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鍋冠山〜大滝山から蝶ヶ岳登山ルート概要
登山コース案内
蝶ヶ岳へのコースの中で、ほとんど使われていないルートです。しかし、登山道はしっかりと整備され、快適に歩くことが出来ます。
安曇野市から鍋冠山を経て大滝山へ到るこのルートは、江戸時代に作られた飛騨新道の一部を元にして作られたもので、1826年僧・播隆上人が槍ヶ岳開山のために辿ったロマンの道でもあります。
登山口となる三郷スカイライン展望台へのアクセスはマイカーかタクシーのみとなります。
鍋冠林道の退屈な歩きが1時間ほど続きます。更に、冷沢用水のある大滝山登山口からも針葉樹林帯の中で、展望の効かない退屈なルートが常念山脈の稜線に上がる直前まで続きます。
昭文社の地図において、鍋冠山と大滝山間が登り4時間、下り3時間と記載されていますが、これは明らかに違いで、登り
は半分の2時間ほど見れば十分です。下りは、1間もかからずに降りることが可能です。
大滝山から蝶ヶ岳への稜線は概ね展望の効く爽快なルートです。ここも昭文社の地図ではそれぞれ1時間45分と記載されていますが、かなり多めです。実際にはそれぞれ約1時間のコースタイムです。
蝶ヶ岳ヒュッテが混雑しているときは、ハイシーズンであっても1人布団一枚が必ず確保される大滝山荘に宿泊するのもいいかと思います。
槍ヶ岳を開山した僧・播隆が辿ったロマンの道
安曇野市三郷小倉から三郷スカイラインを通り、鍋冠山を経由して大滝山へ到る登山ルートは、江戸時代後期に飛騨新道として松本から飛騨へ抜ける最短ルートとして開発されたものを元にして作られたものです。
当時、松本と飛騨を結ぶ交易路は安房峠を越える鎌倉街道、更に南を迂回する野麦峠を越える野麦街道の二本がありました。
鎌倉街道は、難所が多く使用禁止となり、松本・飛騨間の交易は大変不便を強いられていました。
そこで、岩岡村(現安曇野市)の庄屋・伴次郎が私財をなげうって西暦1,820年(文政三年)に飛騨新道の開削工事に入り、15年の歳月を掛けて飛騨地方との交易路を完成させました。この時、協力したのが槍ヶ岳の開山を行った僧・播隆のガイド役を務めた小倉村(現安曇野市)の中田又重郎でした。
西暦1826年(文政9年)中田又重郎のガイドにより僧・播隆は、大滝山まで既に完成していた飛騨新道を辿ります。大滝山で飛騨新道から別れ、稜線づたいにハイマツ帯を掻き分け蝶ヶ岳に向かいました。僧・播隆の槍ヶ岳開山についての詳細は、槍ヶ岳のページをご覧ください。
飛騨新道は、松本平〜小倉村〜鍋冠山〜八丁ダルミ〜大滝山〜徳澤〜上高地〜焼岳・中尾峠〜飛騨高山間の道でしたが、崩壊による通行止めが多発します。、松本藩の資金的な協力が得られず、伴次郎の私財も底を突いたことなどから26年余りで、廃道となる運命を辿りました。
冷沢用水の由来
19世紀の江戸時代後期、当時の長尾組、上堀金の新切倉田村(現安曇野市)では、稲作に不可欠なかんがい用水が不足し、十分な収穫を得ることが出来ませんでした。地元住民は、かんがい用水を冷沢から引くこと思いつき、掘割の建設計画を1798年(寛政10年)と1810年(文化7年)の二度に渡り松本藩に陳情を繰り返します。直接松本藩と交渉にあたったのは組頭・庄屋の浅井氏でした。
住民の困窮を見かねた松本藩では、8月にこれを許可。翌年から峠を掘割り、木樋を作り、6年の歳月を費やし、遂に1817年(文化4年)に冷沢の水は安曇野の地へ流れることとなります。
同時に、倉田村では鳥川よりの水利権を獲得します。十分な量のかんがい用水を得たことで、周辺の田畑と同等の収穫量となっていきます。以来、江戸末期から明治・大正・昭和と管理されて来ましたが、大東亜戦争時には木桶の腐食を修理する人手が足りず、各所に漏水が発生します。
昭和33年に29年災害復旧事業として取水堰堤を新規に作成し、木桶の腐食の無い金属製の送水管に変えて、900mに渡り山の中に埋設して直接小野沢へ放流するようにしました。更に、昭和38年に災害復旧事業としてナメトコ沢より新規に取水工事を行い、送水施設も一新しました。その後、台風などによりたびたび送水管の破損が生じたため、昭和59年より県単土地改良事業でこれを修理し、冷沢の水は再び安曇野へ流れるようになりました。
画像一覧
登山口の三郷スカイライン観音木場の展望台へはマイカーかタクシーのみです。カーナビに本多通信工業と入れれば、そのまま直進で登山口です。トイレのある所から100メートル下流に10台ほど止められる駐車場があります。
鍋冠林道ゲートから約45分ほど歩くと、大滝山登山道入口です。この登山道は、江戸時代の文政3年(西暦1820年)岩岡村の庄屋伴次郎と共に小倉村の中田又重郎らによって作られた飛騨新道が元とになっています。詳しくは槍ヶ岳のページをご覧ください。
常念山脈稜線の分岐に立と、一気に展望が広がり、蝶ヶ岳の長塀尾根の先に穂高岳、蝶ヶ岳山頂の少し右手に槍の穂先が見えています。又、写真には写っていませんが、左手方向には、焼岳、霞沢岳、更にその左手に乗鞍岳、御嶽山と絶景が広がっています。分岐から左手方向に稜線を辿ると3分ほどで大滝山荘です。
稜線上の分岐から左手方向に1分程登った所に大滝山北峰があります。振り返る形で撮影しています。右手遠景には常念岳です。又、この場所は、テント場になっています。4張ほど設営可能です。ここから更に二分ほど進んだ所に、大滝山荘があります。
大滝山荘。定員35名ほどの小さな山小屋で、営業期間は7月18日〜9月23日の約2ヶ月。繁盛期でも混雑することは無く、布団一枚に1人は確保されています。蝶ヶ岳ヒュッテまで1時間のコースタイムなので、蝶ヶ岳ヒュッテが混雑ているときは、こちらに泊まるのも一法です。
大滝山荘から歩いて3分ほど先にある大滝山南峰へ向かいます。広い稜線は線状凹地が発達し、オオシラビソの林の中に二つの池があります。オタマジャクシの様な生き物が泳いでいますが、サンショウウオの子供です。7月になるとこの池に卵を産み、9月には成長して何処と無く、姿を消します。
大滝山南峰から北峰を通過し、常念山脈稜線上の分岐まで戻って来ました。かつて僧・播隆上人も辿ったであろう稜線にロマンを覚えつつ蝶ヶ岳へ向かいます。指導標が立つ所から右手方向へ下れば鍋冠山です。正面小ピークの奥に常念岳が見えています。
左手上部の丸い頂が蝶ヶ岳です。そして稜線を右手に辿ると、どっしりと構えた常念岳が存在感溢れた姿で聳えています。蝶ヶ岳の山頂右手に槍の穂先が姿を見せています。槍ヶ岳開山を行った僧・播隆上人は、ガイド役の中田又重郎と共に登山道の無いハイマツ帯をゆっくりと下り、蝶ヶ岳を目指したのでしょう。
ハイマツ帯を抜けると、広々とした草原が広がります。8月12日時点でコバイケイソウの花は終わっていますが、イブキトラノオやミヤマトリカブトなどはまだ咲いています。蝶ヶ岳の左手に穂高岳、右手に槍ヶ岳です。
更に下ると、大滝山と蝶ヶ岳の鞍部です。鞍部には三つの小さな沼があり、その周辺はイブキトラノオ、モミジカラマツ、ハクサンボウフウ、サラシナショウマ、コウゾリナなどの背の高い高山植物が色とりどりの花を咲かせています。
砂礫の広がる稜線に上がると、一気に展望が開け、槍ヶ岳から穂高岳へ連なる大絶壁が目の前に姿を現します。蝶ヶ岳の山頂は丸く不明瞭ですが、ここから左手方向に50m ほど登った所に標高2677mと書かれた標柱が立っています。
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鍋冠山〜大滝山から蝶ヶ岳地図
鍋冠山〜大滝山から蝶ヶ岳詳細情報
ルート | 三郷スカイライン展望台(標高1,446m)⇒鍋冠林道終点(標高1,723m)⇒鍋冠山(標高2,194m)⇒大滝山(標高2,616m)⇒蝶ヶ岳(標高2,677m) |
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コースタイム | 登山:三郷スカイライン展望台⇒鍋冠山2時間55分 鍋冠山⇒大滝山2時間 大滝山⇒蝶ヶ岳 1時間 合計5時間55分 下山:蝶ケ岳⇒大滝山1時間 大滝山⇒鍋冠山 50分 鍋冠山⇒三郷スカイライン展望台 1時間55分 合計3時間45分 |
駐車場 | 三郷スカイライン展望台周辺に約15台。鍋冠林道ゲート前に3台。 |
トイレ | 三郷スカイライン展望台 大滝山荘 蝶ヶ岳ヒュッテ |
核心部 | 危険個所なし |
難易度 | [登山道(一般道)を10段階で表示 特に鎖場の岩登り] 1 |
飲料水必要量 | 5Kgの荷物を背負う場合 体重45kgの人:2.45リットル、体重60kgの人:3.19リットル、体重75kgの人:3.92リットル |
消費カロリー | 5Kgの荷物を背負う場合 体重45kgの人:4.557Kcal、体重60kgの人:5.924Kcal、体重75kgの人:7.291Kcal |
燃焼脂肪量 | 5Kgの荷物を背負う場合のダイエット効果 体重45kgの人:0.651kg、体重60kgの人:0.846kg、体重75kgの人:1.042kg |
標高差 | 距離 12.5km 最大標高差 1227m 平均斜度 全体:9.8% 上り:15.4% 下り:9.9% 獲得標高 上り:1473m 下り:258m |
山小屋 | 蝶ヶ岳ヒュッテ 大滝山荘 |
登山口【三股】までのアクセス | 三郷スカイライン展望台へはマイカーかタクシーのみ。 参照:三股までのアクセスの詳細はこちら |
鍋冠山〜大滝山から蝶ヶ岳登山ルートの「高山植物」
![]() ミヤマシシウド |
![]() トウヤクリンドウ |
![]() モミジカラマツ |
![]() ミヤマアキノキリンソウ |
![]() シナノオトギリ |
![]() エゾシオガマ |
![]() ハクサンフウロ |
![]() ウサギギク |
![]() マルバダケブキ |
次はどこの山へ行こうかな。行きたい山がすぐに見つかる。
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