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石尊山-浅間山の寄生火山登山コース概要
標高1667.4mの石尊山は、浅間山の南西麓に出来た寄生火山で、その山容は決して目だった存在とは言えません。しかし、そのルート上には血の色を連想させる赤褐色の水が流れ落ちる「血の滝」、浅間山の噴火によって流れ出た溶岩が作り出した洞窟「座禅窟」、鉄分で赤く染まった「おはぐろ池」など、自然の名勝が多数存在します。これらの場所は江戸時代に隆盛を極めた修験自性院が行場とした霊域であり、現代の我々にとってもパワースポットと呼んでも相応しい場所と言えます。
コースタイムはルート上から外れている座禅窟(上の座禅窟、下の座禅窟)を尋ねても、往復で4時間30分あればOKで、ハイキングコースといえるようなルートです。
ルート上には鎖場などの難所はなく、登山初心者でも容易に登れます。
山頂近くの石尊平まで登ると、浅間山の山頂がくっきりと姿を現します。
石尊山の山頂まで登ると東前掛山の南面に出来た阿陀ヶ城岩の大岩壁が見事に仰がれます。
南側に目を転じると眼下に軽井沢の街が広がり、さらにその遠方に八ケ岳連峰、南アルプス、秩父山系の山々などが視界に入ります。
登山口の追分宿は、江戸時代に発展した中山道の宿場町です。「追分節」は宿場の遊女たちの情を歌っているものとして知られていますが、その遊女・飯盛女たちの数は最盛期で270名もいたと言われ、活気に満ちた宿場町であったことが伺われます。そして、現在でもその面影が残る街並みが続いています。
石尊山と石尊信仰
【浅間神社】
追分宿にある浅間神社(あさまじんじゃ)は、かつて浅間山・石尊山の遥拝所になっていた所で、修験者・信徒の修行の道が石尊山に伸びていました。祭神は大山祗神・磐長姫神で、本殿は流造となって、海老虹梁・宝珠の彫りが見事で木鼻(象鼻)の出っ張りが室町時代の様式を残しています。軽井沢町指定文化財に指定されています。
神社右手奥の建物は軽井沢町追分宿郷土館で、浅間山や石尊山の修験道に関わる自性院などの資料が展示されています。
自性院と石尊信仰
江戸時代後半の寛政(1789年-1801年)から文化・文政期(1804年 - 1830年)にかけて石尊信仰が流行します。その中心的存在となったのが軽井沢町追分宿の修験社寺・自性院です。石尊山山周辺の気温
山頂気温 | 1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高気温(℃) | -2.0 |
-1.2 |
2.9 |
9.9 |
14.6 |
17.1 |
20.7 |
21.9 |
17.2 |
11.7 |
6.7 |
1.2 |
平均気温(℃) | -7.5 |
-7.1 |
-3.5 |
2.8 |
7.8 |
11.6 |
15.5 |
16.5 |
12.3 |
6.0 |
0.4 |
-4.7 |
最低気温(℃) | -12.7 |
-12.5 |
-9.1 |
-3.7 |
1.8 |
7.3 |
11.9 |
12.7 |
8.8 |
1.5 |
-4.7 |
-9.7 |
石尊山へ登るための装備と服装
装備・服装 | 1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
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ツェルト |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
× |
× |
× |
△ |
△ |
△ | ストック |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
スパッツ |
△ |
△ |
△ |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
△ |
手袋 |
◎ |
◎ |
◎ |
○ |
△ |
× |
× |
× |
× |
△ |
◎ |
◎ |
サングラス |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
軽アイゼン |
△ |
△ |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
12本歯アイゼン |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
ピッケル |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
画像一覧
赤滝。濁川の水が赤褐色になっているのは、この上流に源泉である湧水があり、水は鉄分などの鉱物と二酸化炭素を含み、勢いよく湧き出します。湧き出した時の水は無色透明ですが、空気に触れると鉄は酸化されて水酸化鉄に変化するため水が濁ってきます。
「赤滝」横の溶岩の岩場に修行窟が作られています。洞窟内に不動明王二体が安置されています。右手側の「不動明王(火焔後背)」は、高さ1m40cm、追分宿-若林久左衛門-文政六歳発未4月吉日の銘。左手側の「不動明王(火焔後背)」は、高さ63cm。ここは浅間山自性院の修験道遺跡として残る遺構の一つです。
赤滝分岐に戻り、少し登ると登山道沿いからも赤滝を見下ろせます。赤滝は「血の滝」とも呼ばれ、自性院による石尊信仰の霊域となった場所です。当時、滝壺付近に橋が架かり、修行窟(座禅窟)と血の池へ向かう信仰の道が開かれていたと言います。現在は写真に見る様に滝の落ち口の少し上に橋が架けられています。
赤滝(血の滝)から数分で清万林道から続く営林署林道に出ます。広い平坦地の脇には大きな看板が掲げられ、ベンチも設置されています。ここから営林署林道を左手方向に進むと約10分ほどで座禅窟(修行窟)です。座禅窟(修行窟)の往復は30分から40分見れば大丈夫です。
林道から2分ほど登ると南西に開口し広さ約20平方メートルの「下の修行窟(座禅窟下)」があります。現在、盗掘を防ぐための鉄扉があり、洞窟内に入れませんが、覗き込むと石仏が多数安置されているのが見えます。また、右手側の小さな洞窟にも石造物が置かれています。
下の修行窟(座禅窟下)内部。棚状の岩に「聖観音・如意輪観音・千手観音」が23体置かれています。寛政12年(1803年)の銘が一体あり、その他は建立年月は不明です。これらの石造物は昭和20年以降に洞窟内に入れられたようです。
右手側の小さい洞窟に置かれた板状の石造物には「座禅霊神」と刻まれています。まさにこの座禅窟は血の滝と共に軽井沢追分宿にあった浅間山別当を称した修験自性院の行場をなし、修験者達は交代で座禅修行をしました。
下の修行窟(座禅窟下)のすぐ左手に置かれた宮形の大きな石祠は、文化9年の銘がある石尊権現を祀った石尊社です。石尊山の石尊信仰は、神奈川県伊勢原市の丹沢大山の大山石尊権現の流れを汲むものです。
下の修行窟(座禅窟下)からさらに3分ほど登った所に大岩があり、その間に洞窟らしきものが見えてきます。土留めが部分的に壊れ、洞窟下にはロープが掛られるなどやや足元が不安定な所です。辺りには結界が張られ、人間を寄せ付けない不思議なパワーを感じます。大岩の上部に大天狗・小天狗の銘が刻印された石祠が祀られているようです。
上の修行窟(座禅窟下)内部。南東方面に開口した洞窟内の広さは約25平方メートルあり、南面に1ヶ所、窓が開けられ床面には川砂が敷かれています。西の壁際に元文2年(1737年)銘の「千手観音(起舟後背)」が据えられています。この事で、石尊信仰が流行した寛政〜化政期以前に自性院が石尊山を信仰の山として利用していた事が分ります。
営林署林道を分岐まで戻り、血の池を目指します。血の池の少し下に設置された防災広報施設近くで石尊山へ登る時計回りのルートが左手方向に分岐する様ですが、それを示す道標は無く、分岐点は不明瞭です。昭文社の地図にはこの分岐が記載されていますから多くの登山者が血の池分岐と混乱をきたす場所です。
「血の池」と呼ばれる場所ですが、池らしいものは見当たらず道標が立っているだけです。おそらく以前は沼地があったのでしょう。正面に分岐を示す道標が立っています。昭文社の地図に書かれた状態と違うため、ここでルートを右方向に辿り、道間違いを犯す登山者が多くいるようです。
第二源泉と書かれた祠の下から勢いよく源泉が湧き出しています。飲んでみると酸っぱく鉄分の味がします。源泉の温度は低く温泉ではありません。源泉の水は透明で濁川へ流れ込みます。しばらくすると透明の水は空気と触れ、すぐに濁りが出てきます。
右手下が源泉です。このまま登山道は進行方向に伸びていますが、木が倒れ、進入禁止のようになっています。昭文社の地図には載っていないルートになります。約1時間ほど余分にかかり石尊平に抜けるルートのようですが、今回は引き返します。
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石尊山-浅間山の寄生火山コース地図
石尊山-浅間山の寄生火山コース詳細情報
ルート | 4月26日 追分宿登山口(標高1,023m)⇒赤滝(血の滝) (標高1,380m)⇒座禅窟 (標高1,395m)⇒血の池 (標高1,473m)⇒源泉 (標高1,474m)⇒おはぐろ池 (標高1,475m)⇒石尊平 (標高1,627m)⇒石尊山(標高1667.4m) |
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コースタイム | 登り: 追分宿登山口⇒石尊山 2時間55
分 ( 座禅窟往復35分を含む) 下り:石尊山⇒追分宿登山口 1時間20分 |
駐車場/トイレ | 追分宿登山口に4〜5台の駐車スペース |
核心部 | 難しい所はありません。 |
難易度 | [登山道(一般道)を10段階で表示 特に鎖場の岩登り] 1 |
飲料水必要量 | 5Kgの荷物を背負う場合 体重45kgの人:1.06リットル、体重60kgの人:1.38リットル、体重75kgの人:1.70リットル |
消費カロリー | 5Kgの荷物を背負う場合 体重45kgの人:1.976Kcal、体重60kgの人:2.569Kcal、体重75kgの人:3.162Kcal |
燃焼脂肪量 | 5Kgの荷物を背負う場合のダイエット効果 体重45kgの人:0.282kg、体重60kgの人:0.367kg、体重75kgの人:0.452kg |
標高差 | 距離 7km 最大標高差 642m 平均斜度 全体:9.1% 上り:10.6% 下り:6.2% 獲得標高 上り:649m 下り:28m |
山小屋 | 無 |
登山口へのアクセス | 国道18号線沿いの追分入口バス停から約15分。中軽井沢〜追分入口 軽井沢町内循環バス西コース30分、一日7本 |
次はどこの山へ行こうかな。行きたい山がすぐに見つかる。
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