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槍ヶ岳・槍沢登山ルート概要
槍沢コース案内
このルートは多くの登山者が使う主要ルートです。槍ヶ岳山荘までなだらかな登りが続き、2日間かけてゆっくりと高度を上げていくので歩行行程が長いのですが登山初心者でも難なく到着することは可能です。
出発地の上高地から梓川に沿って上がります。 河童橋を渡って梓川の右岸(左側)を行くルートには水辺を縫うように木道が設置され明神池まで続きます。
左岸(左側)のルートは樹林帯の中にあり風景はよくありませんが、15分ほど短縮できます。明神池で二つのルートは合流し、横尾山荘へ向け遊歩道のようななだらかな道を歩いて行きます。
徳沢から少し進んだ左手に全長80メートルのつり橋があります。往年の名クライマー新村正一氏の名を冠した「新村橋」です。新村橋を渡れば奥穂高岳・北穂高岳へ入るパノラマルートです。新村橋を左手に見送り、横尾山荘前を直進し、車が通れるほどの広い遊歩道を5分ほど歩き登山道へ入って行きます。
梓川源流の左岸(右側)に沿ってなだらかな登山道を進み、一ノ俣谷と次いでかなりの急流である二ノ俣にかかる堅牢な橋を渡ります。槍ヶ岳を開山した播隆上人は「行伏記」に「これらの谷川を苦労の末、渡渉した。」と記しています。
この辺りから梓川の源流は、槍沢と名前を変えます。槍沢に沿ってよく整備された登山道を登ると水場、風呂の完備した槍沢ロッジに到着します。
ここまで上高地からの標高差320m、歩行約5時間の行程です。
健脚者なら槍の肩に建つ槍ヶ岳山荘まで一日の行程で行くことも可能でしょう。
槍沢ロッジ横のヘリポートには槍の穂先に向けた双眼鏡が設置されています。双眼鏡を覗き込み、槍ヶ岳の天候を確認し出発します。少し登ると木々の間からわずかに展望が開けてきます。右手前方に目をやるとカブト岩と呼ばれる奇岩が峻立しています。その傍を通過し、槍沢キャンプ地のあるババ平に向け緩やかな登山道を登ります。
ババ平は旧槍沢小屋跡地でキャンプ指定地になっています。水は上部からホースで引かれ、簡易トイレも設置されています。ババ平付近は遅くまで雪渓が残り、スノーブリッジが崩壊する恐れがあるので割れ目などには近づかないことが肝要です。
この先、ババ平から左岸は赤沢山の岩壁、右岸は横尾尾根の岩壁によって作られたU字谷が顕著になり、槍沢の谷は大曲で大きく左にカーブしていきます。
カーブの途中「大曲」で東鎌尾根の最低鞍部にある水俣乗越に登り上げる分岐を右に見送り、徐々に傾斜は増していきます。
(大曲から東鎌尾根の最底鞍部の水俣乗越まではダケカンバの中をジグザグに登るルートで難所はありません。)
大曲から見上げると左手には大きい岩稜のツバメ岩、その先には槍ヶ岳から穂高連峰に通じる稜線上の山々(大喰岳・中岳)が見えてきます。そして、氷河で削る取られたスプーン状の窪地の末端に出来る槍沢モレーンも確認出来ます。
天狗原分岐から少し上がった所の水場で水を補給し、グリーンバンドとも呼ばれる大槍モレーンを覆うハイマツの中をジグザグに登り、左方向に進路を変え進むと、あこがれの槍ヶ岳が姿を現します。
またこの近くに播隆上人や日本アルプスの父と言われるウォルター・ウェストン等も使用したとされる自然の岩屋・坊主ノ岩小舎があります。
ヒュッテ大槍への分岐、次いで殺生ヒュッテへの分岐をやり過ごし、槍の肩に建つ槍ヶ岳山荘に向け、殺生カールの中に刻まれたガレ場をジグザグに登ります。
槍ヶ岳山荘は定員650名の大きな山小屋で、槍ヶ岳山荘に併設された慈恵医大槍ヶ岳診療所ではボランティアによる山岳診療が行われています。
標高3,060mにあることから「雲の上の診療所」とも言われ、毎年7月20日〜8月20日の約一ヶ月間開所されています。
槍ヶ岳山荘から空身で標高差100mの槍の穂先に取り付きになります。槍ヶ岳山荘から「槍の穂先」を見上げると垂直な壁に見えますが、実際に登ってみると鎖場の傾斜はさほどきつくなく、あまり高度感を感じません。
傾斜70度、長さ6mほどの一回目の梯子の下までは傾斜は比較的緩くステップもしっかりあるので難なく登れます。
次に短い梯子を登り切った所からの岩登りがやや難しくなります。
スラブ状で足を掛けるステップがあまり無いため、スラブの中央に打ち込まれた鉄製の杭は大変助かります。
特に雨の日などスラブ状の岩のためスリップしやすいでしょう。
槍の穂先への登山用ルートの中で、この部分が核心部と言ってよいでしょう。
槍ヶ岳山頂直下には2連で架かる斜度約80度の梯子(最初は17段・約5m、続いて31段・約9m)があり、さすがに高度感を覚える所です。特に二段目の梯子は下を見ずに上がりましょう。
この梯子を登りきると360度の展望をほしいままにできる槍ヶ岳山頂に飛び出します。
槍ヶ岳の山頂には祠が祀られ、雷が落ちないように釘は使用されていないそうです。文政11年(西暦1828年)
に播隆上人によって三体の仏像が山頂に安置されたとされていますが、紛失し現在はありません。代わりに小祠が祀られています。
「槍の穂先」では一部を除いて登りと下りでルートが異なります。
しかし、人気の山だけあって土日や夏休みは大変な混雑となり、山頂往復が3時間となることもまれではないようです。
山頂は約20人ほどで一杯ですから、ゆっくり槍ヶ岳を満喫するには上記日程をずらすことが賢明です。
※新穂高温泉からのルートは飛騨沢コースをご覧ください。
画像一覧
上高地から梓川に沿って上がります。河童橋を渡って梓川の右岸(左側)を行くルートには、水辺を縫うように木道が設置され明神池まで続きます。左岸(右側)のルートは樹林帯の中にあり、風景はよくありませんが、15分ほど短縮できます。
槍見河原から10分ほどで一ノ俣谷にかかる立派な橋を渡ります。槍ヶ岳を開山した播隆上人は一ノ俣谷と次に出てくる二ノ俣谷を超えるのに大変難儀したそうです。槍沢の一ノ俣谷まではU字谷となっていて、一ノ俣モレーンが確認出来ます。
槍沢ロッジを出発すると深い樹林帯から樹相が変わり、木がまばらになります。そして、わずかながら展望が開けてきます。右手にカブト岩の奇岩を見ながら、槍沢キャンプ地のあるババ平に向け、緩やかな登山道を登ります。
ババ平で展望が大きく開けます。ここは旧槍沢小屋跡地で、現在はキャンプ指定地になっています。水は上部からホースで引かれ、簡易トイレも設置されています。この先、ババ平からU字形の谷は大きく左にカーブしていきます。
天狗原分岐からS字状に伸びる槍沢と槍沢モレーンの丘状の盛り上がりを見下ろす。左手の赤沢山と右手の横尾尾根によってU字谷が形成されているのがよく分ります。高径草原が広がり、コバイケイソウ、ミヤマトリカブト、クルマユリ、ミソガワソウ、ハクサンフウロなどの高山植物が花を咲かせるところです。
ヒュッテ大槍への分岐。右手方向に登れは東鎌尾根の稜線に建つヒュッテ大槍に行きます。ここから少し上がった所に、槍ヶ岳を開山した播流上人やウェストンらが泊まったとされる自然の岩屋・坊主ノ岩小舎があります。
左手側の大喰岳を見上げる。大喰岳 から槍沢の登山道に向けて曲線を描くように崖錐(がいすい)斜面が形成されています。ちょうど35度の角度があり、安息角と言います。代表的な崖錐斜面は涸沢カールにあります。
槍ヶ岳山荘。定員650名の大きな山小屋です。前オーナーの穂苅三寿雄氏が槍ヶ岳の開山に尽力した播隆上人について『槍ヶ岳開山 播隆』という著書を出版しています。営業期間は4月のゴールデンウィークから11月上旬までです。
慈恵医大槍ヶ岳診療所。槍ヶ岳山荘に併設されボランティアによる山岳診療が行われています。標高3060mにあることから「雲の上の診療所」とも言われ、毎年7月20日〜8月20日の約一ヶ月間開所されています。
槍の穂先取り付きからペンキマークに従い、千丈沢側に出ると小槍が目に飛び込んできます。左上部の登山者がいる所までは比較的傾斜が緩く、スタンスがしっかりあるので簡単に登れます。右手の岩の左側に下山用登山道があります。
槍の穂先への登山用ルートの中でこの部分が核心部でしょう。二列に架かる梯子の内、左の登山用ルートの短い梯子を登り切った所からの岩登りがやや難しく感じます。特に雨の日などスラブ状の岩のためスリップしやすいでしょう。右側の梯子は下山用です。
槍ヶ岳の山頂には祠が祀られています。雷が落ちないように鉄製の釘は使用されていないそうです。槍ヶ岳を開山した播隆上人が奉納したとされる銅像阿弥陀仏、銅像観世音菩薩と木造文殊師利菩薩の3体は盗難にあって、現在はありません。山頂から北を見ると黒部源流の山々が連なります。
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槍沢ルート地図
槍沢ルート詳細情報
ルート | 上高地バスターミナル(標高1505m)⇒横尾(標高1620m)⇒一ノ俣(標高約1700m)⇒槍沢ロッジ(標高1825m)⇒天狗原分岐(標高2345m)⇒槍ヶ岳山荘(標高3060m)⇒槍ヶ岳(標高3180m) |
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コースタイム | 登山:上高地⇒槍ヶ岳 10時間20分 下山:槍ヶ岳⇒上高地 8時間00分 |
駐車場 | 上高地へ入る駐車場はこちら |
核心部 | 槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳山頂まで(通称「槍の穂先」)が槍沢ルートの核心部 |
難易度 | [登山道(一般道)を10段階で表示 特に鎖場の岩登り]対象は槍の穂先のみ 6 |
飲料水必要量 | 5Kgの荷物を背負う場合 体重45kgの人:4.58リットル、体重60kgの人:5.96リットル、体重75kgの人:7.33リットル |
消費カロリー | 5Kgの荷物を背負う場合 体重45kgの人:8.523Kcal、体重60kgの人:11.080Kcal、体重75kgの人:13.638Kcal |
燃焼脂肪量 | 5Kgの荷物を背負う場合のダイエット効果 体重45kgの人:1.278kg、体重60kgの人:1.583kg、体重75kgの人:1.948kg |
標高差 | 距離 18km 最大標高差 1674m 平均斜度 全体:9.3% 上り:11.2% 下り:4% 獲得標高 上り:1640m 下り:24m |
山小屋 | 槍ヶ岳山荘 殺生ヒュッテ ヒュッテ大槍 槍沢ロッジ 横尾山荘 徳沢園 |
登山口へのアクセス |
次はどこの山へ行こうかな。行きたい山がすぐに見つかる。
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