悪沢岳/荒川岳とは

荒川岳は、赤石岳とともに南アルプス南部を代表する山で、日本百名山に選ばれています。前岳、中岳、悪沢岳(東岳)の三つの山を総称して荒川岳と呼び、別名荒川三山とも呼ばれています。標高3,141 mの悪沢岳(東岳)が最高峰で、日本第6位の高さです。

悪沢岳単体で登られることは少なく、赤石岳と共に周回コースを取る登山者がほとんどです。多くの登山者が反時計回りで周回する様です。椹島ロッジから千枚尾根を登り千枚岳を目指します。

千枚岳はゴジラの背の様な岩場の痩せ尾根で、その通過が核心部です。また、悪沢岳から中岳へ向かう下りがザレた急坂で、浮石が多く、転倒注意箇所です。

悪沢岳/荒川岳の地図

悪沢岳/荒川岳の山小屋

南アルプスの山小屋
椹島ロッジ(さわらじまろっじ)
椹島ロッジ
南アルプスの山小屋
千枚小屋
千枚小屋
南アルプスの山小屋
荒川小屋
荒川小屋
南アルプスの山小屋
百間洞山の家
百間洞山の家
南アルプスの山小屋
赤石小屋 (あかいしごや)
赤石小屋

悪沢岳/荒川岳のアクセス

南アルプス登山口-アクセスと駐車場
椹島・二軒小屋のアクセスと駐車場
椹島・二軒小屋のアクセスと駐車場

悪沢岳/荒川岳の登山コース概要

椹島から千枚岳ルート

悪沢岳(東岳)から中岳。右側が中岳、左奥が前岳。左奥に雲に隠れて赤石岳。
悪沢岳(東岳)から中岳。右側が中岳、左奥が前岳。左奥に雲に隠れて赤石岳。

椹島ロッジの裏手から登山道が始まります。右手に井川山神社を見て、つづら折りの急斜面を登ると東海フォレストの送迎バスが通る東俣林道に出ます。

林道をしばらく歩くと大井川に架かる滝見橋です。橋のたもとを左手に入って行きます。大井川沿いの道を進み奥西河内のつり橋を渡ると落葉広葉樹の急坂になります。

「岩頭見晴」と呼ばれる展望台を通過し、痩せ尾根のアップダウンを繰り返えすと再び林道に飛び出します。林道をわずかに右に向かい鉄梯子を登ります。広葉樹林に覆われた小石下ではベンチに座り一休みします。

この先、比較的なだらかな登山道が清水平まで続きます。コンコンと流れる清水平の水場で喉をうるおし長い休憩をとります。

そして、オオシラビソの原生林の中に「蕨段」と呼ばれる平坦地を通過し、見晴岩に出ます。千枚尾根を登るルートは針葉樹林に覆われ展望がききません。見晴岩は、赤石岳から悪沢岳へかけて一望出来るこのコース唯一の展望台です。

木材運搬用の木馬道として使われた真直ぐな登山道を登ると、右手側に駒鳥池がシラビソの林の中にひっそりと水をたたえています。運搬用ロープウェイの下を潜り、西へ進路を変えると千枚小屋に到着します。

千枚小屋を出発し、マルバダケブキなど背の高い高山植物の中を斜めに横切りながら登って行きます。マンノー沢頭分岐を右に見送り、森林限界を超えると千枚岳山頂に到着です。

千枚岳からの下りが、このコース最大の難所で、5mほどの垂直の岩壁が核心部です。鎖が設置されていないのが絶妙で、登山初心者にはかなりてこずる場所だと思われます。小ピークを右から巻き、再び急斜面を下ると最低鞍部で、ここで核心部は終了します。

ここからは比較的なだらかな登山道が丸山まで続きます。丸山からルートの様相が一変します。赤色チャート層が露出し、1メートル以上の大きな岩が積み重なった歩きにくい登山道となります。特に危険ではないがスリップに注意し、気を付けて登れば標高3141メートルの悪沢岳山頂に到着です。

悪沢岳は、北岳、間ノ岳に次ぐ南アルプス第3位の標高です。山頂からは360度の大パノラマが広がり、北側には鳳凰三山、間ノ岳、農鳥岳、南側には赤石岳と聖岳、南東方向に目を向ければ雲上に浮かぶ富士山が聳えています。

悪沢岳からの下りは、大小の岩が乱立する急坂で、浮石も多く転倒やスリップに注意しながら慎重に降ります。最低鞍部までは各所にお花畑が点在し、数多くの高山植物が色とりどりの花を咲かせます。

再び岩稜の急坂を登れば中岳避難小屋の建つ中岳山頂です。中岳から前岳まではわずか300mほどで、標高差も30m ほどしかありません。

コースタイム

  • 登山:椹島ロッジ⇒千枚小屋 5時間50分、千枚小屋⇒荒川岳(前岳)3時間20分
    合計9時間10分
  • 下山:荒川岳(前岳)⇒千枚小屋 3時間10分、 千枚小屋⇒椹島ロッジ 4時間30分
    合計7時間40分

難易度 4/10

体力  9/10 日帰り

椹島登山口へのアクセス

悪沢岳へは椹島あるいは二軒小屋が拠点になります。何れにせよ、畑薙第1ダムの少し先の沼沢ゲートより先へは一般車及びタクシーは入る事が出来ません。

マイカーの場合には夏期臨時駐車場(7月中旬から10月中旬)に止め、東海フォレストの送迎バスに乗車し、登山口へ向かいます。椹島までは1時間、二軒小屋は更に30分ほど乗車します。

夏季シーズンに限ってJR静岡駅から畑薙第1ダムへ1日1本のジャストライン直行バスが出ています。東京からは毎日アルペンのが1日1本畑薙第1ダムへ来ています。畑薙第1ダムから東海フォレストの乗り継ぎバスで登山口へ向かいます。

新東名の新静岡インターから畑薙第1ダムへは約2時間30分を要します。東海フォレストの送迎バスの始発は午前8時ですから、椹島ロッジへ前夜泊するとゆとりを持った登山計画が立てられます。詳細はアクセスのページをご覧ください。

山名について

日本百名山を選定した深田久弥は、荒川岳(荒川三山)ではなく、あくまでも悪沢岳を日本百名山の一つとしました。悪沢岳は、悪沢の原頭にあることから、甲州の一猟師がさりげなく言った悪沢岳という言葉が後に確定的になったようです。

そもそも、中岳と前岳とは極めて接近し、高低差もほとんどありません。その為、三山とするのは無理があるとの見解があります。深田久弥は、この山の呼び名は最も高く、立派な「悪沢岳」であるべきだと主張しています。

悪沢岳/荒川岳の日帰り登山は出来る?

登山口の椹島ロッジの標高は1,100mで、荒川岳(前岳)の標高は3,068mm、獲得標高は2,000mを超えます。しかも、森林限界が2,700mぐらいの高さにある為、針葉樹林帯の中の単調な登りを約6時間以上強いられます。

椹島ロッジから千枚岳を経由するルートが最短で、ピストンの往復でコースタイムが16時間50分かかります。椹島ロッヂ発の最終バスが14:00なので日帰り登山は健脚者であっても不可能と言えます。

標準的な登山者は途中の千枚小屋に宿泊し、翌朝に備えるのが賢明でしょう。

悪沢岳/荒川岳の登山口近くの温泉

南アルプス赤石温泉 「白樺荘」

赤石温泉白樺荘

素泊まりプラン¥4110~
 どのお部屋でも一人(中学生以上)¥4110 

食事2食付きプラン¥6990~
 ​宿泊料金一人(中学生以上)朝・夕食付で¥6990

日帰り入浴
4月~11月 午前10:00~午後6:00
12月~3月 午前10:00~午後5:00

中学生以上 510円
小学生   200円 小学生以下無料

悪沢岳/荒川岳の天気の特徴

晴天の赤石岳
晴天の赤石岳

悪沢岳/荒川岳は北部に比べてやや晴天率が低い

南アルプスの南部に位置する悪沢岳/荒川岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量は多くありません。

また、南アルプスの中では北部に比べてやや晴天率が低い傾向にあることが特徴に挙げられます。

夏山シーズンの期間:7/13 ~ 10/10までは登山口の椹島ロッヂまで送迎バスが運行されています。

7月の梅雨明けまでは晴天の確率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋も比較的晴天に恵まれます。しかし、10月上旬で初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

悪沢岳/荒川岳の魅力

悪沢岳(東岳)の西斜面に大きなお花畑

悪沢岳(東岳)から少し下った急斜面は高山植物が豊富で、ミヤマシオガマ、チョウノスケソウ、イワベンケイ、ハクサンイチゲなどの花が岩場に咲きます。

悪沢岳(荒川岳/荒川三山)の特徴として、お花畑が発達している事です。北アルプスによく見られる単一の花によるお花畑ではなく、一つのお花畑に10数種類以上の高山植物が花々を咲かせます。

荒川岳(前岳)の東南の斜面には、南アルプス最大の広さを誇るお花畑があり、百花繚乱のごとく色とりどりの花々で埋まります。

悪沢岳/荒川岳に咲く数々の高山植物

悪沢岳/荒川岳のラジオリヤチャート岩盤

悪沢岳/荒川岳の山頂周辺にはラジオリヤチャート岩盤が多く分布しています。雨に濡れると更に赤色が美しく発色し、「赤石」の名前の由来になりました。

悪沢岳/荒川岳からの大パノラマ

悪沢岳は、北岳、間ノ岳に次ぐ南アルプス第3位の標高です。山頂からは360度の大パノラマが広がり、北側には鳳凰三山、間ノ岳、農鳥岳、南側には赤石岳と聖岳、南東方向に目を向ければ雲上に浮かぶ富士山が聳えています。

悪沢岳(中岳)南東斜面のカール地形

悪沢岳(中岳)南東斜面のカール地形
悪沢岳(中岳)南東斜面のカール地形

悪沢岳(東岳)の東斜面と中岳南東斜面には、約2万年前に存在した氷河によって浸食されたカール地形があり、その底部にはモレーンも認められます。

各種情報

悪沢岳/荒川岳登山ツアー

  • 悪沢岳/荒川岳|登山・トレッキングツアー

観光協会

登山届提出

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

悪沢岳/荒川岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-10.2-16.4-21.4
2月-8.6-14.5-20.7
3月-3.9-10.4-17.0
4月2.6-4.4-11.6
5月7.20.8-5.1
6月10.14.5-0.1
7月13.48.04.4
8月14.88.84.5
9月10.54.80.5
10月4.8-1.4-6.9
11月-1.1-7.7-13.7
12月-6.9-13.8-18.4

悪沢岳/荒川岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラステント
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 千枚岳から悪沢岳/荒川岳へ至る稜線は広いので濃霧時には登山地図を忘れると道迷いの原因に! 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。
セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 千枚岳と悪沢岳/荒川岳間の稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。標高2,700m辺りで森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 悪沢岳/荒川岳は3,141メートルあり、 稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
千枚小屋に水場があります。また、中岳避難小屋では有料で水の確保は可能です。
登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 夜になると電気を落としてしまう山小屋もあります。そんな時トイレに行くのが不自由です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 縦走登山ではコースタイムが長いので多めに持っていくと良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。
時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。千枚岳から荒川岳、赤石岳と周回するルートでは行程が長く体力を必要とするところが多いので、トクホンのような筋肉痛に効く貼り薬。
ティッシュペーパー必須 登山中いきなりしたくなってしまった場合など、止血用などの万が一の時のために必帯です。ポケットティッシュを水で濡らし耳栓として使う場合にも有効です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
悪沢岳/荒川岳山頂では、7~8月でも最低気温が4度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い 革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
耳栓あったら良い 千枚岳から悪沢岳/荒川岳へ登るルートは山中の山小屋で最低でも一泊するのが一般的です。山小屋では大部屋が基本です。就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。
カメラあったら良い 高山植物が豊富で大パノラマが楽しめる山旅なので、思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして8~9個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 荒川岳(中岳)から荒川岳(前岳)ピストンではザックを置いて、サブザックで身軽な状態で登ることが出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。
シュラフカバーあったら良い 遭難時や混雑している山小屋(一つの布団に2人)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。