩けば問題ありません。

兎岳直下の避難小屋は、2009年に改修され使用出来るようになっています。6人ほど入れば一杯になりますから、あくまでも緊急時に使用するためのもので、登山計画には入れないほうがいいと思います。

百間洞山の家は、土・日にかかわらず常時混雑している様です。当日も平日でしたが、ぎゅうぎゅう詰めでした。登山者の数に比べ収容能力が50人前後と小さいためです。キチキチに詰め込まれることを覚悟の上、宿泊する必要があります。

百間洞山の家から赤石岳山頂までは約2時間20分コースタイムです。百間平はハイマツの広がる平坦地で、所々にお花畑を形成しています。天上の楽園と形容するのにぴったりの場所と言えます。

馬ノ背は気持ちの良い尾根歩きで、荒川岳・聖岳の絶好のビューポイントです。

赤石岳南西面の大斜面をトラバースすると山頂部が近づきます。急斜面をひと上りすると赤石岳避難小屋が目に飛び込んできます。 そして、二重山稜の縁を5分ほど歩けば赤石岳山頂です。

コースタイム

  • 前聖岳→百間洞山の家(大沢岳経由)7時間50分、百間洞山の家→赤石岳 2時間20分 、合計9時間50分
  • ※反対周りでもほぼ同じコースタイム

難易度 2/10

体力  5/10

赤石岳の日帰り登山は出来る?

登山口の椹島ロッジの標高は1,100mで、赤石岳の標高は3,120m、獲得標高は2,000mを超えます。しかも、森林限界が2,700mぐらいの高さにある為、針葉樹林帯の中の単調な登りを約6時間以上強いられます。

椹島から東尾根/大倉尾根を登るルートが最短で、ピストンの往復でコースタイムが13時間20分かかります。椹島ロッヂ発の最終バスが14:00なので日帰り登山は不可能と言えます。

健脚者は一気に山頂まで上り、赤石岳避難小屋に宿泊するのも良いでしょうが、標準的な登山者は途中の赤石小屋に宿泊し、翌朝に備えるのが賢明でしょう。

赤石岳の登山口近くの温泉

南アルプス赤石温泉 「白樺荘」

赤石温泉白樺荘

素泊まりプラン¥4110~
 どのお部屋でも一人(中学生以上)¥4110 

食事2食付きプラン¥6990~
 ​宿泊料金一人(中学生以上)朝・夕食付で¥6990

日帰り入浴
4月~11月 午前10:00~午後6:00
12月~3月 午前10:00~午後5:00

中学生以上 510円
小学生   200円 小学生以下無料

赤石岳の天気の特徴

晴天の赤石岳
晴天の赤石岳

赤石岳は北部に比べてやや晴天率が低い

南アルプスの南部に位置する赤石岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量は多くありません。

また、南アルプスの中では北部に比べてやや晴天率が低い傾向にあることが特徴に挙げられます。

夏山シーズンの期間:7/13 ~ 10/10までは登山口の椹島ロッヂまで送迎バスが運行されています。

7月の梅雨明けまでは晴天の確率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋も比較的晴天に恵まれます。しかし、10月上旬で初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

赤石岳の魅力

南アルプスで最も広いお花畑

荒沢岳(前岳)南東斜面に大規模なお花畑

荒沢岳(前岳)と荒川小屋間の斜面に南アルプス最大の規模を誇るお花畑はがあります。ハクサンイチゲやシナノキンバイなどが前岳の南東斜面を覆い尽くしています。

鹿の食害を防ぐ為に柵が設けられ、扉を開いてお花畑の中に入ります。

赤石岳に咲く数々の高山植物

赤石岳・赤石山脈の名前の由来

赤色チャート

赤石岳の東側を流れる大井川の支流、赤石沢の源流に赤色の岩石ラジオリヤチャート岩盤が多く見られます。この赤色チャート層が雨に濡れると美しく赤色に発色することから、赤石岳及び赤石山脈の名前の由来になりました。

赤色チャート層は、遠洋性プランクトンである放散虫の殻が深さ1000メートルの海底に降り積もって出来た地層が長い年月をかけて隆起し、地表の露出したものです。赤色チャート層は、北岳、塩見岳、悪沢岳、聖岳周辺などでも見ることが出来ます。

北沢カール

南アルプスには二万年前まであった氷河によって削られた地形、圏谷(けんこく)すなわち広い椀状のカール地形が存在する南限とされます。

赤石岳においては、東側斜面に北沢カールがあります。 そして北沢カール周辺は、7月下旬から8月上旬にかけてハクサンイチゲやシナノキンバイなどの高山植物が咲き乱れるお花畑が広がります。

各種情報

赤石岳登山ツアー

  • 赤石岳|登山・トレッキングツアー

観光協会

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

赤石岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-10.1-16.5-21.3
2月-8.5-14.6-20.6
3月-4.0-10.5-16.9
4月2.5-4.5-11.5
5月7.30.9-5.1
6月10.24.60.0
7月13.48.14.4
8月14.98.94.5
9月10.64.90.6
10月4.8-1.5-6.8
11月-1.2-7.8-13.6
12月-7.0-14.0-18.3

赤石岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラステント
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 赤石岳山頂は広いので濃霧時には登山地図を忘れると道迷いの原因に! 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。
セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。標高2,700m辺りで森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 赤石岳は3,120メートルあり 稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
荒川小屋、赤石小屋、砲台休憩所に水場があります。また、赤石岳避難小屋では有料で水の確保は可能です。
登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 夜になると電気を落としてしまう山小屋もあります。そんな時トイレに行くのが不自由です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 縦走登山ではコースタイムが長いので多めに持っていくと良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。
時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。荒川岳や赤石岳の周回ルートでは行程が長く体力を必要とするところが多いので、トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。ポケットティッシュを水で濡らし耳栓として使う場合にも有効です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
赤石岳山頂では、7~8月でも最低気温が4度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い 革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
耳栓あったら良い 赤石岳は山中の山小屋で最低でも一泊するコースがほとんどです。山小屋では大部屋が基本です。就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。
カメラあったら良い 高山植物が豊富なので山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして8~9個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 赤石小屋分岐から赤石岳ピストンではザックを置いて、サブザックで身軽な状態で登ることが出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。
シュラフカバーあったら良い 遭難時や混雑している山小屋(一つの布団に2人)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。

特種東海製紙株式会社の社有林

特種東海製紙株式会社の社有林

社有林の面積は約24,430ha。赤石岳、悪沢岳、千枚岳、塩見岳、間ノ岳、笊ヶ岳の山頂部分を含み、東西の最広部約13km、南北約33kmという広大な山域に及んでいます。

この広は民間が所有する土地の中で日本最大です。ちょうど山手線内の4倍に相当する広さです。