空木岳とは

空木岳は中央アルプス(木曽山脈)のほぼ中央に位置する秀峰で、日本百名山にも選定されている標高2,864 mの山です。山体は花崗岩に覆われ白い山肌と好展望が魅力です。

駒ヶ根ロープウェイを使い一気に標高2,650mの千畳敷まで上げれば、容易に中央アルプスの主稜線を縦走することが可能です。

駒ヶ根ロープウェイは多くの観光客に親しまれ、シーズン中は大変混雑するため、3時間待ちもあり得ます。
その為、前日に駒ヶ根高原に宿泊し、朝一番のロープウェイに乗ることをお勧めします。
また、前日にホテル千畳敷、乗越浄土に建つ宝剣山荘、天狗荘などに宿泊すると余裕をもって行動できます。

宝剣岳から檜尾岳~熊沢岳~東川岳を縦走すれば木曽殿山荘までが一日の行程となります。 健脚者はさらに進んで空木岳の山頂を目指し、山頂直下に建つ駒峰ヒュッテに泊まる事も可能です。

空木岳の地図

空木岳の山小屋

中央アルプスの山小屋
木曽殿山荘
木曽殿山荘
中央アルプスの山小屋
駒峰ヒュッテ
駒峰ヒュッテ

空木岳のアクセス

中央アルプス登山口-アクセスと駐車場
中央アルプス駒ヶ根ロープーウェイのアクセスと駐車場
中央アルプス駒ヶ根ロープーウェイのアクセスと駐車場

空木岳登山コース概要

空木岳縦走(千畳敷~檜尾岳~熊沢岳)ルート

第一ピークの先から木曽駒ヶ岳へ続く稜線
第一ピークの先から木曽駒ヶ岳へ続く稜線

空木岳山頂は花崗岩で覆われ、第一ピークから第二ピークの通過が核心部です。
要所には鎖や金属製のステップが設置され、難易度は高くなく、登山初心者でも問題なく通過できるはずです。

菅ノ台バスセンターには広い駐車場があり1日(24時間)800円です。 菅ノ台バスセンターから30分ほど路線バスに乗るとしらび平の駒ヶ根ロープーウェイ乗り場です。

千畳敷カールから宝剣岳と空木岳への分岐点である極楽平に向けて登ります。極楽平から空木岳に向け平坦な稜線を進みます。 島田娘からは檜尾岳・熊沢岳と続く稜線の先に空木岳が見えています。

平坦なハイマツ帯を進み、濁沢大峰に着くと正面にやせ尾根の狭い稜線が見えてきます。 やせ尾根手前の簡単な鎖場を下り、鞍部に立ちます。 やせ尾根の幅は十分あり、通過は難しくありません。

やせ尾根を通過し、檜尾岳鞍部へ向け下ります。檜尾岳鞍部から緩いハイマツ登りが檜尾岳山頂まで続きます。檜尾岳から振り返ると、稜線の先に宝剣岳の山頂が頭をのぞかせています。 また、檜尾岳から伸びる檜尾尾根には檜尾避難小屋が見えています。

檜尾岳から大滝山を経由し熊沢岳に向かいます。 熊沢岳手前の岩場にはやや難しい登りがあります。斜めに傾斜した岩をトラバースした後、狭い岩の間を登り、その上の鉄製のステップが打ち込まれ岩をよじ登ると、熊沢岳はあと少しです。

平坦な熊沢岳山頂から東川岳まではなだらかな稜線歩きが続きます。東川岳山頂から空木岳との鞍部に向け下ります。 鞍部には縦走路の食事提供がある唯一の山小屋である木曽殿山荘が建っています。

木曽殿山荘から空木岳を見上げると正面に見えるのは第一ピークで、山頂はその先です。 木曽殿山荘から空木岳第一ピークへ向け傾斜のきつい登りです。

第一ピークから稜線を進み、第二ピークの右を巻いて登ります。 ここが核心部で、鎖や、登りにくい岩にはステップが打ち込まれています。第二ピークを左から巻き終えると、空木岳山頂はすぐそこです。

山頂からは360度の展望が開け、南アルプスの全景と塩見岳の背後には、富士山も姿を現しています。北アルプスが遠くに見え、その左手に御嶽山、白山と続き、八ケ岳や浅間山までよく見えています。

コースタイム

  • 中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ千畳敷⇒空木岳 7時間20分
  • 空木岳⇒中央アルプス駒ケ岳ロープウェイ千畳敷 7時間30分

難易度 3/10

体力  2/10 1泊

池山尾根(迷い尾根)から空木岳ルート

駒峰ヒュッテの先に空木岳
駒峰ヒュッテの先に空木岳

林道古城線(池山・空木岳登山道)は当面の間、途中までしか通行できません。古城公園 あかつきの塔の先にあるゲートが通年閉まっています。従って、駒ヶ根高原スキー場の駐車場(無料)から出発します。

標高差が大きい為、ガスが上がる前に山頂に着くには途中の避難小屋の池山小屋に宿泊するのも一法です。

登山道を登ると旧林道終点の手前に出ます。旧林道終点の広場を通り、少し入ると登山届のポストがあります。

広い遊歩道を登り、タカウチ場分岐を左に進み、約40分で池山小屋近くの水場です。水量は豊富で、水場近くにベンチが設置された休憩の最適地となっています。

水場から100mほど入った所に池山小屋があります。 池山小屋は避難小屋の為、寝具はありません。

水場上部で分岐しますが、左右どちらのルートを使っても歩行時間は約50分と同じで、上部で合流します。

マセナギと呼ばれる地点を通過し、針葉樹林帯を進みます。そして大地獄と呼ばれるやせ尾根に入ると、それまでの登山道とは一変します。急峻で狭い尾根道の為、転落、滑落事故が多発している様です。
数か所に階段が設置され、登山道沿いには安全確保用ワイヤーも取り付けられています。

橋を渡り右側から巻き終わると核心部です。崖側に滑落しないように鎖が付けられた岩場をやり過ごし、階段を上った所が、このコースで最も長い(約7m)、約50度の鎖場です。
高度感はあまりなく、スタンスは十分あるのでさほどの難しさはありません。

大地獄を過ぎると小地獄と呼ばれるトラバースです。南側をトラバースする箇所には手すりが付けられ危険な所ではありません。

小地獄を過ぎた所が迷い尾根です。「迷い尾根」と名前にありますが、ほぼ直角に曲がる通過点です。

針葉樹林帯の比較的なだらかな登りが1時間30分ほど続くと、空木平避難小屋と尾根道への分岐です。

尾根道を少し進むと空木岳山頂が見えてきます。駒石と呼ばれる大岩の脇を通り、駒峰ヒュッテまで登ると山頂はもう少しです。

コースタイム

  • 登山:駒ヶ根高原スキー場の駐車場⇒空木岳 7時間20分
  • 下山:空木岳⇒駒ヶ根高原スキー場の駐車場 5時間00分

難易度  3/10

体力  6/10 日帰り

空木岳の日帰り登山は出来る?

空木岳へ最短で登るルートは池山尾根(迷い尾根)ルートです。以前は林道古城線が通行でき、林道終点の駐車場に停めることが出来たので往復のコースタイムは10時間20分でした。

しかし、 2023年時点では林道崩落のため駒ヶ根高原スキー場の駐車場が登山口となります。 そのため往復のコースタイムは約2時間増えます。 つまり12時間20分かかることになります。

また、獲得標高差は2,200mほどになるため健脚者なら日帰り登山も可能ですが、 一般的な登山者なら駒峰ヒュッテ に一泊する日程を組むのが賢明でしょう。

空木岳の登山口近くの温泉

露天こぶしの湯

露天こぶしの湯

日帰り入浴施設の「露天 こぶしの湯」は、早太郎温泉の「アルカリ性単純泉」です。

内湯・露天風呂(岩風呂/檜風呂/サウナ/水風呂)

利用料 大人 750円・小人(小学生) 500円
営業時間 11:00~22:00 ※入館締切21:00
休館日 木曜日 ※祝祭日は営業

シャトルバスの発着場になっている菅の台バスセンターから3.1 km、車で6分です。

空木岳の天気の特徴

伊那市側からガスが入りやすい
伊那市側からガスが入りやすい

夏の空木岳はややガスが入りやすい

中央アルプスの中央部に位置する空木岳の山域は、日本海側特有の冬型気候の影響を受けにくいため積雪量はさほど多くありません。

通年営業の中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイが運行されています。千畳敷から縦走も可能です。夏山登山シーズンはややガスが入りやすい特徴があります。

6月から7月の梅雨明けまでは晴天の確率は低いですが、梅雨開けと共に晴天がしばらく続きます。また、秋も比較的晴天に恵まれます。しかし、10月上旬で初冠雪を見る年もあり、雨天だけではなく、強風などにも天候には十分な注意が必要です。

山の天気予報は難しい
山の天気予報は難しい

お薦めの天気予報

テレビで流れる天気予報やネットで得られる無料の天気予報は、一般的に平地を対象としたものです。 そのため、晴れの天気予報が出ていても、山ではガスってしまうことはよくあることです。 

そこで、おすすめなのがtenki.jpの有料バージョン(+more)です。これは、月間100円と安いですが、高層天気の予報のため精度が高いです。また、山の天気予報(月額300円)を併用すると更に精度が高まります。

空木岳に咲く数々の高山植物

中央アルプス檜尾小屋が営業を開始

韓国登山ツアーで4人が遭難

2013年7月29日、韓国の旅行会社による空木岳縦走登山ツアーに参加した登山者の内、4人が死亡するという遭難事故が起こりました。同パーティーは池山尾根(迷い尾根)を登り、空木岳に登頂し、木曽殿山荘で一泊。次の日に宝剣岳を目指すコースを計画したようです。

木曽殿山荘の出発の日、天候は悪化。小屋の主人から出発を控えるように勧められたそうです。ツアー登山の最大の弱点、飛行機の時間に間に合わないという理由でパーティーは出発したようです。ほとんどの登山者がポンチョなどの簡易雨具しか持たず、日本では到底考えられない軽装だったようです。

韓国最高峰は済州島の漢拏山(1,950m)で、日本のように高い山がないためなのか、登山に対する認識が日本とはだいぶ異なるようです。

檜尾岳から檜尾尾根へ10分ほど入った所に檜尾避難小屋がありますが、濃霧のため分らなかったようです。檜尾岳から島田娘にかけての稜線で低体温症により亡くなっています。

同ルートはエスケープルートが乏しい上、山小屋がないので3,000mクラスの登山経験のない韓国人にとってかなり無謀だったと言わざるを得ません。

韓国メディアの論調は「入山規制が行われず、誰も止めてくれなかった結果遭難した」「日本で通じる携帯電話を貸し出すべきだ」などの責任転嫁とも取れる発言が目に付きます。

このようなことを踏まえて檜尾避難小屋が有人の檜尾小屋として営業が始まりました。

中央アルプス檜尾小屋 電話:090-7957-7650(受付時間 9:00~18:00)

木曽義仲伝説

木曽殿越に建つ木曽殿山荘

現在、木曽殿山荘が建っている場所は木曽殿越と呼ばれる鞍部です。平安時代に木曽義仲がこの峠を越えたことから、この名が残ったという伝説があります。左手奥は御嶽山で、右手奥の尖ったピークが宝剣岳です。

各種情報

空木岳登山ツアー

  • 空木岳|登山・トレッキングツアー

観光協会

登山届提出

長野県長野県警察本部地域部山岳安全対策課 電話:026-233-0110
長野県のホームページ

登山地図のスマホアプリ

  • 山と高原地図のスマホアプリ
    昭文社から販売されています。山と高原地図ホーダイ - 登山地図ナビアプリ 定額(500円/月 or 4800円/年)で61エリアの「山と高原地図」が使い放題。山と高原地図[地図単品購入版]地図1エリア 650円。

空木岳山頂周辺の気温

最高気温平均気温最低気温
1月-7.7-13.4-19.1
2月-6.2-12.3-18.4
3月-0.9-8.1-15.2
4月4.8-2.2-9.2
5月9.53.1-2.8
6月12.56.92.2
7月15.710.46.2
8月17.211.17.0
9月12.97.22.7
10月7.10.8-3.6
11月1.0-4.6-10.6
12月-4.7-9.7-16.0

空木岳へ登るための装備と服装

軽アイゼン12本歯アイゼンピッケルサングラステント
1月×
2月×
3月×
4月×
5月×
6月×××
7月××××
8月××××
9月××××
10月××××
11月××××
12月
必須:◎ あった方が良い:○ あったら良い:△ 必要ない:× 

服装や装備品のチェックリスト

登山地図必須 登山地図を忘れると道迷いの原因に!空木岳の縦走ルートは濃霧時には登山道を踏み外してルート外に入りやすいため 登山地図を持って行かないのは命取りと言えます。
レインウェア必須 山の天候は急変します。天気予報で晴が出ていても
レインウェアは必須です。また、標高2,800mを超える稜線が続くので防寒着としても使えます。セパレートタイプの通気性と防水性を兼ね備えたゴアテックスがベストです。
帽子必須 稜線に上がると直射日光が強烈に降り注ぎます。千畳敷カールはすでに森林限界を超えます。日よけ用のつばが広く軽いものをお奨めします。寒さが厳しいときは、耳を覆うニット製、冬山ではフルフェイスタイプをお奨めします。
日焼け止め必須 空木岳は標高2,864 mのため、 稜線では日光を遮る木々が一切ありません。森林限界を超えると紫外線が強いので必帯です。
飲料水必須 天気の良い日は少し多めに持って行きましょう。
池山小屋や木曽殿山荘の水場は太いですが、中央アルプス檜尾小屋の水場は細いです。駒峰ヒュッテは有料です。登山行程に合わせて水の量を調整するとよいでしょう。
ヘッドランプ必須 夜になると電気を落としてしまう山小屋もあります。そんな時トイレに行くのが不自由です。また、暗い内から山頂まで登り、御来光を拝むためにも必要です。
行動食必須 登山のコースタイムが長いので多めに持っていくと良いでしょう。パン・ナッツ類・野菜ジュース、飲むヨーグルトなど立ち休憩で食べられるものがお薦めです。
パックカバー必須 ザックが濡れないようにするためのザックカバーは雨に日には絶対必要です。ザックカバーも雨衣と同様に防水性が衰えてきます。時折、防水スプレーをするなどのメンテナンスが必要です。
救急薬品必須 切り傷、擦り傷にカットバン、絆創膏を持っていくと良いでしょう。虫刺され薬品も。空木岳の縦走では足の痛みが起こることもあるので、湿布薬などがあると助かります。
ティッシュペーパー必須 止血用などの万が一の時のために必帯です。ポケットティッシュを水で濡らし丸めて耳栓として使う場合にも有効です。
防寒着必須 薄手のフリース,セーター、軽いダウンジャケット。
空木岳山頂では、7~8月でも最低気温が6度近くまで下がることがあります。
軽くて保温性の高いものを選びます。ゴアテックスのレインウェアを
その上に着ると更に保温性が高まります。
手袋あったら良い 革製の手袋がベストですが、軍手でもOKです。
耳栓あったら良い 空木岳の山小屋では大部屋が基本です。就寝時に いびきをかく人が必ずいます。耳栓の効果は絶大です。
カメラあったら良い 大パノラマの山旅の思い出にぜひどうぞ。ウエストポーチに収納出来る大きさであることが望ましいです。
ビニール袋あったら良い ごみ入れとして、使用前の下着入れ、使用後の下着入れとして5~7個あると便利です。
保険証(コピー)あったら良い 事故や遭難時に必要です。
サブザックあったら良い 駒峰ヒュッテにザックを置いて、サブザックで身軽な状態で山頂ピストンが出来ます。水、カッパなど必要最低限が入る軽いコンパクトなものを使用すること。
シュラフカバーあったら良い 遭難時や混雑している山小屋(一つの布団に2人)で役に立ちます。毛布2枚を床に敷きゴアテックス製のシュラフカバーに入ります。