愛鷹山・越前岳とは

愛鷹山(あしたかやま)は富士山の南に位置し、(黒岳、越前岳、呼子岳、鋸岳、位牌岳、前岳、袴腰岳、大岳、愛鷹山) などのピークが南北に連なるため愛鷹連峰と呼ばれることもあります。

愛鷹山(越前岳)は、静岡県の富士山南麓にある標高1,504mの山です。富士山の展望所として大変人気が高く、静岡県という温暖な気候のため冬季でも積雪量は少なく、夏場の暑い時期を除いて多くの登山者に親しまれています。

静岡県裾野市、沼津市、富士市、長泉町との境に峰を連ね、足柄山(神奈川県)、足和田山(山梨県)と共に「富士三脚」と呼ばれ、古くは「足高山」という記載も見られます。山容は八ケ岳を小ぶりにしたよに主稜線に添って峰々が連なり、東西に幾筋もの支尾根が派生しています。

周辺から眺める愛鷹山は穏やかな山容に見えますが、富士山よりも古い火山で、爆裂火口跡もあり、頂稜部では崩壊が進んでいる場所もあります。

特に愛鷹連峰のほぼ中心に位置する鋸岳と呼子岳間の侵食が著しく、落石も頻発する難ルートです。 その名に示すように稜線は鋸歯状になり、呼子岳・蓬莱山・無名峰・一の歯・二の歯・三の歯・四の歯・五の歯と連なり、位牌岳、袴腰岳、愛鷹山に達しています。 そのため、登山者も少なく、深い笹に覆われた場所もあり、愛鷹連峰縦走は熟練者のみの領域と言えるでしょう。

おすすめ登山ルート

おすすめ登山ルートとしてマイカーを十里木高原の駐車場に停め、バスで愛鷹登山口に移動します。

割石峠を経由するルートで登り、十里木高原へ下山するコースを計画すると越前岳を満喫できるはずです。

花の見ごろは5月~9月。アシタカツツジ、ヤマツツジ、トウゴクミツバツツジ、ヤマボウシ、トリカブト、アキノキリンソウなどが楽しめます。

尚、愛鷹の名を冠した愛鷹山(標高1188m)は、越前岳より300m以上低いが、1等三角点が設置されています。

古くは山宮岳と呼ばれ、山頂には愛鷹明神が祀られています。

愛鷹山・越前岳の地図

愛鷹山・越前岳のアクセス

愛鷹登山口

十里木高原

※ 十里木高原まではバスが行っていないので、十里木でバスを下車し、徒歩10分

  • 富士駅~吉原中央駅~今宮~こどもの国~サファリパーク~イエティ線  53分 富士急静岡バス

※ 土日祝日 富士山登山シーズンは毎日

越前岳の登山コース概要

愛鷹登山口ルート要約

愛鷹登山口から山神神社、富士見峠・黒岳を経由して越前岳へ登るルートは、概ね樹林帯の中を登る単調なコースで、富士見台から山頂までの約20分の 区間のみが、狭い稜線上の登りで、左右の展望が効き楽しい所です。

愛鷹登山口から割石峠を経由して越前岳へ登るルートは大沢に沿って遡上します。 第二ケルンを過ぎたあたりから、次第に谷は狭くなり、U字形となった左右の斜面は脆く頻繁に落石が起こっています。
そのため、上部からの落石に十分注意しながら登る必要があります。 割石峠まで急坂を登り「鋸岳方面」と記された指導標を左に見送り、狭い稜線を登り上げると呼子岳です。

呼子岳から越前岳までの約1時間の区間がこのルートのハイライトで、やせ尾根の通過は展望が効き、特に西側に広がる駿河湾の眺望が続きます。 山頂までの20分ほどの急傾斜の斜面を登り上げると、越前岳山頂に飛び出します。

愛鷹登山口から黒岳経由ルート

真教寺尾根ルート核心部

国道469号線のバス停がある愛鷹山登山口から徒歩で20分ほどの所にある登山者用駐車場前の山神神社の鳥居をくぐって登山開始です。

バスでアクセスする場合、御殿場駅から十里木行きバスに乗り、国道469号線沿いの愛鷹登山口で下車します。三島駅からもぐりんぱ・イエティ行きバスが出ていますが、始発が9時10分と遅く、一日2本しかないので、あまりお薦め出来ません。

しばらく樹林帯を登ると愛鷹山荘に到着します。無人の山荘は無料で、先着順で7名まで泊まることが出来きます。

愛鷹山荘から10分ほどで富士見峠に着き、ここから黒岳を往復します。 黒岳展望広場で富士山の眺望を楽しみ、少し進んだ所が黒岳山頂です。 山頂は平坦で休憩するには絶好のポイントですが、灌木の阻まれて360度の展望はありません。

東側は開け、御殿場市の向こうに箱根山の一つ金時山が、その鋭角の姿を見せています。もちろん北側も開けて富士山の展望はあります。 又、黒岳周辺は樹齢400年以上の杉の巨木が自生していることでも知られています。

富士見峠に戻り、越前岳に向かいます。しばらく単調な樹林帯の登りが続き、鋸岳展望台で一休みです。 鋸岳は文字通り鋸の歯の様な山容で、呼子岳と位牌岳の間の険しい稜線を作っています。 近年、崩壊が進み愛鷹山の縦走を困難なものにしています。

鋸岳展望台から単調な樹林帯を進むと、写真家の岡田紅陽による富士山の撮影地となった富士見台に到着します。

新潟県出身の海軍嘱託して活躍した岡田紅陽(1890年から1972年)は、第2次世界大戦前後には山岳写真家として各地の山を撮影しました。中でも富士山を中心に撮影したことから「富士の紅陽」と異名で呼ばれるほど名声をほしいままにしました。彼は越前岳へも足を運び、富士見台で撮影した富士山の図柄が、昭和13年に発行された50銭紙幣のモデルに採用されました。同所には50銭紙幣をプリントした案内板が設置されています。

富士見台と越前岳山頂間は狭い稜線の登りとなり、登山道の左右からは富士山と駿河湾が木々の間から見え隠れする様になると、越前岳山頂はもう少しです。

コースタイム

  • 登山:愛鷹登山口駐車場→黒岳→越前岳 3時間10分
  • 下山:越前岳→黒岳→愛鷹登山口駐車場 2時間30分

難易度 1/10

体力  2/10

愛鷹登山口から割石峠経由ルート

大沢の源頭部
大沢の源頭部

愛鷹山登山口から出発します。 マイカーの場合には国道469号線のバス停から1.2kmほど林道を入った所に山神社駐車場があり、簡易トイレも完備しています。

駐車場から林道を進み、杉林を抜けた所で大沢を横切り、さらに20分ほど林道歩きが続きます。 登山道に入り直ぐに前岳、位牌岳分岐を左に見送り、大沢橋を渡って間もなくすると、登山道は大沢に転がる大小様々な岩の中を何度も渡り返すことになります。

第一ケルン、大杉、第二ケルンを通過し、次第に沢の幅が狭くなり、U字形になってくると左側の斜面からの自然落石が頻発する所の登りとなります。
ここでは崖の上からの落石に注意しながら登る必要があります。

呼子岳と蓬莱山との鞍部にある割石峠は鋸岳、位牌岳方面への分岐点でもあり、近年、鋸岳の浸食が進み、蓬莱山・鋸岳・位牌岳間は登山上級者の領域になっています。

呼子岳からはやせ尾根を進むルートで、正面の越前岳とその左奥に富士山を見ながら、適度なアップダウンを繰り返し、特に西側(駿河湾)の展望が良く、このコース上で最も楽しめる所です。
越前岳山頂直下になると傾斜が一気に増して、稜線に沿って急登すると山頂に飛び出します。

※山神社の脇に松永塚の案内板が建っています。それによると、「昭和3年10月17日、静岡商業生の松永敏男君と学友の風間君2人が位牌岳の原生林の中で道に迷い、松永敏男君は死亡するという遭難事件が起こりました。それを機に、県立御殿場実業学校通学中の須山学生団、勝又清士・勝呂志三・桜井金次郎・宮崎文平・杉山文雄・土屋秀男の六氏を中心として登山道の整備を行った」と記されています。

コースタイム

  • 登山:愛鷹登山口駐車場→越前岳 3時間20分
  • 下山:越前岳→愛鷹登山口駐車場 2時間00分

難易度 2/10

体力  1/10

十里木高原ルート要約

十里木高原からのルートは最短で登ることができるコースですが、変化に乏しく単調な登りが続きます。しかし、下山時は、富士山が正面に大きく見え、広い富士裾野を見下ろしながらの山行は 爽快感を覚えるはずです。

十里木高原ルート

鉄製の橋を渡る

十里木高原を登山口とするルートは、複数ある登山道に中で、最短で山頂に立てるため、最も多くの登山者で賑わうコースです。
しかし、山頂までわずか2時間強の行程のため、少し物足りなさが残るかもしれませんが、登山初心者にはうってつけです。

登山口には40台ほど停められる駐車場が国道469号線の前にあり、立派なトイレも完備しています。また、十里木高原、十里木には富士駅、御殿場駅、三島駅の各駅とを結ぶバスが運行されています。ただし便数が少ないので、マイカーでのアクセスがすぐれています。

登山を開始して三分の1ほどの区間は、草原をハイキングするといった感じで、常に展望が開けていて、振り返れば真正面に富士山の全景が飛び込んできます。 宝永山の左手にパックリとえぐられた宝永火口が印象的です。

樹林帯の中に入ると立派なミズナラやブナも散見され、次第に傾斜が増すとともに単調な登りとなります。 山頂に近づくと5月中旬から6月上旬、愛鷹山の固有種、アシタカツツジが薄紫色の綺麗な花を咲かせます。アシタカツツジは、牧野富太郎によって偶然発見されたので、トウゴクミツバツツジとミツバツツジの混種と考えられ、裾野市の天然記念物に指定され、絶滅危惧種にも登録されています。

又、十里木別荘地内にも現生群落があり、ハイキングで訪れても、鮮やかに染まった山腹を楽しむことが出来ます。

勢子辻(せこつじ)の分岐を右に見送ると、越前岳山頂はもうすぐです。越前岳山頂の西側の斜面にはトウゴクミツバツツジとアシタカツツジの大きな株が競うように自生しています。

山頂に立つと太平洋が眼下に一望でき、反対方向には樹木の上に富士山が半分だけ姿を現しています。
また、覗き込むと鋸岳の急峻な岩稜が、位牌岳に連なっているのが確認できます。

コースタイム

  • 登山:十里木高原→越前岳 2時間30分
  • 下山:越前岳→十里木高原 1時間40分

難易度 1/10

体力  1/10

愛鷹山/越前岳の日帰り登山は出来る?

最短の十里木高原から越前岳ピストンのコースタイムは4時間10分です。愛鷹登山口から黒岳経由で越前岳に登り、割石峠を周回するルートのコースタイムは5時間10分です。従って日帰り登山は初心者でも十分可能です。

愛鷹山/越前岳の登山口近くの温泉

ヘルシーパーク裾野

ヘルシーパーク裾野 

日帰り温浴施設「ヘルシーパーク裾野」は、自家源泉100%の温泉の泉質がナトリウム、カルシウム、塩化物を豊富に含んでいます。

利用料
【3時間】
大人:700円 子供:350円

営業時間 
営業時間:10時~21時(最終受付20時30分)

休館日 
なし

電話:055-965-1126

登山口の愛鷹登山口まで6.5km、車で12分です。

愛鷹山/越前岳の天気の特徴

十里木高原と富士山
十里木高原と富士山

愛鷹山/越前岳は晴天の確率は比較的高い

富士山の南部に位置する愛鷹山/越前岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量はさほど多くありません。

6月から7月の梅雨明けまでは晴天率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋や春も比較的晴天に恵まれます。しかし、11月下旬で初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

各種情報

富士山登山ツアー

観光協会・観光案内所

登山届提出

静岡県静岡県警察
郵送、電子メール、ファックスなので提出可能です。

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

愛鷹山/越前岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月3.7-1.5-6.1
2月4.1-0.9-5.6
3月7.22.3-2.4
4月12.57.32.6
5月16.411.57.4
6月19.114.911.6
7月22.618.415.6
8月24.419.716.5
9月21.116.713.1
10月16.011.16.9
11月11.15901.2
12月6.41.0-3.8

愛鷹山/越前岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラスツェルト
1月××
2月××
3月×××
4月×××××
5月×××××
6月×××××
7月××××
8月××××
9月×××××
10月×××××
11月×××××
12月×××
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!愛鷹山/越前岳のルートは多くの箇所に分岐があります。 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、防寒着としても使えます。
セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぐ場所ががあります。概ね森林限界の下にあるため樹林帯の中にコースはあります。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製をお奨めします。
日焼け止め必須 愛鷹山/越前岳は標高1,504mで森林限界の下なので、あまり強い紫外線ではありませんが、所々で直射日光が当たるところがあります。日焼け止めは必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
愛鷹山/越前岳のルートに水場はありません。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 アクシデントにより暗くなってからの山行を余儀なくされた時に必要です。
行動食必須 コースタイムは短いので簡単なもので良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。
ティッシュペーパー必須 止血用などの万が一の時のために必帯です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
赤岳山頂では、7~8月でも最低気温が15度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い 革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
耳栓不要 日帰り登山です。
カメラあったら良い 富士山の大パノラマなど山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして3~4個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザック不要 
シュラフカバー不要 日帰り登山です。

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